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発表・掲載日:2003/10/08

ユビキタスコンピューティングのためのマイクロサーバ技術を開発

-世界最小クラスのLinuxサーバ上でソフトウェアをオープンソース開発-

ポイント

  • 無線ユビキタスネットワークを使うソフトウェアで連携動作の自動化を実現
  • Linuxが稼動する世界最小クラスの32ビットマイクロサーバを開発
  • ユビキタス社会構築のための基盤となるソフトウェア、ハードウェア技術を提供

概要

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)サイバーアシスト研究センター【センター長 中島 秀之】と、三菱電機株式会社【執行役社長 野間口 有】(以下「三菱電機」という)情報技術総合研究所【所長 肥塚 裕至】は、小型省電力32ビットMPU上でLinuxが稼動するマイクロサーバと、組み込みプログラムが無線ネットワークを通じて自動的に連携動作することのできるソフトウェア(ミドルウェアとよばれる)を開発し、ユビキタスコンピューティング実現への鍵となる技術の開発に成功した。また、ソフトウェアをオープンソースとして公開するだけでなく、MPU設計情報も公開を行う予定である。この技術によって、日常生活のあらゆるもの(テレビなどの家電機器や車内の広告や交通標識など)に組み込まれたコンピュータを用いて生活者を支援するためのシステム開発に要する手間が大幅に軽減するものと期待される。

マイクロサーバMPU基板と情報家電実証実験向けプロトタイプの写真
マイクロサーバMPU基板(左)と情報家電実証実験向けプロトタイプ(右)


研究の背景

 日常生活のあらゆるものにネットワーク接続されたコンピュータが組み込まれ、どこにいても利用者の状況に応じた情報支援が受けられるユビキタスコンピューティング技術に対しては、次世代IT技術の中核として大きな期待が寄せられている。国内外のメーカー、研究機関において研究開発が進められているが、用いられるソフトウェア、ハードウェアの両面において共通仕様というものが存在せず、システムごとに互換性のない技術が用いられているのが現状である。このことから、日常の生活空間すべてをカバーするような規模の大きなシステムを構築するために必要な基盤技術、いわゆるオープンプラットフォームの必要性が認識されるようになっている。

研究の経緯

 こうした基盤技術は、特定の企業あるいは団体が独占・先導するのでなく、すでに広く受け入れられている技術をもとに共同作業を通じた技術仕様の公開を行っていく、いわゆるオープンソースの取り組みが適していると考えられる。このような問題意識のもとにサイバーアシスト研究センターが中心となって設立したサイバーアシストコンソーシアム【会長 中島 秀之】に三菱電機が賛同、参画し、産総研のソフトウェア技術と三菱電機のMPU技術を活用した共同研究が開始された(2002年10月1日より)。

研究の内容

 産総研では、人手による設定や、特殊なサーバの存在なしにネットワークが自動的に構成され、その上で応用プログラムが通信の相手を探しながら動作することが可能なソフトウェア(ミドルウェア)を開発し、三菱電機では、このミドルウェアを効率的に処理できる小型省電力MPUを用いたマイクロサーバを開発した。両者の開発したソフトウェア、ハードウェアを組み合わせることにより、ユビキタスコンピューティングの実現に適した基礎としてマイクロサーバ技術を実現した。産総研によるミドルウェアにより、特定の場所やネットワークに依存せず、どこにいても状況に応じてユーザの必要な情報支援を行うプログラムの開発が可能になり、三菱電機によるマイクロサーバによりこうしたサービスをあらゆる場所であらゆるものに関して提供することが可能になる。マイクロサーバでは、基盤ソフト(いわゆるオペレーティングシステム)にLinuxが用いられており、MPUの製品化に合わせてソフトウェアをオープンソースとして公開する予定である。将来的には、MPU自体の設計情報の公開も行う予定であり、開発者はハードウェア、ソフトウェアの両面において独自の設計指針に合わせた改変を行うことが可能になる。演算装置、記憶装置といったマイクロサーバの基本機能はコンパクトフラッシュカード大のMPU基板に全て含まれており、これは32ビットでLinuxを稼動するシステムとして世界最小レベルである。

 マイクロサーバを用いたユビキタスコンピューティングのイメージ図

マイクロサーバを用いたユビキタスコンピューティングのイメージ
(マイクロサーバイメージ画像がマイクロサーバ)

