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お知らせ記事2013/09/25

「福島再生可能エネルギー研究所」の設立について
-再生可能エネルギーの大量導入の早期実現を目指す-

ポイント

  • 平成26年4月の開所に先行して福島再生可能エネルギー研究所を平成25年10月1日に設立
  • 「世界に開かれた再生可能エネルギーの研究開発の推進」と「新しい産業の集積を通した復興への貢献」をミッションとするオープンイノベーションのハブ(連携拠点)を目指す
  • 水素や蓄電池などによるエネルギー貯蔵と制御技術を駆使した再生可能エネルギーシステム統合技術、太陽光発電技術、先進的風力発電技術、地熱・地中熱の適正利用のためのデータベース構築など、世界最先端の研究を実施

概要

独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)は、福島再生可能エネルギー研究所の平成26年4月の開所に先行して、福島再生可能エネルギー研究所【所長 大和田野 芳郎】を平成25年10月1日に設立する。

福島再生可能エネルギー研究所では、「世界に開かれた再生可能エネルギーの研究開発の推進」と「新しい産業の集積を通した復興への貢献」を大きな使命とし、国内外から集うさまざまな人々と共に、再生可能エネルギーに関する新技術を生み出し発信する拠点を目指す。建物は、福島県郡山市西部第二工業団地に平成26年1月に竣工予定で、開所までの研究活動は産総研つくばセンターで実施する。

なお、福島再生可能エネルギー研究所では、研究推進組織として再生可能エネルギー研究センター【研究センター長 大和田野 芳郎】を、研究支援組織として福島連携調整室および福島研究業務推進室を設置し、同研究所内で研究活動を展開する独立行政法人 科学技術振興機構(JST)などの外部機関と連携する。

福島再生可能エネルギー研究所体制図
福島再生可能エネルギー研究所の体制図

設立の経緯

産総研は、政府の東日本大震災復興基本法第3条に基づき制定された「東日本大震災からの復興の基本方針」および「福島復興再生基本方針」などを受けて、「再生可能エネルギーさきがけの地、福島」に福島再生可能エネルギー研究所を設立することを決定した。

これまでに、福島県郡山市西部第二工業団地に土地を購入し、郡山市と平成24年11月に連携・協力協定を締結した。平成24年12月に建設工事を着工し、現在整備を進めている。

開所までの予定

平成26年1月に建物(研究本館および実験別棟)を竣工し、順次研究開発設備の搬入・設置を進める。平成26年4月に福島再生可能エネルギー研究所を開所し、本格的に研究活動を開始する。

研究内容

再生可能エネルギーの大量導入の早期実現に向けて、以下の6つの課題を中心に、国内外の多様な外部機関と共同で世界最先端の再生可能エネルギーの研究開発を実施する。

1)再生可能エネルギーネットワーク開発・実証
大きく変動する再生可能エネルギーの高密度の大量導入に必要な、さまざまなエネルギー貯蔵技術を活用したエネルギーネットワークを構築し、エネルギー需要とのマッチングや電力系統との円滑な連系を可能とする技術を開発・実証する。

2)水素キャリア製造・利用技術
太陽光・風力発電などの変動電源から水素キャリア(有機ハイドライド、アンモニアなど)を製造することにより、変動する再生可能エネルギーを大量貯蔵・輸送し、高効率で利用するシステム技術を開発・実証する。

3)高効率風車技術およびアセスメント技術
遠方の風向や風速などの計測による発電量向上などの技術を確立し、発電および風車寿命の向上のための研究を実施する。

4)薄型結晶シリコン太陽電池モジュール技術
結晶シリコン基板から太陽電池モジュールまでの一貫製造ラインを用いて、高効率・低コスト・高信頼性を兼ね備えた薄型結晶シリコン太陽電池モジュールの量産化技術の開発を実施する。

5)地熱発電の適正利用のための技術
地熱発電所の持続的な運転や周辺温泉への影響監視・評価に必要なモニタリング技術、地熱発電可能地域を拡大する技術などの開発を実施する。

