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お知らせ記事2026/02/20

【RIHSA】人間社会拡張研究部門シンポジウム RIHSArch2025 取材レポ「RIHSAが目指すもの」③

情報・人間工学領域 人間社会拡張研究部門シンポジウム RIHSArch2025では、インタラクティブセッションにおいて、冠ラボをはじめとする共同研究企業、柏の葉地域での連携団体などにポスター発表をいただきました。
一部ご紹介します。
 
人と建機の協調を高める人間拡張技術
コマツ-産総研 Human Augmentation  連携研究室長 高松 伸匡さん

コマツ連携ラボ 高松伸匡さん


建設機械メーカーのコマツと産総研は、人手不足が深刻化する建設業界に向け、建設機械を使う顧客企業の企業利益や企業価値を上げるために、人間拡張技術を活用した「人と建機の協調」をテーマとした共同研究を進めています。
研究室は4つのチームで構成され、①搭乗、②遠隔操作、③ワークエンゲージメント、④健康経営を軸に取り組んでいます。
搭乗研究では、デジタルヒューマンを用いて、疲労を軽減しワークエンゲージメントを高める建設機械の開発を目的に、モデル上で負担感などをあらかじめ検出することで、シミュレーション段階で評価することを目指しています。
遠隔操作では、災害現場での安全性や在宅勤務によるワークシェアリング、シミュレーターを使ったスキルアップなどの実現を目指します。
映像酔いや音、振動などの臨場感不足といった課題解決に向け開発を進めています。
さらに、オペレーターの心理・身体状態を把握し、事故防止や作業負担軽減を図る技術を開発。
顧客企業の健康経営を支援し、オペレーターのヤル気度を引出し、離職防止と人材確保への貢献を目指しています。
 
リコー 産総研知識集約型デジタルサービス創出連携研究室
新潟 一宇さん

リコー連携研究室 新潟一宇さん


データベースの構築とデジタルツインを応用して新たな価値を生み出すビジネスモデルの創出を目指して2025年3月21日、リコーと産総研は「知識集約型デジタルサービス創出連携研究室」を開設しました。
新潟さんは「働く人を起点に、知的生産性を最大化するイノベーション拠点にしたい」と話します。
産総研は人を中心としたサービス工学の知見を活用し、課題解決のための知識モデルを作る。
リコーでは実際の業務現場をフィールドとして、リアルな課題解決に資するサービスを開発する。
物を売れば儲かる時代ではなくなり、知識集約型でかつ付加価値な成果を求める時代になりました。
私たちは高付加価値な成果を生み出すドライバーとして、そのビジネスチェーンを作りたいと考えています。
製造現場やカスタマーサービスなど異なる業種に共通する「人が生み出す付加価値」を軸に、ナレッジ起点のデータビジネスモデルの構築に取り組んでいます。
 
安心・安全なクリエイターエコノミーに向けた論点整理
慶應義塾大学 國武 悠人さん

慶応義塾大学 國武悠人さん

「RIHSAの渡辺健太郎先生と一緒にISOの国際標準の取り組みに関わっていて、今回はその関係で修士の研究について発表の場をいただきました」と話す國武さんは、クリエイターエコノミーにおける消費者保護の課題について研究をしています。
デジタルプラットフォームにおける取引では、消費者被害が起きやすく、説明と異なるものが届いたり、動作しないようなものが届いたりといったトラブルが起きることがあります。
一般に、消費者と事業者の間には情報の量や質、そして交渉力などの格差が存在しますから、消費者側への手当となる様々な消費者保護制度が設けられています。
しかし、消費者保護制度を使って返金等の対応を求める場合、相手が事業者で自分が消費者であることが前提となるため、先ずは消費者側が、取引の相手方が事業者であるということを立証なければなりません。
販売主体が株式会社等であれば一般に事業者であろうとなりますが、販売主体が個人の場合に事業者に該当するのかが問題となります。
例えば特定商取引法では「過去1ヶ月に200点以上又は一時点において100点以上の商品を新規出品している場合」は、営利の意思を持って反復継続して取引を行う者として「販売業者」に該当すると考えられる、とガイドラインに明記されています。
フリマアプリの場合は、販売主体の販売履歴をみることで、出品状況を客観的に把握することが可能なため、事業者に該当するかの判断材料が比較的揃っていると言えます。
しかし、楽曲の音源データ、3Dモデルやイラストデータなど、ダウンロード型デジタルコンテンツの取引がメインのデジタルプラットフォームでは、過去の販売実績がわからないようなUI/UXが比較的多く見受けられます。
例えば、「何人がこのイラストデータを購入したのかわからない」「この販売主体の商品が何個売れているのかわからない」といった具合です。
デジタルコンテンツなので、フリマアプリのように、ひとつの商品が売れたからと言って、再出品を行う必要はありません。
そうなると消費者が取引の相手方を事業者だと立証するハードルは、通常のフリマアプリでの取引よりも、大幅に高くなります。
こうした課題をテーマとして、クリエイターエコノミー時代における事業者性の推認要素について研究を行っています。
國武さんは、個人間のクリエイターエコノミーにおいて、販売者と購入者の知識レベルの格差、交渉力の格差について指摘、トラブルが起きた時にどういう解決策があるか消費者法制度の整備について議論をしていると話しました。
 
テクノロジー×ファッションで新たな市場を探索しませんか
国際ファッション専門職大学 平井秀樹さん

国際ファッション専門職大学 平井秀樹さん


「産業界にプロフェッショナルを輩出したい」
ファッションの領域を広げるために、デザイン思考を取り入れた授業を始めました。
産総研の小島一浩さんのデザインスクールの手法を知って、PBL形式でなにかできないかと始まった取り組みになります。
産総研の吉田学さんと連携し、ファブリックスピーカーの社会実装をテーマに、前期はPBL型の授業を実施、社会実装に向けてプロダクトを制作しました。
写真は学生が考えた外科医のためのファブリックスピーカーを使ったイヤーカフになります。
色々なアイデアを出し、できあがったプロトタイプ1号です。
実際に病院にインタビューに行き、患者さんのQOL向上のためのものの方が、ニーズがあるのではないかとヒントをもらってきました。
第2号は患者さん側に寄り添ったものを企業と一緒に共同で制作する予定で動いています。
 
「Kashiwa-no-ha Innovation Ecosystem」
三井不動産柏の葉街づくり推進部事業グループ 藤井琢也さん

三井不動産柏の葉街づくり推進部事業グループ

柏の葉スマートシティは公民学連携のもと、未来の課題解決につながる新産業創出を使命として掲げております。
柏の葉という街は、 公民学が連携して、住民との接点を持ちながら街で実証・実装を行いながらイノベーションにつなげる共創の哲学が育っています。
当社はオフィスやラボをなどのハードアセットを設置、街のコミュニティを形成する土壌を整備、実証・社会実装するための仕組みづくりを新たに始めようとしています。
先般よりスタートアップスタジオ「ZERO1000 Ventures for Kashiwa-no-ha 」を株式会社Relicと共同運用し、多くのディープテックスタートアップがこの地から世界へと羽ばたけるような体制があります。
産業クラスターテーマを定めながら、街に人材や技術を呼び込み、柏の葉の街の「知」と掛け合わせてイノベーションを起こす取り組みを産総研とも連携しながら行ってまいります。



取材レポ「RIHSAが目指すもの」④へつづく
 
国立研究開発法人産業技術総合研究所