発表・掲載日:2007/03/15

「技術戦略マップ」の検索サービス(Kamome)の公開について

-対話的な操作で効率良い検索が可能に-

ポイント

  • 経済産業省の「技術戦略マップ2006」を有効に利用する検索サービス。
  • マップに含まれる多様なコンテンツの効率良い検索が可能に。
  • イノベーション推進のための有用なツールとして期待。

概要

 経済産業省【経済産業大臣 甘利 明】は、独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)情報技術研究部門【部門長 坂上 勝彦】の開発した検索システム(Kamome)を用いて、経済産業省の「技術戦略マップ2006」のための新しい検索サービスを公開した。
※本検索サービスは公開を終了しました。

 「技術戦略マップ」は、経済産業省が独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構【理事長 牧野 力】(以下「NEDO」という)、産総研、民間企業、大学等の協力のもと、平成17年に策定したものである。第2版となる「技術戦略マップ2006」は平成18年に策定され、情報通信、ライフサイエンス、環境・エネルギー、製造産業における24分野の技術情報が体系的かつ戦略的に取りまとめられている。この技術戦略マップは、将来の社会・国民のニーズや技術進歩の動向等を見据え、要素技術、要求スペック、導入シナリオ等が時間軸上に整理されており、産学官の「研究開発の共有シナリオ」として位置付けられている。しかし、技術戦略マップには、多様かつ膨大な情報が掲載されているため、従来の検索システムでは、必要な情報に容易にたどり着けず、技術戦略マップを有効に活用できないでいた。

 そこで産総研では、独立行政法人 科学技術振興機構【理事長 沖村 憲樹】(以下「JST」という)の戦略的創造研究推進事業(CREST)で開発した検索システム(Kamome)を利用して、技術戦略マップ2006の検索システムを開発した。

 検索システム(Kamome)は、「コンテンツ」、「情報家電」、「配信」のようなキーワードを組み合わせる従来の検索方法と異なり、「コンテンツを情報家電に配信する」といった表現を使って検索することができ、対話的(インタラクティブ)な操作で欲しい情報を効果的に絞り込むことが可能である。更に、マップに含まれる多くの図表部分の検索も可能である。今回開発された検索サービスを利用することで経済産業省が掲げる技術戦略マップへのアクセスが容易になるので、新たな技術開発テーマの発掘や、分野を跨った共同研究の検討材料など、企業や大学・研究機関がイノベーションを推進するための有用なツールとなるものと期待される。

検索システム(Kamome)概要図


背景

 経済産業省は、NEDO、産総研、民間企業、大学等の協力のもと、「技術戦略マップ」を平成17年度に策定した。第2版となる「技術戦略マップ2006」は平成18年に策定され、情報通信、ライフサイエンス、環境・エネルギー、製造産業における24分野の技術情報が体系的かつ戦略的に取りまとめられている。この技術戦略マップは、将来の社会・国民のニーズや技術進歩の動向等を見据え、要素技術、要求スペック、導入シナリオ等が時間軸上に整理されており、産学官の「研究開発の共有シナリオ」として位置付けられている。技術戦略マップは、経済産業省、NEDO等のWebサイトで電子版も掲載され、広く外部からも利用可能になっている。

 しかしながら、この「技術戦略マップ2006」には、様々な分野に渡る多様で膨大な技術情報が盛り込まれている。このため、従来の検索システムでは、ユーザが必要とする情報にたどり着くのが困難なことが多い。また、一つの技術が複数の分野で使われていることも多いため、検索システムで必要な情報を網羅的に探すのは容易ではなかった。

 その理由は、これまでの検索システムが簡単なキーワードの組み合わせに基づいているためであり、人間が普段使う言葉の意味を理解して検索できるシステムの実現が求められていた。

経緯

 産総研では、2000年11月から5年間にわたるJSTの戦略的創造研究推進事業のプロジェクト「人間中心の知的情報アクセス技術」【研究代表者 橋田 浩一】のもとで、意味に基づく高度情報アクセスに関する研究を推進してきた。このプロジェクトにおいて、文の意味的な構造を使う対話的(インタラクティブ)な検索システムKamomeを開発した。

 このプロジェクト終了後も研究成果を発展させてきたが、その一環として、単なる文章だけではなく図版を含むコンテンツの検索にKamomeを拡張し、経済産業省の技術戦略マップ2006に関する検索サービスに提供することになった。

内容

 「技術戦略マップ2006」は多様かつ膨大な情報を掲載しており、また、一つの技術用語が複数の分野で使われていることも多い。このため、従来の検索システムでは、ユーザが必要とする情報を網羅的に探すには困難を要することが多い。

 そこで産総研では、検索システムKamomeを使って、「技術戦略マップ2006」の検索システムを開発し、検索サービスを公開することにした。Kamomeは、「コンテンツ 情報家電 配信」のようなキーワードの単純な組み合わせではなく、「コンテンツを情報家電に配信する」のような意味的な構造を含む表現を検索質問とし、これを改訂しながら正解に近付いて行くインタラクティブな検索を行なうシステムである。意味的な構造を正解候補との照合に使うだけではなく、利用者が質問を改訂する際の支援に使うのが、その特徴である。これにより、キーワードの単純な組み合わせではなかなか見付からない情報を効率的に探すことが可能となる。

 Kamomeに基づく経済産業省の技術戦略マップ2006検索システムのトップページを下記に示す。「検索質問文」に「MEMS技術の応用例」のような表現を入力して「検索」ボタンを押すと検索が開始される。

経済産業省技術戦略マップ2006検索システムのトップページ画像
 

 この結果、正解候補が多数表示されるが、難しい検索の場合には欲しい情報がその中に含まれていないのが普通である。そのようなときは、正解候補の前に表示される下のようなインタフェースを使って検索質問を改訂し、インタラクティブに検索することができる。この例では、「MEMS」、「技術」、「応用」、「例」の各々についてその類義語をいくつか選んで検索に含め、「再検索」することになる。

検索システムの画像
 

 ここで重要なのは、これらの類義語のリストが文脈に応じて変化することである。たとえば下図のように、検索質問文が単に「MEMS」である場合と「MEMSの製造」である場合とでは、「MEMS」の類義語リストが異なって表示される。これは、Kamomeが「MEMS」と「製造」の間の係り受け関係を考慮して意味的により適切と思われる類義語を上位に表示しているためである。

「MEMS」だけの場合の類義語リストの画像   「MEMSの製造」の場合の類義語リストの画像
「MEMS」だけの場合の類義語リスト   「MEMSの製造」の場合の類義語リスト
 

 このように意味的な構造を用いて、より適切な類義語を利用者に提示し、インタラクティブな検索の効率を上げ、正解に到達できる可能性を高めることが可能となった。「技術戦略マップ2006」には単なるテキストだけでなく線表のような図式が多く含まれるが、今回提供しているサービスではそれらに含まれる意味構造も利用している。

今後の方向性

 産総研では、この検索技術をさらに洗練させるとともに、検索や翻訳の対象である情報コンテンツの作成を意味に基づいて支援する技術等とこれを連携させながら、知的情報アクセスの技術体系に関する研究開発を進め、高度な知識循環型社会の実現に貢献する。特に、「技術戦略マップ」の図を最初から意味に基づいて共有しながら制作し、またそれに関するコメント等も共有することによって知識創造を活性化するような支援システムを提供したいと考えている。




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