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発表・掲載日:2006/11/07

ディスプレイに応用可能なカーボンナノチューブを開発

-二層カーボンナノチューブを高純度で合成-

ポイント

  • 高純度二層カーボンナノチューブの含有率を制御できる高効率合成法を開発
  • 世界最高レベルの含有率(85%)、高純度、長尺を達成
  • 二層カーボンナノチューブを利用することで、高輝度、低電圧ディスプレイ開発へ弾み

概要

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)ナノカーボン研究センター【センター長 飯島 澄男】ナノカーボンチーム 畠 賢治 チーム長、山田 健郎 研究員は、単層カーボンナノチューブの合成法の一つである水分添加CVD法スーパーグロース法)を改良し、二層カーボンナノチューブを高含有率で合成する技術を開発した。二層カーボンナノチューブは、基板上から垂直に起立した形で成長し、2.2mmの高さの構造体を形成する。形成された構造体は85%以上と世界最高レベルの二層カーボンナノチューブ含有率を持つ。また、合成された二層カーボンナノチューブは高純度、長尺といった優れた特性をもつ。

 さらに、産総研と株式会社ノリタケカンパニーリミテド【代表取締役社長 赤羽 昇】は共同で、電界放出素子用の電極上に、二層カーボンナノチューブを直接成長させ、均一な電子放出特性を得ることに成功した。これは、二層カーボンナノチューブの電子放出特性を利用したディスプレイのキー技術であり、カーボンナノチューブディスプレイの開発を加速するものと考えられる。

 本成果は、平成18年11月1日に、英国科学誌Nature Nanotechnology(vol.1 no.2 P131-136 2006)に「Size-selective growth of double-walled carbon nanotube forests from engineered iron catalysts」のタイトルで掲載された。

二層カーボンナノチューブ垂直配向体と電子顕微鏡写真

図1:二層カーボンナノチューブ垂直配向体(中央)と電子顕微鏡写真(左:拡大像、右:二層カーボンナノチューブ像)


開発の社会的背景

 二層カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブの持つ高導電性、柔軟性と、多層カーボンナノチューブの持つ電気的、熱的安定性を併せ持つカーボンナノチューブである。そのため、次世代のナノデバイス材料として大きな注目を集めており、ナノテクノロジーの中核となる基盤材料の一つとして期待されている。

 特に電子放出特性は早くから注目を集めており、低電圧、高電流放出素子として、電界放出型ディスプレイ等への応用が期待されている。しかしながら、二層カーボンナノチューブの合成技術は未成熟であり、触媒などの不純物や、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブも同時に生成するため、高純度で含有率の高い二層カーボンナノチューブを合成することは難しかった。そのため、高純度で含有率の高い二層カーボンナノチューブの合成法が求められていた。

研究の経緯

 産総研ナノカーボンチームでは、平成16年度に高効率の高純度単層カーボンナノチューブ合成法である水分添加CVD法(スーパーグロース法)を開発した。その後、同法を基に、二層カーボンナノチューブを高含有率で合成する技術の開発に取り組んできた。また、得られた二層カーボンナノチューブの製品化ターゲットのひとつとして電界放出型ディスプレイを考え、平成18年度よりノリタケカンパニーリミテドとの共同研究を行ってきた。

 なお、本技術開発は、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構「以下「NEDO」という)ナノテクノロジープログラム「ナノカーボン応用製品創製プロジェクト」(平成14~17年度)の委託事業およびナノテクノロジープログラム・革新的部材産業創出プログラム「ナノテク・先端部材実用化研究開発」(平成18~20年度)の助成事業として実施された。

触媒膜厚と層数別ナノチューブ含有率の関係と含有率85%の二層カーボンナノチューブの直径分布の図

図2:触媒膜厚と層数別ナノチューブ含有率の関係(左;実線:予想値、点:実験値)と含有率85%の二層カーボンナノチューブの直径分布(右)

