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産総研論文賞2016

賞の概要

 産総研研究者は、科学技術におけるイノベーション創出の先導者として、自ら向上心と使命感を持って研究を遂行し、質の高い論文を世界に向けて発信していきます。そこで、産総研として誇れる高水準の論文を発表した研究者に対して、平成26年度より毎年「産総研論文賞」として顕彰しております。

過去の受賞一覧


論文賞受賞者と理事長、副理事長の写真
平成28年度の受賞者と中鉢理事長、三木副理事長
 

受賞論文

Diffusive separation of propylene/propane with ZIF-8 membranes

Nobuo Hara*, Miki Yoshimune, Hideyuki Negishi, Kenji Haraya, Shigeki Hara, and Takeo Yamaguchi
Journal of Membrane Science, 450, 215-223, (2014)

受賞者

  • 原 伸生
  • 吉宗 美紀
  • 根岸 秀之
  • 原谷 賢治
  • 原 重樹

選出理由

 プロピレン/プロパン分離プロセスは、一年間で日本の原油総消費量の約一日分を消費するエネルギー多消費プロセスであり、消費エネルギーの大幅な低減が見込まれる膜分離プロセスの実現が望まれている。

 本論文では、独自の化学工学的な解析手法を確立し、膜化手法である対向拡散法によって、欠陥を大幅に低減した金属有機構造体ZIF-8による新規の分離膜を開発した。これにより分子径が極めて近いプロピレンとプロパンについて高い分離特性を得ることに成功するとともに、拡散係数の差に基づく分離機構を解明したことにより、学術的に高く評価されている。本成果は、産総研の単願特許の出願や、複数の招待講演や学会賞を受けるなど産総研のプレゼンス向上に大いに貢献しているものと評価する。製品化に向けて企業からの問合せも多く、将来の橋渡しへの貢献についても大いに期待する。

受賞者代表(原 伸生)(右)の写真
受賞者代表(原 伸生)(右)

Ultra-compact 8 × 8 strictly-non-blocking Si-wire PILOSS switch

Keijiro Suzuki*, Ken Tanizawa, Takashi Matsukawa, Guangwei Cong, Sang-Hun Kim, Satoshi Suda, Morifumi Ohno, Tadashi Chiba, Hirofumi Tadokoro, Masashi Yanagihara, Yasushi Igarashi, Meishoku Masahara, Shu Namiki, and Hitoshi Kawashima
Optics Express, 22(4), 3887-3894, (2014)

受賞者

  • 鈴木 恵治郎
  • 谷澤 健
  • 松川 貴
  • Cong Guangwei
  • Kim Sang-Hun
  • 須田 悟史
  • 大野 守史
  • 千葉 正
  • 田所 宏文
  • 柳原 昌志
  • 五十嵐 泰史
  • 昌原 明植
  • 並木 周
  • 河島 整

選出理由

 低消費電力の大容量高速ネットワークの実現に向けて、シリコンフォトニクス分野においては、マトリクススイッチの開発が世界的な競争を繰り広げている。

 本論文では、64 個の熱光学マッハツェンダースイッチと49 個の細線交差を集積した世界最小サイズ(3.5×2.4 mm2)の8x8スイッチを実現し、43GbpsのQPSKデジタルコヒーレント信号のスイッチング性能を世界に先駆けて実証した。欧州光通信国際会議(ECOC)において、ポストデッドラインペーパーに採択されるなど学術的に高く評価されている。本成果は、シリコンフォトニクスによる新たな広域光ネットワーク技術の可能性を示す一つのマイルストーンとして、情報関連企業や海外有力大学の研究動向に多大な影響を与えるとともに、実装したVICTORIES拠点の活動アピールともなり、産総研のプレゼンス向上に大いに貢献しているものと評価する。

受賞者代表(鈴木 恵治郎)(右)の写真
受賞者代表(鈴木 恵治郎)(右)

Electron microscopy study of gold nanoparticles deposited on transition metal oxides

Tomoki Akita*, Masanori Kohyama, and Masatake Haruta
Accounts of Chemical Research, 46(8), 1773-1782, (2013)

受賞者

  • 秋田 知樹
  • 香山 正憲
  • 春田 正毅

選出理由

 バルクでは触媒不活性である金が、ナノ粒子になると活性を持つという不思議な現象に対して、多くの科学者がその機能発現メカニズムの解明に取り組んでいる。

 本論文では、原子レベルでの観察が可能な高分解能分析電子顕微鏡を用いて、金ナノ粒子と酸化物担体の界面とその近傍を詳細に観察し、界面周縁部に特徴的な原子構造を有すること、金―酸化物界面に酸素原子が存在することなどを明らかにした。これらの結果は、共著者の春田教授が提唱する界面周縁部における特異な電子状態・化学状態に基づく金触媒の反応モデルを支持する有力な結果であり、学術的に高く評価されている。さらに、得られた知見は、燃料電池の電極触媒への応用などの電気化学エネルギーデバイスを実現する新しい触媒材料開発に貢献し得る界面科学の成果であり、産総研のプレゼンス向上に大いに貢献しているものと評価する。

受賞者代表(秋田 知樹)(右)の写真
受賞者代表(秋田 知樹)(右)