発表・掲載日:2001/09/04

プラスチックのリサイクルに新技術

-高分子の密度の迅速決定法を新開発-

ポイント

  • 廃プラスチックのリサイクルにおいて、再生品の品質を上げるためには、プラスチックの密度を知る必要がある。
  • プラスチックの生産現場においても、製品の品質を高めるために、プラスチックの密度を知る必要がある。
  • しかし、これまでの密度測定法では時間がかかりすぎ、プラスチックのリサイクルや生産管理に使えるものはなかった。
  • 今回の方法は、迅速かつ簡便にプラスチックの密度を測定でき、プラスチックのマテリアルリサイクルや高品質のプラスチックの生産に道を拓く。

概要

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】計算科学研究部門【部門長 寺倉 清之】 は、富山県工業技術センター【所長 南日 康夫】及びオプト技研株式会社【代表取締役社長 天野 敏男】 と共同で、高分子の密度を正確かつ迅速に測定する技術の開発に世界で初めて成功した。この測定技術によって、廃プラスチックのマテリアルリサイクルや、高品質の高分子の生産が進むものと期待される。

 研究グループは、プラスチックの密度を従来の方法より迅速に決定する方法として、近赤外スペクトル測定とニューラルネットワーク解析を組み合わせた方法を検討した。密度既知のポリエチレン試料について1.1 -2.2 µm領域の近赤外スペクトルを測定し、スペクトルデータをニューラルネットワーク*に入力して解析した。その結果、平均誤差0.2%以内でポリエチレンの密度が迅速に決定できることを世界で初めて見出した。

 本成果は、第50回高分子討論会【日時:平成13年9月12日(水)~14日(金)場所:早稲田大学大久保キャンパス、主催:社団法人高分子学会】において発表する。

*ニューラルネットワーク:人間の脳神経で行われている信号処理を模倣した情報処理技術。科学技術分野だけでなく、経済などの分野でも利用。最近の脳型コンピュータ開発でも注目。



研究の背景

 廃プラスチックのリサイクルは技術的にもここ数年で大きく進展し、容器包装類、家電製品、自動車、農業用品、建築廃材など色々な分野で取組みが行なわれている。そんな中、リサイクルへの要求が年々高度化してきており、マテリアルリサイクルでは樹脂ごとの分別だけでなく、リサイクル製品の品質低下を防ぐために同じ樹脂でもグレード (密度) 別に分別することが要求されている。また、高分子の生産管理においても、密度を迅速に決定する技術が要求されている。

 従来、高分子材料の密度測定には水中置換法、ピクノメーター法、浮沈法、密度勾配管法、赤外線スペクトル、X線及び中性子線回折、示差走査熱量測定(DSC)、固体NMR測定法等の方法が使用されている。しかしこれらの方法は迅速性に欠けるため、現時点でリサイクルや生産管理に用いることができない。

 我々は前回、廃プラスチックについて近赤外スペクトルを測定し、データをニューラルネットワークにより解析して、多種類のプラスチックを迅速に識別する手法を開発した。近赤外線を用いる測定では、前処理を行なう必要がなく、迅速な測定が可能である。そこで、本研究では同一種類のプラスチックについて、近赤外スペクトルのデータから密度の識別が可能かどうかを検討した。

研究の経緯

 本研究では測定対象の高分子としてポリエチレンを選び、市販の密度既知のポリエチレンペレット及び粉末23種 (密度0.898~0.960) についてオプト技研製の装置を用い、1.1 -2.2 µm の近赤外スペクトルを測定した。このデータを富士通製のニューラルネットワークソフトウエアに入力し、解析を行った。

 本法による密度予測能力を判定するために、ニューラルネットワークを学習し、収束後のニューラルネットワークに未学習のデータを入力して密度の予測値を求め、実測値と比較した。

 その結果、密度の予測値は実測値と平均誤差0.2%内で一致し、今回の方法でポリエチレンの密度が高い精度で迅速に決定できることを見出した。

 この方法はポリエチレン以外の高分子材料の密度測定にも適用可能である。

 また、近赤外スペクトルを測定するため、検査材料の前処理が必要なく、従来の方法に比してより簡便かつ迅速に高分子材料の密度測定が可能である。廃プラスチックのリサイクルや高分子の生産管理に実用が期待される。

今後の予定

 さらに近赤外スペクトルのデータから密度以外の物性も決定できるかどうか検討中。




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