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発表・掲載日:2006/01/11

有機ヒ素汚染土壌の浄化に有効な技術を初めて開発

ポイント

  • リン酸とアルコールとの相乗効果により土壌中のジフェニルアルシン酸などの有機ヒ素を高効率で抽出除去できる洗浄法を開発。
  • 洗浄処理に用いたアルコールのリサイクル使用が可能。
  • 汚染土壌浄化処理によって生じる有害廃棄物が極めて少量。

概要

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)地圏資源環境研究部門【部門長 瀬戸 政宏】地圏環境評価研究グループ 徳永 修三 主任研究員は、三井造船株式会社【代表取締役社長 元山 登雄】(以下「三井造船」という)と共同で、毒性の強い有機ヒ素で汚染された土壌から有機ヒ素を高効率で抽出除去する技術の開発に成功した。この技術は、有機ヒ素による環境汚染問題の解決につながるものと期待される。

 産総研は三井造船との共同研究により、有機ヒ素汚染土壌の浄化対策技術として、低濃度のリン酸とアルコールからなる洗浄剤を用いて、土壌中の有機ヒ素のほぼ100%を抽出除去する技術の開発に成功した。本技術は、汚染土壌を浄化するとともに、使用済み洗浄剤をリサイクルして使用でき、また有機ヒ素を濃縮して小容量で回収できるため、汚染土壌の浄化処理にかかるコストを低減化することが可能である。

 今後は、浄化処理後の土壌中に残留する微量の有機ヒ素の溶出抑制方法を検討し、汚染現場の状況に適合したシステム化について検討する。

有機ヒ素汚染土壌浄化システムイメージ図
有機ヒ素汚染土壌浄化システムのイメージ図


研究の背景

 平成15年3月茨城県神栖町(現:神栖市)においてジフェニルアルシン酸を主成分とする有機ヒ素化合物による地下水及び土壌汚染が見つかり、大きな問題になっている。こうした有機ヒ素化合物による環境汚染の事例はこれまでにほとんどなく、その対策技術の確立が急がれている。しかし、これらの物質は、1.毒性が強い、2.地下水中に溶出しやすい性質があると同時に、土壌に吸着されて長期間環境中に残留する、3.微生物により分解されない、4.加熱や化学分解を施しても、有毒な無機ヒ素化合物が土壌中に残留する などの特徴があり、従来技術である固型化・不溶化、飛散防止、封じ込めなどの対策だけでは、問題の抜本的解決にはならない。土壌中の有機ヒ素を効率的に除去することが最も重要であり、そのためには化学的洗浄法(抽出法)が有効であると考えられる。

研究の経緯

 産総研は、これまでにヒ素や重金属で汚染された土壌の浄化技術に関する研究を行ってきた。この研究成果をベースにして、三井造船と共同で、平成15年度に資金提供型共同研究「有機ヒ素汚染土壌の浄化技術に関する研究」及び平成16年度に特許実用化共同研究「化学洗浄剤による有機ヒ素汚染土壌の浄化技術」を実施してきた。

研究の内容

 ジフェニルアルシン酸などの有機ヒ素で人為的に汚染した模擬汚染土壌及び実際の汚染現場から採取された32種類の土壌試料を用いて、土壌への有機ヒ素の吸着メカニズムを解明した。更に、洗浄法による土壌浄化技術を開発するため、無機系、有機系など多数の洗浄剤による有機ヒ素抽出効果を比較検討した。その結果、メタノールなどのアルコールにリン酸を3~5%混合したものを使用したところ、抽出効果が極めて高く、洗浄剤として優れていることを見出した。ヒ素に換算して3570mg/kgもの有機ヒ素で汚染された土壌から、そのほぼ100%を抽出除去することができた。この洗浄剤の効果は、リン酸によって土壌と有機ヒ素との結合が切断され、有機ヒ素がアルコールに溶け込むためと考えられる。使用済み洗浄剤からはアルコールを回収し再利用することができた。一方、抽出除去された有機ヒ素は小容量のリン酸中に濃縮された形で回収できるので、有害廃棄物の発生量を大幅に低減することが可能であった。

土壌中の有機ヒ素抽出概念図
土壌中の有機ヒ素抽出の概念図

今後の予定

 本技術によっても極微量のヒ素が土壌中に残るので、浄化処理後の土壌中に残留する微量の有機ヒ素が溶出するのを抑制する方法を検討し、汚染現場の状況に適合したシステム化について検討する。

用語の解説

◆ジフェニルアルシン酸
有毒元素のひとつであるヒ素にベンゼン環が結合した化合物であり、自然界では生成しない。汚染土壌では土壌成分の水酸化鉄や水酸化アルミニウムに強く吸着されており、極めてゆっくり雨水や地下水などに溶け出して被害を拡大する。(C6H5)2As(O)OH [参照元へ戻る]



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