産総研:ニュース

お知らせ記事2018/02/05

NEC・産総研・理研、AI研究の連携を開始
-基盤技術開発から実用化まで一貫で加速-

日本電気株式会社(以下 NEC)、国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下 産総研)、国立研究開発法人 理化学研究所(以下 理研)は、AIにおける最先端の研究テーマ「未知な状況における意思決定」と「自律型AI間の協調」について、基盤技術開発から実用化まで一貫で、三者の一体連携により加速していくことに合意しました。これに伴い、平成29年12月22日に共同研究に係る覚書を締結しています。

本連携では、「NEC-産総研人工知能連携研究室」(注1)および「理研AIP-NEC連携センター」(注2)の活動において、研究開発に関する情報の共有、ソフトウエアの共同開発、設備などの研究リソースの相互利用により、応用ソリューションと要素技術の間のすり合わせの効率化、さらにより高いレベルでの整合性による活動効率化、研究成果最大化を目指します。

今回、三者一体連携によるAI研究テーマは、ビッグデータ分析における過去データが不十分な「未知な状況における意思決定」、個別システムのスマート化の進展により求められる「自律型AI間の協調」です。事象の絶え間ない変化による不確実で複雑な実世界を支える巨大なシステムを円滑に動作させるための新たな技術分野として確立し、AI研究のさらなる加速と社会・産業への貢献に向けて共同で取り組んでいきます。


背景

今回、NEC、産総研、理研の三者は、AIの実社会への急速な普及において、将来必ず起こりうる社会課題に対して、先行的に研究を進め、課題の早期解決・予防を実現することを目的に、「NEC-産総研人工知能連携研究室」および「理研AIP-NEC連携センター」の組織を超えた三者連携の共同研究に合意しました。これに伴い、平成29年12月22日に共同研究に係る覚書を締結しています。AIの基盤技術開発から実用化まで一貫した研究を加速し、わが国の産業競争力のさらなる強化へ寄与します。

NEC-産総研人工知能連携研究室は、システム全体が最適に機能するための動作原理や機能仕様などの追及を分担し、理研AIP-NEC連携センターは、事業優位性の確保に必要な要素技術の圧倒的な高性能化のための速度・規模・精度などの追及や理論限界の解明などを分担します。平成30年1月より連携を開始しました。


(注1) NECと産総研は2016年6月にNEC-産総研人工知能連携研究室を産総研人工知能研究センター内に設立し、シミュレーションとAIの融合技術による、「未知の状況での意思決定」や「自律型人工知能AI間の利害/挙動調整協調」に関するソリューションの開発を目指して研究を進めています。
2016年4月5日プレスリリース

(注2) NECと理研は、2017年4月に理研AIP-NEC連携センターを理研革新知能統合研究センター(AIPセンター)内に設立し、「未知の状況での意思決定」や「自律型AI間の協調」における要素技術の劇的な性能改善や理論的限界の解明を目指して研究を進めています。
2017年3月10日プレスリリース


研究の内容

◆「未知の状況での意思決定」
人間の意思決定の対象が複雑化する現在、意思決定を高度に支援するAI技術が期待されます。これには熟練者のノウハウを知識ベース化して活用する自動推論技術が有望ですが、未知の事象への対処には、複雑化した対象を網羅的に知識ベース化する必要があり、その膨大なケースデータを蓄積することの現実性から実現が困難です。
本連携では、複雑化した対象をシミュレーションした上で自動推論技術と融合することで、現実的な規模の知識ベースから妥当な推論を行う技術を開発します。
この技術により、社会インフラのオペレーションにおいて、非熟練オペレーターでも熟練オペレーターと同等の意思決定が可能となり、経験不足によるオペレーションミスを飛躍的に削減できます。
例えば発電所などの生活インフラの運転では、ますます不足する熟練者に依存した運用を改善でき、安全・安心な社会の実現に広く貢献します。
◆「自律型AI間の協調」
社会インフラや交通手段、流通システムなどがAIにより自律的に制御されるようになると、自律制御システム間の挙動が競合し、社会システム全体が正しく機能しなくなる場面が想定されます。
本連携では、自律制御システム間で、譲る、分担する、融通するなどのAI同士が自律的に協調を行う技術を研究します。
この技術により、自動運転車など、自律型の機器が出現し、社会システムにこれらが組み込まれる際に、人間が制御するよりもより安全に、より効率的に機能させることによって、経済の大動脈である交通や物流から社会を一変させることが期待されます。