受賞

2018/04/19

平成30年度科学技術分野の文部科学大臣表彰を受賞

林文部科学大臣 ご祝辞の写真
林文部科学大臣 ご祝辞

平成30年度科学技術分野の文部科学大臣表彰(科学技術賞・若手科学者賞)の表彰式が4月17日に文部科学省にて、平成30年度科学技術分野の文部科学大臣表彰(創意工夫功労者賞)の伝達式が4月19日に産総研つくばセンターにて行われ、産総研から科学技術賞研究部門2件と若手科学者賞、創意工夫功労者賞それぞれ1件が表彰されました。

この表彰は、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者について、その功績を讃えることにより、科学技術に携わる者の意欲の向上を図り、もって我が国の科学技術水準の向上に寄与することを目的として行われています。


 

【科学技術賞 研究部門】

(右)情報技術研究部門 花岡 悟一郎 グループ長と(左)早稲田大学 岩村 佳奈 教授の写真
 

情報技術研究部門 花岡 悟一郎 グループ長
早稲田大学 清水 佳奈 教授
東京大学 縫田 光司 准教授

「高度機能暗号およびその秘匿検索技術への応用に関する研究」

ビッグデータ、ライフデータの解析結果に基づく事象の予測精度や原因特定能力の向上が、近年、強く期待されている。しかし、有用なデータベース(DB)の多くは企業秘密や個人のプライバシーに直結しており、これらの積極的な活用が困難となっている。

企業秘密や個人情報など機密性の高いDBに対し、暗号技術で情報漏洩を強固に防ぎつつ安全・高速に検索を行える「秘匿検索」技術を開発した。この秘匿検索技術により、ユーザの検索内容をDB側にすら秘密にでき、また検索結果以外のDB情報がユーザに伝わらないことも保証できる。

本成果は、幅広い分野で社会的・産業的に価値の高いDBの利活用促進に寄与することが期待される。


物理計測標準研究部門 福田 大治 研究グループ長の写真
 

物理計測標準研究部門 福田 大治 研究グループ長

「超伝導による光子検出とその分光イメージングに関する研究」

微小な物体や細胞を可視化する光学顕微鏡は、産業や医療を始め様々な分野で広く使われている。しかし、観察試料からの蛍光や反射光が極めて微弱な場合には、その光量不足から画像が暗く不明瞭となる課題があった。

光の最小単位である「光子」に着目し、超伝導現象より光子を高精度に分光可能な新しい測定技術を開発した。それを顕微鏡へ応用することで、単一光子分光イメージングが可能な「光子顕微鏡」を世界で初めて実現した。

光子顕微鏡により、通常の光学顕微鏡では観察ができないような1個~数十個程度の光子数に相当する光強度でも、光子一つ一つのエネルギーを測定することで、鮮明なカラー画像を得ることに成功した。

本成果は、光によってダメージを受けやすい試料や細胞の非侵襲観察に応用でき、細胞内反応や機能をありのままに測定できる可能性があることから、疾病メカニズムの解明や新治療薬の発見などに寄与することが期待される。


【若手科学者賞】

スピントロニクス研究センター 植田 暁子 主任研究員の写真
 

スピントロニクス研究センター 植田 暁子 主任研究員

「ナノスケールデバイスにおけるフォノン制御の理論研究」

近年、量子コンピュータ等の量子力学的な効果を用いたデバイスの開発が進んでいる。電子の量子力学的な性質を壊す要因としてフォノンが挙げられる。デバイスにおけるフォノンの役割を解明し、制御することがデバイス実用化のための重要課題の1つになっている。

理論的な手法を用いて、量子ドットや分子接合などのナノスケールデバイスにおいて、電子がフォノンに起因して位相緩和を起こすメカニズムを明らかにした。さらに、量子ドットを用いて電気的にフォノン分布を測定するデバイス、AC電圧を用いてフォノン分布を制御する分子デバイスなど、フォノンを積極的に利用したデバイスを提案した。

本成果は、量子コンピュータの実用化や次世代量子デバイス開発の進展に寄与すると期待される。


【創意工夫功労者賞】

工学計測標準研究部門 薊 裕彦 主任研究員の写真
 

工学計測標準研究部門 薊 裕彦 主任研究員

「実習用タクシーメーター装置検査設備の改良」

従来、屋外で組立式(移動式)の検査設備を用いて、そのローラー上にタクシー車両を自走(約40km)する実習を行っていたが、環境面や安全面に課題があった。新設したタクシーメーター装置検査設備棟では、タクシーメーター装置検査設備をピットに埋め込み、ローラー駆動方式を採用することで、高い安全性を確保した。また、全国的に進むタクシー車両の多様化に対応するため、すべての駆動方式に対応した仕様にするとともに、タクシーメーターの新たな技術基準に対応し、料金表示と距離表示の検査が実施できるようになった。

その結果、産総研が実施する計量教習において、計量法で定められている特定計量器であるタクシーメーターの正確な計量実習を実現可能とし、地方自治体の計量行政に従事している公務員の育成にも貢献している。