6)地中熱ポテンシャル評価とシステム最適化技術
地下水流動・熱交換量予測シミュレーションに基づく地中熱ポテンシャルマップを作成し、それを活用して地中熱利用システムの最適化・高精度設計技術の開発を実施する。

福島再生可能エネルギー研究所の完成予想図と主要な研究テーマの図
福島再生可能エネルギー研究所の完成予想図(平成26年1月建物竣工予定)と主要な研究テーマ

これらの6つの研究課題に加え、欧米やアジアなどの研究機関との共同研究・人材交流を進め、国際的な再生可能エネルギーの中核的研究拠点を目指す。

なお、産総研の知見・経験、研究設備を用いて、被災三県に拠点を有する企業の技術シーズが詰まった製品・技術の性能などの評価事業も実施する。

また、文部科学省やJSTなどのプロジェクトを通じて、大学および関連企業と次世代太陽光発電技術の開発を行うとともに、地元大学などから人材を受け入れ、産総研研究者との共同研究を通じて、再生可能エネルギー分野に係る人材育成を実施する。

このような取り組みにより、世界に開かれた再生可能エネルギーの研究開発の推進と新しい産業の集積を通した復興に貢献する。

用語の説明

◆「東日本大震災からの復興の基本方針」
(抄)(平成23年7月29日、東日本大震災復興対策本部)
 6 原子力災害からの復興
(2)復興対策
 1)再生可能エネルギーの拠点整備
 (i)再生可能エネルギーに関わる開かれた世界最先端の研究拠点の福島県における整備、再生可能エネルギー関連の産業集積を促進する。[参照元へ戻る]
◆「福島復興再生基本方針」
(抄)(平成24 年7 月13 日、閣議決定)
第6 新たな産業の創出及び産業の国際競争力の強化に寄与する取組その他先導的な施策への取組の重点的な推進のために政府が着実に実施すべき施策に関する基本的な事項
 2 新たな産業の創出等のための施策
(2)研究開発の推進等のための施策
 再生可能エネルギーに関しては、再生可能エネルギーの研究開発、実証等を通じて産業創造に取り組み、福島の再生可能エネルギー産業拠点化を目指す。
 具体的には、独立行政法人産業技術総合研究所を中心とする産学官の連携により、技術開発から実証までを行う研究開発拠点の整備や、地域に存在するバイオマスなど再生可能資源の効果的活用のための技術開発、浮体式洋上風力発電の早期事業化と福島発の洋上発電技術の国際標準を先導するような研究開発、試験活動の強化・機能の集積により、関連産業の創出を図る。[参照元へ戻る]
◆水素キャリア
水素を大量に貯蔵・輸送するために、水素を含む化合物に化学変換したエネルギー媒体である。水素キャリアの一つに有機ハイドライドがあり、トルエンに水素を化合したメチルシクロヘキサンなどが用いられる。メチルシクロヘキサンは常温常圧で液体であり、ガソリンと同様に取り扱えるため、既存の石油系インフラが活用できる。[参照元へ戻る]
◆太陽電池モジュール
太陽電池のセルを、ガラス基板や封止材とパッケージングしアルミフレームなどを取り付けたものを太陽電池モジュールと呼ぶ。屋外に設置する場合には、高い出力を得るためにセルを複数枚接続した大面積の太陽電池モジュールを用いる。[参照元へ戻る]
◆結晶シリコン太陽電池
結晶シリコンを材料として用いた太陽電池で、一般的に普及している太陽電池の9割近くを占める。1枚のシリコン基板からなる太陽電池をセル、あるいは単セルと呼ぶ。[参照元へ戻る]
◆地中熱ポテンシャルマップ
地下地質や地下水流動などの水文地質学的視点から各地域における地中熱の利用可能性(ポテンシャル)を評価し、その分布を表したマップ。その地域に最適な地中熱利用システムのタイプの選定や、熱交換井の掘削深度の見積りなどに活用できる。[参照元へ戻る]