English

 

お知らせ

2017/04/03

京都大学に「産総研・京大 エネルギー化学材料 オープンイノベーションラボラトリ」(ChEM-OIL)を設立
-新材料・新概念に基づく先駆的エネルギー変換・貯蔵技術の創生-

 国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下、「産総研」という。)は、平成29年4月1日に「産総研・京大 エネルギー化学材料 オープンイノベーションラボラトリ」(AIST-Kyoto University Chemical Energy Materials Open Innovation Laboratory; ChEM-OIL)を国立大学法人 京都大学【総長 山極 壽一】(以下、「京大」という。)と共同で京大 吉田キャンパス内に設立します。産総研のオープンイノベーションラボラトリ(OIL)は、産総研の第4期中長期計画(平成27年度~31年度)で掲げている「橋渡し」を推進していくための新たな研究組織の形態で、ChEM-OILがその7件目となります。


 燃料電池や蓄電池のような、化学エネルギーと電気エネルギーの常温・常圧での相互変換やエネルギー貯蔵が高効率に進行できる電気化学デバイスは、社会の低炭素化に大きく貢献することが期待されています。デバイス動作の基本となる電気化学反応は気相・固相・液相の三相界面で電子の流れとイオンの流れが高速で出会い、反応することが求められていますが、従来、その界面構造は経験と勘に基づく試行錯誤で最適化が行われており、理論的に目指すべき構造が具現化されているわけではありません。しかしながら近年、エネルギーデバイスに対する要求性能が急速に高まり、理論限界に迫る性能を出すことが求められています。このためには、電子伝導性・イオン伝導性、触媒活性、耐食性などを高度に確保しながら、機能界面としての原子数個から数十個スケールの立体空間を理想に近いかたちで設計・構築することが不可欠となります。

 産総研は、電気化学デバイスのベースとなる材料合成技術、デバイス化に不可欠な伝導性、光・電気化学活性などの機能化および複合化技術、そしてこれらの多様な機能性複合材料を蓄電池や燃料電池などのエネルギー変換・貯蔵デバイス化する技術を有しており、多くの企業への橋渡しの実績があります。京大は金属有機構造体または多孔性配位高分子(MOF/PCP)、 電解質、金属ナノ粒子触媒材料をはじめとする有機、無機、高分子などの材料開発や、放射光による先端材料解析などの研究分野で世界をリードする先端研究を推進しており、文部科学省「世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)」で設置され、分野横断的な研究を牽引する物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)など、日本の化学、材料科学の基礎研究のトップが集結しています。今般、産総研と京大は新たな産総研の拠点(ChEM-OIL)を京大吉田キャンパスに設置し、産総研と京大が有するデバイス化応用技術と材料基礎科学技術を融合します。京大の先端材料シーズ(多孔性配位高分子(MOF/PCP)、電解質、金属ナノ粒子触媒など)を、産総研の機能界面構築や電気化学デバイス化技術と直結させ、従来にないエネルギー変換、エネルギー貯蔵技術の開発を目指します。産学官ネットワークの構築により、民間企業の参画による「橋渡し」につながる目的基礎研究を強化し、革新的エネルギー化学材料技術の実用化のために必要な基盤技術・材料、電解質材料、触媒材料・電極設計及びデバイス化技術に関する基礎・応用研究を実施します。

産総研・京大 エネルギー化学材料オープンイノベーションラボラトリ(ChEM-OIL)の概要図
図 産総研・京大 エネルギー化学材料オープンイノベーションラボラトリ(ChEM-OIL)

ChEM-OILで行う主な研究

研究課題1:基盤技術・材料開発
 革新的エネルギー化学材料とデバイスの実用化までの「橋渡し」には、高機能性電気化学デバイス開発を可能にする基盤技術と材料開発が重要であります。このためには多孔性配位高分子及び関連材料を高機能化させ、エネルギー化学応用に適した多様な構造を持つMOF/PCPの開発が必要です。本研究では機能創発に必要となる自在な構造設計を実現するための合成手法を開発し、新たなデバイス創生に資するMOF/PCPを開発します。さらに、MOF/PCPのさまざまな形状制御技術、電気化学特性賦与技術や異種材料との複合化技術などの技術開発を行います。また、MOF/PCPを前駆体・鋳型として利用することで、炭素などの多様なナノ構造材料を合成することが可能となります。新規に合成された各種構造や形状を持つMOF/PCP材料を前駆体・鋳型として利用することで、電気化学デバイスに適した炭素や金属複合体などの多様なナノ構造材料を開発します。

研究課題2:電解質材料開発
 電解質材料は蓄電池や燃料電池などの電気化学デバイスにとって不可欠であり、高性能デバイスを実現するためには高い伝導性や安定性が必要となってきます。特にデバイスの安全性や設計の自由度を向上させるために、溶融塩電解質や固体電解質の開発に注目が集まっています。本研究では、これまでに実現困難であった室温~中温域で作動する電気化学デバイスに適した、高性能化と安全性を両立する新規な溶融塩電解質の開発を、第一原理計算などの計算科学的手法を積極的に活用することで早期の実現を目指します。さらに、MOFや金属ナノ粒子と溶融塩を複合化することで、新しい概念の固体電解質の創出を目指します。また溶融塩の新規用途の開拓を目指し、高温で無水となり安定である特性を活かして材料開発における熱的・電気化学的な合成の反応場として利用することで、他の研究課題で実施する材料の形状制御や機能性賦与への適用を検討します。

