発表・掲載日:2003/03/11

カリウム除去した超高純度食塩の製造技術開発に成功

-人工透析など医療用途に展開-


要旨

 産業技術総合研究所四国センターでは讃岐塩業株式会社および高知工科大と共同して、地域新生コンソーシアム事業により塩化ナトリウム純度99.999%以上の超高純度食塩(以下超高純度塩と省略)を製造する技術を開発した。この超高純度塩は、不純物であるカリウムが8×10-6%まで除去されたことが特徴で、このことによって人工透析など医療分野での使用が期待できる。

 新規開発した製造方法はイオン交換処理と晶析処理プロセスからなり、低コスト、省エネルギーで低カリウムの超高純度塩を生産できる点も有利である。今後、装置のスケールアップ、製造最適化を行ない、3年後の低カリウム超高純度塩の販売をめざす。

新旧食塩製造技術比較図



現状

 製塩業界では塩専売が廃止されたことから、食塩を更に精製して純度99.99%の高純度食塩(以下高純度塩と省略)を製造し、高付加価値の医薬品原料等に展開する方向が摸索されてきた。現在、高純度塩は人工透析用食塩、高級食品、感光乳化剤等の化学製品用途に年間約5万トン、約400億円の市場を形成している。

 食塩には、ナトリウム以外にマグネシウム、カルシウム、カリウムなどのイオンが混入しており、これらを除去するのが食塩の高純度化、さらには超高純度化の鍵である。従来は、晶析処理などにより除去していたが、特にカリウムが効率よく除去された超高純度塩は得られていなかった。

今回の開発

 今回の地域新生コンソーシアム事業で開発した超高純度塩の製造方法は、イオン交換分離技術と晶析を併用した世界で初めての精製プロセス技術であり、カリウム分8×10-6%以下の超高純度塩が海水から低コストで製造できる。

 腎疾患患者等には好ましくないカリウムは食塩中の夾雑物であるが、ナトリウムと性質が類似しており分離されにくい上に食塩結晶中に入り込むため、簡単には分離除去できなかった。そこで、イオンふるい鋳型法を用いて効率的なイオン交換分離体を調製して、カリウム分離する手法を取り入れた。調製したイオン交換分離体は再生可能であり、これを食塩製造プロセスに取り入れることにより低カリウム超高純度食塩を製造することに成功した。

 この研究開発に関して先日特許出願手続きを完了したので、本日初めて成果を公開する。明日3月12日から東京で開催される「地域発先端テクノフェア2003」でも今回の成果を発表する。

 本研究は、経済産業省の即効型地域新生コンソーシアム研究開発事業(「超高純度塩化ナトリウムの製造技術及びその新規利用技術の開発」、管理法人:(財)四国産業・技術振興センター)により、今年3月まで2年間実施。産業技術総合研究所(研究総括代表者 海洋資源環境研究部門 垣田浩孝)、讃岐塩業株式会社、高知工科大学が共同して進めているものである。

超高純度食塩製造装置の写真
カリウム除去カラム装置
 
食塩の写真
超高純度塩の写真
食塩(左)と超高純度塩[Five Nine](右)




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