産総研:ニュース

お知らせ記事2016/04/01

「磁性粉末冶金研究センター」を設立
-産業を支える磁性材料とプロセス技術をつくる-

 国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)は、平成28年4月1日に「磁性粉末冶金研究センター(MagMet)」【研究センター長 尾崎 公洋】を設立します。部素材のバリューチェーン強化を目指す材料・化学領域【領域長 村山 宣光】の4つ目の研究センターとなります。

 機能性材料の中で磁性材料は、従来からさまざまな工業製品用途に利用されており、近年もその需要は衰えていません。サステナブルな産業・社会を目指す観点から、より高い材料性能を実現する新たな磁性材料技術が要求されています。特に、ハード磁性材料(永久磁石)やソフト磁性材料は、低炭素社会の実現に貢献する次世代自動車や電化製品などに用いられる高性能モーターを構成する重要な材料です。また、磁気熱量材料は地球温暖化ガスを全く使用しない次世代の冷凍システム(磁気冷凍システム)の構成材料として期待されています。

 本研究センターでは、資源リスクの少ない高性能磁石の開発や、エネルギー損失の少ないソフト磁性材料の開発、磁気熱量材料を使用した高効率冷凍システムの開発などにより、サステナブルな産業・社会を支える磁性材料や製造に関わるプロセス技術の開発を目指します。磁性材料を開発するための材料設計、材料組織制御、計算科学を駆使し、実験室レベルから実用レベルまで一貫した開発を進めます。特に実用レベルの開発においては、積極的に企業と連携して進めることで、製品化への道筋を早期につけることを目指します。

磁性粉末冶金研究センターのミッションと研究開発と概要図
磁性粉末冶金研究センターのミッションと研究開発と概要

(参考情報:磁性材料について)

 近年急速に生産量が増加しているハイブリッド自動車や電気自動車、さらには次世代自動車である燃料電池自動車の駆動用モーターには、その小型化と省エネルギー化にハード磁性材料やソフト磁性材料が重要な役割を果たしています。モーターの高効率化を実現するためにこれらの磁性材料に要求される性能はますます高くなっています。特に、永久磁石は資源リスクの高い重希土類元素を使用しない材料を開発することが求められています。これらの磁性材料は、風力発電などの発電機にも生かすことができるため、エネルギーを作り出すことにも寄与できます。

 さらに環境という点に注目すると、地球温暖化に対する厳しい規制が求められており、冷凍機に使用されているフロン類の排出削減をより一層進める必要があります。この問題に対して、フロン類の代わりに磁性材料で冷凍を行う磁気冷凍システムが考え出されており、その早期実用化が望まれております。

 以上のように、磁性材料は、資源、環境、エネルギーに関連する問題に対応する産業分野に役立つことが期待できます。