産総研:ニュース

お知らせ記事2014/10/30

11月より不実施補償を廃止
-企業との連携、成果の普及を加速するため、共有知財の取扱い方針を見直し-

ポイント

  • 共有知財について、共有者が非独占的に実施する場合に共有者に求めていた補償を廃止
  • 共有知財について、第三者へ実施許諾する際の当事者間の調整を簡素化
  • 以上により、企業との連携を加速し、研究成果を活用したイノベーション創出を促進

概要

独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)は、共同研究をはじめとした連携制度を通じた産学官連携の推進とその成果の普及によってイノベーション創出を促進するため、共同研究などにより民間企業との間で創出された共有の知的財産権(以下「共有知財」という)の取扱いについて、見直しをすることとしました。この変更は平成26年11月1日以降に締結する共同研究契約、受託研究契約より適用いたします。

主な変更点は、民間企業が産総研との共有知財を非独占的に実施する場合、原則として不実施補償料を請求するという従前の取扱いを廃止する点【表1】と、共有知財について各々の共有者が互いに単独で第三者企業と実施許諾契約を締結できることとする点【表2】です。

これにより、産総研は民間企業との共同研究などをさらに推進するとともに、共同研究相手企業および第三者企業がその共同研究成果の活用を促進することにより、イノベーションの創出が加速されることが期待されます。

なお、民間企業が産総研との共有知財を独占的に実施する場合には、産総研は民間企業に対して独占実施料を請求します。

【表1】 共同研究により創出される共有知財についての不実施補償
共有者の実施態様 旧取扱い 新取扱い
非独占的に自己実施 不実施補償料を請求する(資金提供額が一定額以上または国が推進する研究開発プロジェクトの場合は請求しない) 不実施補償料を請求しない
独占的に自己実施 不実施補償料を請求する 独占実施料を請求する

【表2】 共有知財の第三者企業への実施許諾(共有者をA、Bとする。)
変更する契約項目 旧取扱い 新取扱い
契約当事者 共有者全員(AandB)+第三者企業 共有者のうち一者(AorB)+第三者企業
第三者からの実施料 共有者全員(AandB)で分配 契約当事者(AorB)が取得

 

社会的背景と経緯

近年、内部では得られない発想や技術を外部から取り込むオープンイノベーションの取組が世界的に拡大しています。こうした動きに呼応して、産総研においてもイノベーション創出の主体となる民間企業をはじめとするさまざまな機関との広範な連携と、連携の成果である共有知財の活用が重要であるとの認識のもと、産学官連携を推進してきたところです。

これまで産総研では、民間企業が産総研との共有知財を実施する場合に、その実施態様が独占的であっても非独占的であっても一律に不実施補償料を請求することを原則とする取扱いをしてまいりました。平成19年度には一部の大型の共同研究に関してこれらの条件の緩和を図るなど取扱いの見直しも行ってきましたが、民間企業からは、更なる見直しが要望されていたところです。

一方で産総研と共同研究相手企業との共有知財を第三者企業に実施許諾する場合には、産総研と共同研究相手企業とで調整を行ったうえで実施許諾契約を締結しておりましたが、第三者企業からはより調整を簡素化することが求められていたところです。

これらを踏まえ、産総研では民間企業との共有知財の取扱いを見直すことにより、共同研究を始めとした民間企業との連携を一層推進するとともに、成果の普及に向けて機動的な運用を行うことを通じてイノベーション創出を促進したいと考えております。

変更の内容

今回の変更では、民間企業が産総研との共有知財を非独占的に実施する場合に、不実施補償料を請求しないこととしました。なお、民間企業が産総研との共有知財を独占的に実施する場合には、独占実施料を請求いたします。

また、産総研と民間企業との共有知財を第三者企業に実施許諾する場合には、共有者の一者および第三者企業を契約当事者とすることができることとするとともに、第三者企業からの実施料は契約当事者たる権利者(共有者の一者のみ)が取得できることとしました。

本制度の運用は、平成26年11月1日から開始します。

 

期待される効果

今回の不実施補償の廃止等の共有知財の取扱いの見直しによって、共同研究契約をはじめとした契約の調整が円滑に進むことにより、産学官連携が推進されることが期待されます。また、産総研と民間企業との共有知財の第三者企業への実施許諾の調整が円滑に進むことにより、共同研究によって得られた成果の産総研による普及および共同研究相手企業による普及が加速されることが期待されます。そして、これらによりイノベーションの創出が促進されることが期待されます。

用語の説明

◆非独占的に実施
知財を実施する権利を有する者が、他に当該知財を実施する者または当該知財を実施し得る者が存在する状況の下で、当該知財を実施することをいう。[参照元へ戻る]
◆不実施補償料
大学、公的研究機関などは法令の定めにより知財を実施して利益を上げることができない。したがって、大学、公的研究機関などと民間企業との共有知財については、民間企業同士の共有知財について互いに自由に実施する場合と異なり、共有者たる民間企業が知財の実施により得られる利益を独占することになる。そのため、大学、公的研究機関などは、共有者たる民間企業が共有知財を実施した場合、それによって得られた利益の一部を当該民間企業に請求する。これを不実施補償料という。[参照元へ戻る]
◆独占的に実施
知財を実施する権利を有する者が、他に当該知財を実施する者および当該知財を実施し得る者が存在しない状況の下で、当該知財を実施することをいう。[参照元へ戻る]
◆独占実施料
共有知財について共有者の一者(主に民間企業)が当該知財を独占的に実施することとした場合、他の共有者(主に大学、公的研究機関など)は、当該知財について実施はもとより第三者への実施許諾もしないという制限を課されることになる。そのため、当該他の共有者は、知財を独占的に実施する共有者に対してかかる制限の対価を請求する。これを独占実施料という。[参照元へ戻る]