発表・掲載日:2008/04/25

ディーゼル車排出ガスNOx浄化触媒技術の開発


研究の内容

 自動車や燃焼器から排出される汚染物質による大気汚染が問題となっています。特にディーゼル車から排出される窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)の低減が喫緊の課題となっており、その対策として、2009年にポスト新長期規制の実施が予定されています。これはディーゼル車排出ガス中のNOxとPMを現在の新長期規制と比較して1/3以下に低減しなければいけないもので、非常に厳しい規制値となっています。

 独立行政法人 産業技術総合研究所 新燃料自動車技術研究センターでは、ディーゼル車から排出されるNOxの浄化技術として、ディーゼル排ガスのような酸素雰囲気で機能するNO選択還元触媒の研究を実施しています。最近、これまで高濃度の酸素が存在する条件でNOを選択的に還元することができないと考えられてきました水素や一酸化炭素(CO)を還元剤とするNO選択還元反応について研究を実施し、シリカに担持したイリジウム触媒が効果的にNOを還元除去できることを見出しました。

 本研究の成果を活用するため、現在、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の革新的次世代低公害車総合開発プロジェクトに参画し、株式会社 いすゞ中央研究所との共同研究により、本技術をディーゼル自動車排出ガス浄化に実用化するための研究を実施中です。

グラフ画像
図 これまで見出したイリジウム系触媒のCOによるNO選択還元反応の活性比較
 

 これまでに、触媒の改良研究を行い、ベースとなるシリカに担持したイリジウム触媒(Ir/SiO2)にタングステン(WO3)やバリウム(BaO)等を添加することでNOx浄化率が大幅に向上できることを見出してきました。図に示すように、実験室における模擬排出ガスを使用した実験においては、WO3とBaを添加したIr/SiO2触媒(Ba/Ir/WO3/SiO2)が240~300℃の温度域で90%以上のNOxを浄化できることを明らかにしています。


 一方で、実際の排ガスの温度は運転条件により変動しており、広い温度範囲で高いNOx浄化率の達成が望まれています。そこで、COによるNO選択還元法と従来型の尿素選択還元法と複合化した触媒システムの検討も行っています。これまでにCO選択還元触媒と尿素選択還元触媒を複合化することで、それぞれを単独で使用した場合と比較して、広い温度範囲で高いNOx浄化率が達成されることを見出しています。また、本複合技術により尿素使用量の削減も期待できます。

 今後は、複合化触媒の性能改良を目指し、個々の触媒の改良研究を実施すると共に、複合化触媒の実エンジン排出ガスを使用した実証試験などを行う予定にしています。



問い合わせ

(研究担当者)
独立行政法人 産業技術総合研究所
新燃料自動車技術研究センター
研究員 羽田 政明
E-mail:m.haneda*aist.go.jp(*を@に変更して使用してください)