産総研トップへ

太陽光評価・標準チーム

太陽電池性能評価技術と基準太陽電池校正技術

研究背景

 再生可能エネルギーの主力電源化に向けた取り組みとして、太陽光発電の更なる導入拡大と自立した長期安定的電源化が推進されています。この取り組みの中で、太陽電池開発も従来の住宅屋根設置や大規模発電所に加え、新市場の創出にも資する新型・高効率太陽電池の研究開発が主要な課題となってきています。

研究目標

 当チームでは、太陽光発電の主要素子である太陽電池の評価・標準に関する校正技術・性能評価技術の研究開発を行い、我が国太陽電池産業の国際競争力強化・大量導入に貢献することを目的とします。 当チームは、つくばセンターと九州センター(佐賀県鳥栖市)を拠点に、以下の課題に取り組んでいます。

  • 基準太陽電池校正技術の高度化(つくばセンター)
  • 太陽電池の性能評価技術の開発(つくばセンター)
  • 屋外環境における太陽電池性能評価技術の開発(つくばセンター)
  • 屋外曝露太陽電池モジュールの性能評価、発電量評価技術の開発(九州センター)

 また、ILAC/APAC MRA 校正証明書を発行できるISO/IEC 17025認定ラボとして、鉱工業分野における依頼試験「基準太陽電池セルの一次校正サービス」を実施しています。
https://unit.aist.go.jp/rpd-envene/PV/ja/service/calibration/

研究内容

 太陽電池の価値に直結する基準太陽電池校正技術、太陽電池性能評価技術、屋外設置環境における太陽電池モジュールの性能・発電量評価技術の開発を推進し、太陽電池の評価・標準の高精度化およびトレーサビリティ体系の維持・普及促進を図ります。国内・国外の校正・評価試験機関と技能試験・国際比較測定等を実施し、開発した技術の国際的整合性の検証・維持を図るとともに、基準太陽電池の校正サービス・各種太陽電池の性能評価測定等を通じた技術の普及・活用を進めています。合わせて開発した技術のJIS・IEC規格への標準化にも積極的に貢献します。また、太陽電池性能評価技術・校正技術に関する共同研究・技術コンサルティングも広く受け入れています。
 以下に現在取り組んでいる主な研究開発課題を紹介します。

1.基準太陽電池校正技術の高度化

 太陽電池の発電性能を評価する際の自然太陽光やソーラシミュレータの放射照度をSI単位系にトレーサブルに測定するための基準太陽電池の校正方法とその高度化に係る研究開発を行うとともに、積極的に国際比較や技能試験を提供して国際整合化を推進しています。

2.新型太陽電池の高精度性能評価技術の開発

 太陽電池の性能評価技術として、通常の性能表示値に用いられている標準試験条件/Standard Test Conditions(STC)(分光スペクトルAM1.5G、放射照度1 kW/m²、太陽電池温度25℃)での性能はもちろん、実使用時に重要な様々な温度・照度での発電特性を高精度に性能評価する技術の研究開発を行っています。開発した評価技術を活用し、新開発される各種新型太陽電池(新型結晶シリコン・CIGS・ペロブスカイト、多接合・スタック型、集光型等)の高精度性能評価を実施しています。

3.屋外環境での太陽電池モジュールの高精度性能評価技術の開発

 太陽光発電の運用・保守点検(O&M)に活用可能な屋外自然太陽光下での高精度かつ低コストな性能評価技術の開発が求められています。その基盤技術となる太陽電池モジュールの屋外高速高精度性能評価技術や非接触電位測定等の新測定技術の開発に取り組んでいます。

4.新型太陽電池モジュールの屋外発電量の評価

 九州センターには、約70kW相当(約100kWまで拡張可能)の太陽電池モジュール長期曝露設備を設けています。実環境性能評価には屋外でのデータ取得が必須ですが、特に新型太陽電池ではデータが不足しています。屋外設備では、各種太陽電池モジュールの電流-電圧データを10分毎に取得し、日射量や気候のデータも用いて、長期にわたる発電性能の変化を解析しています。

主な研究成果

  • 基準太陽電池の一次校正技術に関して、最高校正能力を示す校正不確かさを現在の認定値0.72%から0.60%へと大幅に低減しました。校正値と不確かさ評価の妥当性を世界太陽電池標準スケール(WPVS)根幹ラボとの国際比較により検証しました。
  • ペロブスカイト太陽電池の性能評価として、IV特性と最大電力点追従制御(MPPT)を組み合わせた高精度性能評価技術を開発しました。
  • 太陽電池モジュール型照度センサ(PVMS)を使用した屋外での高速IV測定技術を開発しました。各種結晶シリコン系モジュール(従来型)に加えてCIGS薄膜及びヘテロ接合系モジュールのIV測定において、広い照度範囲(0.3~1kW/m²以上)でPmax測定再現性を従来技術(日射計使用)の±5%程度から±1%以内まで改善しました。
  • 各種太陽電池モジュールの発電量評価を実施し、結晶シリコン系およびヘテロ接合系太陽電池モジュールの経年劣化を加味した推定発電量において、±2%以内の精度で推定する技術を開発しました。2016年からはPERC太陽電池モジュールの曝露も開始し評価を継続しています。(九州センター)

主な研究設備

基準太陽電池セル校正設備

基準太陽電池校正技術の高度化に向けて開発を進めている基準光源とする超高温定点黒体炉
【図1】基準太陽電池校正技術の高度化に向けて開発を進めている基準光源とする超高温定点黒体炉
高平行ソーラシミュレータ
【図2】高平行ソーラシミュレータ
非線形応答誤差が極めて少ない高速分光放射計校正装置
【図3】非線形応答誤差が極めて少ない高速分光放射計校正装置

太陽電池性能評価実験装置・実験設備

太陽電池モジュールの高精度性能評価に使用するソーラシミュレータ  【図5】温度チャンバー
【図4】太陽電池モジュールの高精度性能評価に使用するソーラシミュレータ(左)と
【図5】温度チャンバー(右)
【図6】屋外環境での高精度性能評価技術を検証するための実験設備
【図6】屋外環境での高精度性能評価技術を検証するための実験設備

太陽電池モジュール長期曝露設備

九州センター屋外曝露サイトの全景
九州センター屋外曝露サイトの全景

メンバー

役職 氏名
研究チーム長 吉田 正裕 Yoshita Masahiro
主任研究員 猪狩 真一 Igari Sanekazu
主任研究員 太野垣 健 Tayagaki Takeshi
主任研究員 千葉 恭男 Chiba Yasuo
研究チーム付 原 浩二郎  Hara Koujirou
国立研究開発法人 産業技術総合研究所