今後の予定

 家庭内の家電機器をネットワーク接続し、日常の語彙や動作を用いて制御できるようにする、いわゆる情報家電の実証実験システムへの組み込みを行い、煩雑な操作を強要することなく、誰でも安心して便利に利用できる情報家電の製品開発への取り組みを今後進めていく予定である。具体的にはこれに必要なマイクロサーバの小型化、省電力化、低コスト化を目的としたハードウェア開発、さらにネットワーク接続の互換性の向上、応用プログラム開発におけるミドルウェア利用を促進するための参照システム開発を行う一方で、サイバーアシストコンソーシアム活動を通じてマイクロサーバ技術の共有と普及を図っていく予定である。


用語の説明

◆32ビット
コンピュータがまとめて処理することのできるデータの長さが2進数で32桁であることを示す。一般にこのデータ長が大きいほど高性能とされる。現在利用されているパソコンは大半が32ビットである。[参照元へ戻る]
◆MPU
Micro Processing Unitの略。コンピュータ内で基本的な演算処理を行うコンピュータの心臓部に当たる半導体部品。[参照元へ戻る]
◆マイクロサーバ
ホームページを公開するWebサーバのように複数の利用者に共有されるコンピュータと同様の機能を持つ超小型のコンピュータのこと。ユビキタスコンピューティングにおいては、日常生活のいたるところに組み込まれ、ネットワーク越しに相互連携を行いながら利用者の状況に応じた情報支援を行うプログラムを実行する。[参照元へ戻る]
◆組み込みプログラム
電気・電子機器などに内蔵されるコンピュータ上で動作するプログラムのこと。記憶容量などの制約が多いため、通常のコンピュータプログラムとは異なる設計や実装を必要とする。[参照元へ戻る]
◆ミドルウェア
コンピュータのハードウェア/基盤ソフト(後述)と応用プログラムの間を仲介する汎用ソフトウェアのこと。ネットワーク相互接続やユーザインタフェース機能のように応用プログラムから頻繁に利用される重要な機能をまとめたもので、互換性を保障する標準技術として提供されるもの。[参照元へ戻る]
◆ユビキタスコンピューティング
あらゆるものにコンピュータを組み込むことで、利用者の状況に適した情報サービスが「いつでもどこでもだれでも」利用できるような仕組みのこと。[参照元へ戻る]
◆オープンソース
ソフトウェアを定義するプログラム言語による記述が公開されており、その再利用や改変、再配布などが一定の条件のもとに認められているソフトウェアを形容する言葉。多数の開発者が参加するコミュニティ型の開発方法を形容することもある。[参照元へ戻る]
◆オープンプラットフォーム
ハードウェアの接続情報やソフトウェアの入出力情報などの仕様が公開されたコンピュータシステムの体系のこと。公開された仕様に従って部品を開発・再利用することで、システム開発が行えるため、多くの製品群を生み出す基盤技術として利用される。[参照元へ戻る]
◆サイバーアシストコンソーシアム
 産業技術総合研究所サイバーアシスト研究センターが中核となって2001年に設立したコンソーシアム。人間中心の情報処理システムとその上でのサービス提供の実現を目指すプロジェクトを、大学や企業、独立行政法人を含む国立研究所を組織し、社会を巻き込んで推進するための活動を行っている。[参照元へ戻る]
◆基盤ソフト(オペレーティングシステム、OS)
コンピュータのハードウェアが持つ機能を汎用的に利用できるようにするための制御プログラムのこと。大半のコンピュータシステムの中核に存在し、ユーザとのやりとりや応用プログラムの実行の管理なども行う。[参照元へ戻る]
◆コンパクトフラッシュカード
CFカードともいう。デジタルカメラなどで利用される厚さ3ミリ、縦横4センチほどの四角形をした小型の記録メディアのこと。[参照元へ戻る]
◆情報家電
従来からある家電にコンピュータを組み込みネットワーク接続することで、人間が日常生活で扱う情報をそのままの形で処理できるように高機能化したもの。テレビを例にとるならば、リモコンで数字を入力してチャンネルを指定するのではなく、放送局の名前そのものや、番組の名前やジャンルから選局ができるなどの機能を持つ。[参照元へ戻る]


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