発表・掲載日:2002/01/15

繊維やプラスチックスに使用可能な光触媒

-これまでの百分の1の時間での製造に成功-


概要

 独立行政法人 産業技術総合研究所 セラミックス研究部門 環境材料化学研究グループ(グループ長 垰田博史)は、二酸化チタン光触媒粒子の表面に部分的にアパタイトを付けた、繊維やプラスチックスに使用可能な光触媒を従来の百分の1の時間で製造することに成功した。これによって抗菌抗かび・脱臭・空気浄化・防汚などいろいろな機能を有する繊維製品やプラスチックス製品を製造するために必要な光触媒を省エネルギーかつ低コストで製造することが可能になり、光触媒の応用や製品化の飛躍的な進展が期待される。



研究の内容

 独立行政法人 産業技術総合研究所 セラミックス研究部門(部門長 亀山哲也)の 環境材料化学研究グループ(グループ長 垰田博史)は二酸化チタン光触媒粒子の表面に部分的にアパタイトを付けて繊維やプラスチックスに使用可能にした光触媒を従来の百分の1の時間で製造することに成功した。光触媒は近年、マスコミなどで頻繁に取り上げられており、光を当てるだけで働き、ほぼ全ての有害化学物質を分解・無害化することができるため、環境浄化技術の切り札として注目を集め、環境の世紀である21世紀の技術として期待されている。光触媒は水処理、排ガス処理、大気浄化、シックハウス対策、抗菌抗かび、防汚、防曇など、さまざまな用途に使用できるため、2005年には1兆円の市場に成長すると予想されている。しかし、その反面、繊維やプラスチックスに練り込んで使用すると繊維やプラスチックス自体を分解してしまうため、市場性のある、光触媒を使用した抗菌脱臭繊維や抗菌脱臭防汚塗料、抗菌脱臭防汚フィルムなどの製造が困難であった。

 二酸化チタン光触媒粒子の表面に光触媒活性を持たないセラミックスを部分的に付けた光触媒は、環境材料化学研究グループの垰田博史グループ長が考案したもので、既に基本特許を取得している。これを繊維やプラスチックスに練り込んで使用すると、光触媒活性を持たないセラミックスが二酸化チタン光触媒と繊維やプラスチックスが接触するのを防ぐため、繊維やプラスチックスが分解されないで、光触媒効果を発揮することができる。そして、光触媒活性を持たないセラミックスがアパタイトの場合には、アパタイトが菌やかびを吸着するため、抗菌抗かび特性を効率良く発現することができる。しかし、これまで、表面に部分的にアパタイトを付けた二酸化チタン光触媒粒子をつくるためには、擬似体液に二酸化チタン粒子を入れて40℃程度の温度で1昼夜から10日間保持しなければならず、時間がかかり温度管理も面倒であった。今回、溶液の組成を変え合成条件を検討することにより、数分から数十分という従来の百分の1の時間で製造するという画期的な成果が得られた。これによって抗菌抗かび・脱臭・空気浄化・シックハウス対策・院内感染防止・防汚などいろいろな機能を有する繊維製品やプラスチックス製品を製造するために必要な、二酸化チタン光触媒粒子の表面に部分的にアパタイトを付けて繊維やプラスチックスに使用可能にした光触媒を省エネルギーかつ低コストで製造することが可能になり、二酸化チタン光触媒の応用や製品化が飛躍的に進展すると期待される。

資料

環境浄化材料 「二酸化チタン光触媒」

 二酸化チタンに光が当たるとマイナスの電気を持った電子とプラスの電気を持った正孔ができます。この電子と正孔は水や酸素と反応してOHラジカルなどの活性酸素を作ります。活性酸素は非常に大きなエネルギーを持っているため、環境中の有害物質を炭酸ガスなどに分解・無害化することができ、大気中の汚染物質も酸化して浄化し、無害化することができます。その他、悪臭の分解や毎日少しずつついてくる汚れの分解、曇り止め、タンカー事故で流れ出した原油の分解処理、細菌やかびの繁殖防止などさまざまな用途に使うことができます。そして、二酸化チタンは食品添加物としても利用されている安全無毒な物質で、光が働くために世界中どこでも利用することができます。

環境浄化材料「二酸化チタン光触媒」の説明図

環境浄化材料「二酸化チタン光触媒」の説明
二酸化チタン光触媒粉末の写真
二酸化チタン光触媒粉末
  アパタイトをつけた二酸化チタン光触媒粒子の写真
アパタイトをつけた二酸化チタン光触媒粒子
 
二酸化チタンをつけたスライドガラスと
さらにアパタイトをつけた状態のスライドガラスの写真
二酸化チタンをつけたスライドガラス(左)と
さらにアパタイトをつけた状態のスライドガラス
  アパタイトをつけた二酸化チタン膜表面写真
アパタイトをつけた二酸化チタン膜の表面写真
(電子顕微鏡)
 




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