受賞

2013/04/23

平成25年度科学技術分野の文部科学大臣表彰を受賞

平成25年度科学技術分野の文部科学大臣表彰(科学技術賞・若手科学者賞)の表彰式が4月16日に文部科学省にて、平成24年度科学技術分野の文部科学大臣表彰(創意工夫功労者賞)の伝達式が同日に産総研つくばセンターにて、行われました。

 この表彰は、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者について、その功績を讃えることにより、科学技術に携わる者の意欲の向上を図り、もって我が国の科学技術水準の向上に寄与することを目的として行われています。

下村文部科学大臣の写真
  下村文部科学大臣 ご祝辞
科学技術賞 研究部門

先進製造プロセス研究部門 藤代 芳伸 研究グループ長
企画本部 鈴木 俊男 産業技術企画調査員
先進製造プロセス研究部門 山口 十志明 主任研究員

「イオン伝導性セラミックスによる電気化学リアクターの研究」

 イオン伝導性材料を活用する電気化学デバイスの電解質や電極の構造制御と高集積化を検討し、650℃の低温域で利用可能な高出力チューブ型マイクロ燃料電池技術を実現するとともに、急速起動にも耐えるコンパクト発電モジュール技術を見いだし、量産性に優れ、高性能化を可能とする革新的な製造技術を開発した。

 本成果は、小型電源システムなどの省エネ電源デバイスの発展への貢献や関連製造産業の競争力強化に寄与することが期待される。

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ナノテクノロジー・材料・製造分野研究企画室 吉田 勝 研究企画室長
ナノシステム研究部門 秋山 陽久 主任研究員
電子光技術研究部門 則包 恭央 主任研究員

「光による液体-固体相変化材料の研究」

 複数のアゾベンゼンを、環状もしくは多分岐状に導入することで、室温で光のみによる単一物質の液体固体間の可逆的相変化の制御に世界で初めて成功した。この物質を用いることで、温度を変えることなく光照射のみで可逆的に接着と脱着が行うことが可能な光制御接着性能を実証した。可逆光反応を利用した産業プロセスに大きな経済効果が期待でき、接着剤の分野では、再作業を可能とする新たな生産技術の実現に寄与することが期待される。

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科学技術賞 科学技術振興部門

中部センター 中部産学官連携センター

阪口 修司 総括主幹

「国際標準化の推進によるファインセラミックス技術の振興」

 日本が主導してISO(国際標準化機構)に設置したファインセラミックスに関する専門委員会おいて、材料の「硬さ」及び「弾力率」測定方法のISO規格作成のための作業部会の主査を担当し、議論を主導した。これらの規格は2000年及び2002年に発行された。2005年よりこの専門委員会の国際幹事を担当し、30件以上のISO規格発行に継続的に貢献している。日本の国際優位性の維持に寄与し、国際規格の作成を通じてこの産業分野が健全に発展することに寄与している。

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若手科学者賞

生物プロセス研究部門

菊池 義智 主任研究員

「害虫の農薬抵抗性に関わる共生微生物の研究」

 難防除害虫であるカメムシ類が農耕地土壌中に生息する農薬分解菌を取り込んで体内に共生させ、これにより農薬抵抗性を獲得することを発見した。従来、農薬抵抗性は害虫自身の遺伝子で決定されるものと考えられてきたが、この発見はそのような常識を覆すものである。害虫における農薬抵抗性の進化や害虫防除戦略の策定に新しい観点を提示するものであり、その総合的な理解を通じて害虫の新規防除技術の開発につながるものと期待される。

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バイオメディカル研究部門

沼田 倫征 主任研究員

「転移RNA修飾酵素の構造と機能の研究」

 tRNAのアンチコドン1字目に存在する修飾ヌクレオシドの修飾が欠損すると重篤な疾患を引き起こすことが知られている。2-アグマチニルシチジンと5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジンの生合成に関わるtRNA修飾酵素の同定、結晶構造解析、機能解析から、新規かつ詳細な触媒反応機構を世界に先駆けて解明することに成功した。tRNA修飾の研究は疾患の原因を究明する上でも重要であり、将来的に新規な治療方法の確立に結実すると期待される。

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ナノスピントロニクス研究センター

野崎 隆行 主任研究員

「超低消費電力スピン制御技術の研究」

 低磁界で反転可能な磁性多層膜構造の提案や、電界制御型3端子デバイスのためのスピン依存共鳴トンネル効果の実現等、スピン制御技術の改善に取り組んできた。特に、極限まで超薄膜化した強磁性金属と絶縁体との界面で生じる特異な電界効果に着目し、電界によるスピンダイナミクス制御を世界に先駆けて実現するなど、大きなブレークスルーをもたらした。スピントロニクスデバイスの超低消費電力駆動化を実現すると期待される。

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ヒューマンライフテクノロジー研究部門

山本 慎也 主任研究員

「時間と空間の脳内表現のメカニズムの研究」

 空間と時間という独創的な視点に立ち、心理学及び生理学の手法を駆使して認知機構の解明に取り組んできた。腕を交差すると両手に与えられた触覚刺激の順番が逆転するという現象を発見し、脳内での時間と空間の情報が相互作用することを明らかにした。また、尾状核尾部という小さな脳領域において外界からの感覚情報が統合され、行動に変換されていることを発見した。脳卒中患者の時空間認知リハビリテーション等臨床応用への架け橋になると期待される。

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創意工夫功労者賞

計測標準研究部門

島田 正樹 主任研究員

大谷 怜志 研究員

「流量計特性試験装置の高精度化への改良」

 水道メーターの法定計量の国際規格であるOIML R49に整合すべく試験装置の高精度化を図った。水温及び水圧変動の試験を実施可能とした。電子天びんへの振動の影響を低減させ、より精度の高い試験を可能とした。電子天びんの設置環境を改善して定期的な校正及び管理に伴う作業時間を半分に短縮できた。試験可能な流量範囲を拡大した。水温変動を抑え、10万回の通水停水反復繰り返しに対する耐久性の評価を可能とした。

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