研究課題3:触媒材料・電極設計開発
 基盤技術・材料開発及び電解質材料開発の成果を取り入れながら、電気化学デバイス開発に不可欠な触媒材料及び電極の設計開発を行います。高価な白金などの貴金属触媒を必要としない高い酸素還元活性を有する非貴金属・炭素複合材料をベースにした触媒の開発や多孔質MOF/PCPとグラフェン、金属酸化物などとの複合材料から構成される三次元で精密に構造制御された電極材料を開発します。

 またMOF/PCP材料やMOF/PCPを鋳型・前駆体として用いて合成したナノ触媒材料、あるいは金属ナノ粒子触媒の担体として用いることで、水電解・水素発生反応に高活性・高耐久性の電極触媒や、水素キャリアなどのエネルギーを貯蔵するための液体燃料製造用の電極触媒の開発を目指します。

 開発された高性能エネルギー化学材料を用いてデバイスを構築し、デバイス試作、評価を通じ、材料及びデバイス化技術の最適化を行い、企業への橋渡しを実現します。


開所式の様子

 平成29年5月10日(水)、京都大学吉田キャンパスに設立した「産総研・京大 エネルギー化学材料オープンイノベーションラボラトリ」(ChEM-OIL)の開所式を行いました。

 中鉢理事長の挨拶・設立趣旨説明の後、京都大学 山極 壽一総長のご挨拶と経済産業省、文部科学省、産業界からのご来賓の方々よりそれぞれご祝辞を賜りました。

 式典の後半では、産業界からラボへの期待を表明する講演と、京都大学 高等研究院 物質-細胞統合システム拠点の北川 進 拠点長による特別講演の後、産総研・京大OILの徐 強 ラボ長と北川 宏 副ラボ長、松原 英一郎 副ラボ長からラボの研究の内容と方向性について説明がありました。

 当日は、ラボへの期待の大きさを示すように多くの関係者が出席し、盛況の内に開所式をとりおこなうことができました。

(左)産総研 中鉢理事長(右)京都大学 山極総長の写真   記念撮影の様子の写真
(左)産総研 中鉢理事長
(右)京都大学 山極総長
  記念撮影の様子

用語の説明

◆オープンイノベーションラボラトリ(OIL)
経済産業省が平成28年度から始めた「オープンイノベーションアリーナ」事業の一環として行われるもので、卓越した基礎研究に基づく技術シーズをもつ大学などに、産総研が研究拠点を設置し、その大学と産総研が集中的・組織的に研究を行うことにより、技術の実用化・「橋渡し」の加速や、「橋渡し」につながる目的基礎研究の強化を目指すものです。これまで、平成28年4月に名古屋大学と共同で「産総研・名大 窒化物半導体先進デバイスオープンイノベーションラボラトリ」(GaN-OIL)を、平成28年6月に東京大学と共同で「産総研・東大 先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ」(OPERANDO-OIL)を、また同月に東北大学と共同で「産総研・東北大 数理先端材料モデリングオープンイノベーションラボラトリ」(MathAM-OIL)を、平成28年7月に早稲田大学と共同で「産総研・早大 生体システムビッグデータ解析オープンイノベーションラボラトリ」(CBBD-OIL)を、平成29年1月に大阪大学と共同で「産総研・阪大 先端フォトニクス・バイオセンシングオープンイノベーションラボラトリ」(PhotoBIO-OIL)を、平成29年2月に東工大と共同で「産総研・東工大 実社会ビッグデータ活用オープンイノベーションラボラトリ」(RWBC-OIL)を設立しています。[参照元へ戻る]
◆電気化学デバイス
電子やイオンのやりとりにより電気エネルギーと化学エネルギーを変換するデバイス。燃料電池、蓄電池、キャパシタなど、蓄電や発電用途に広く用いられています。本研究では、革新的エネルギー化学材料を開発し、高機能電気化学デバイスを創製します。[参照元へ戻る]
◆金属有機構造体または多孔性配位高分子(MOF/PCP)
英語名Metal-Organic Framework (MOF) またはPorous Coordination Polymer (PCP)。金属イオンと有機配位子が無限に連結されて形成される、ジャングルジムに類似した構造を持つ新しい機能性材料(金属イオンはジャングルジムの骨組みの節点、有機配位子は連結部材に対応)です。従来の多孔性材料と比べて、有機配位子と金属イオンの組み合わせをうまく選んでナノ空間の大きさや形をデザインすることによって、目的とする各種機能を持たせることができる利点を有します。MOF/PCPへの機能性賦与、電解質や触媒などとの複合化による、革新的エネルギー変換・貯蔵材料の開発を目指します。[参照元へ戻る]
◆溶融塩
英語名Molten salt。陽イオンと陰イオンからなるイオン性化合物が融点以上の温度で溶融し液体になったもの。低融点のものはイオン液体とも呼ばれます。構成イオンの種類・組み合わせによって多種多様な特性を示します。電気化学デバイスの電解質としては、有機溶媒を用いた電解質と比べて難燃性・難揮発性である特徴が注目され、安全性の向上に資する材料として研究が進められています。本研究では、上記の特徴のみならず、溶融塩の持つさまざまな可能性に着目し、電解質としての開発研究および新規用途の検討を行います。[参照元へ戻る]

▲ ページトップへ