研究の内容

 単層カーボンナノチューブの合成技術である水分添加CVD法(スーパーグロース法)を基に、二層カーボンナノチューブの垂直配向体をその含有率を制御して合成する技術を開発した。触媒の膜厚のみを制御するという単純な手法により、世界で初めて基板上に2.2mmの高さの垂直に配向した二層カーボンナノチューブを合成することに成功した【図1参照】。また、触媒膜厚を制御することで、二層カーボンナノチューブの含有率を制御でき、85%という世界最高レベルの二層カーボンナノチューブ含有率の垂直配向体を合成することができた【図2参照】。さらに、この二層カーボンナノチューブは、スーパーグロース法を用いて作製した単層カーボンナノチューブと同様に、高配向性、高純度、長尺といった特徴を兼ね備えている。また、触媒のパターニングにより、二層カーボンナノチューブの垂直配向マクロ構造体も作製可能である【図3参照】。

 株式会社ノリタケカンパニーリミテドと共同で、これらの二層カーボンナノチューブを、ディスプレイ用の電極基板上に直接成長させることにも成功した。この基板上の二層カーボンナノチューブは後処理なしで電界放出が可能であり、しかも均一な電子放出特性示す【図4参照】。この成果は、カーボンナノチューブディスプレイ用二層カーボンナノチューブ合成法として、非常に有用であり、カーボンナノチューブを利用した電界放出型ディスプレイの開発を加速するものと考えている。

二層カーボンナノチューブで作られた、垂直配向マクロ構造体の画像

図3:二層カーボンナノチューブで作られた、垂直配向マクロ構造体


電界放出素子用グリッドに合成された二層カーボンナノチューブと電子放出の均一性の図

図4 電界放出素子用グリッドに合成された二層カーボンナノチューブ(中央及び左)と電子放出の均一性(右)

今後の予定

 今後、NEDOの「ナノテク・先端部材実用化研究開発」(平成18~20年度)の支援を得て、今回開発された二層カーボンナノチューブ合成技術をコア技術とし、電極上に合成される二層カーボンナノチューブの密度と基板との接触性を制御することにより、電子放出特性の低電圧化、低消費電力化を図り、カーボンナノチューブディスプレイ【図5参照】の生産の効率化および、製造の低コスト化を図る。さらにそれらの技術を利用し、数年で、災害等の停電時にバッテリー駆動可能な、低消費電力型のカーボンナノチューブディスプレイを開発する。

カーボンナノチューブディスプレイの試作機の写真

図5:カーボンナノチューブディスプレイの試作機


用語の説明

◆カーボンナノチューブ
カーボンナノチューブは炭素原子のみからなり、直径が0.4~50nm(1ナノメートル:10億分の1メートル)、長さがおよそ1~数10µmの一次元性のナノ材料である。その化学構造はグラファイト層を丸めてつなぎ合わせたものである。層の数が1枚だけのものは単層カーボンナノチューブと呼ばれる。グラファイト層が二層であるものは二層カーボンナノチューブと呼ばれ、これら2層の間隔は、通常のグラファイト層の間隔(0.335nm)より若干広い間隔(0.34~0.37nm)を取っている。二層カーボンナノチューブは、電子放出特性で単層カーボンナノチューブに若干劣るものの、安定性で優れていることから、その電子放出素子等への応用が有望視されている。なお、多数のグラファイト層からなるものは多層カーボンナノチューブと総称される。[参照元へ戻る]
◆CVD法(化学気相成長法:Chemical Vapor Deposition
ナノメートルサイズの遷移金属の触媒を用いて、メタン(CH4)やアセチレン(C2H2)などの炭化水素ガスを反応させて、カーボンナノチューブを得る方法。CVD法は炭化水素を原料に用いるのと、500~1200℃と、カーボンナノチューブを合成する他の方法と比較すると、低温で反応を行えるのが特徴である。[参照元へ戻る]
◆スーパーグロース法
単層カーボンナノチューブの合成手法の一つであるCVD法で、水分を極微量添加することにより、触媒の活性時間および活性度を大幅に改善した方法。従来の500倍の長さに達する高効率成長、従来の2000倍の高純度単層カーボンナノチューブを合成することが可能である。さらに、配向性も高く、マクロ構造体も作製できる。[参照元へ戻る]
◆カーボンナノチューブディスプレイ
カーボンナノチューブを陰極に付け、陽極と陰極間で電位差を設けて陰極に付けたカーボンナノチューブから電子を放出させ、放出した電子により蛍光体を発光させる電界放出型ディスプレイの一種。カーボンナノチューブは低電圧で高い放出電流を得られることから、低消費電力で高輝度なディスプレイの作製が期待されている。[参照元へ戻る]


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