※掲載情報は、2022年度時点のものです。
高性能風車要素技術およびアセスメント技術
研究背景
風力発電は実用化が進んでいますが、より一層の普及とグリッドパリティ実現に向け、更なる発電コストの低減が必要です。そのためには、風車本体のハード的な高性能化に加え、事前の適地選定・発電電力量評価、運転時の発電電力量予報といったソフト的な高度化が必要です。
研究目標
当チームでは、さらなる発電コストの低減と風力の大量導入に向け、高性能風車要素技術及びアセスメント技術の確立を目指すとともに、そうした優れた技術開発を通じて、民間企業と共同で技術の早期実用化を図り、国内導入の加速と風力発電産業の国際競争力向上を目指しています。
- 風車単体・ウィンドファーム全体を高性能化(高出力化・長寿命化)する要素技術を開発・実証することにより、発電電力量+5%以上、風車寿命+5~10%以上の向上の目標を掲げています。
- 風力発電アセスメント技術の高度化を達成することにより、誤差±5%以下、計測・評価コスト20~30%削減の目標を掲げています。
【図1】所内試験研究用風車に搭載したナセル搭載LIDARの計測事例(視線方向風速分布)
※LIDAR:Light Detection and Ranging(レーザ光によって風向・風速をリモート計測する装置の略)
研究内容
1.高性能風車要素技術
ナセル搭載LIDARによって得られる風車上流側の風速情報に基づき、風車の予見制御(ヨー制御、ピッチ制御)を行うことにより、風車の出力を改善するとともに、風車翼への負荷を減少させ風車の信頼性・寿命を改善する実証研究を進めています。また、風車翼表面に設置した電極に高電圧を印加することによりプラズマを発生させ、風車性能を改善するプラズマ気流制御技術についても実機による実証研究を進めています。
【図2】プラズマ気流制御による風車高性能化
2.風力発電アセスメント技術の高度化
洋上でのマストによる現場風況観測は、実証研究を除き、経済的に極めて困難であることが挙げられます。高コストな洋上での現場観測に代わる新技術として、LIDAR計測、衛星リモートセンシング及び数値気象モデルを援用した洋上風況推定技術を開発しています。この技術を活用することにより、アセスメントの信頼性を維持しつつ低コスト化(数億~十数億円の1/5~1/10以下、最大で数千万円まで)に加え、評価の早期化が期待されています。
【図3】波崎海洋研究施設での野外実験
主な研究成果
1.ナセル搭載LIDARによる風車制御高度化のフィールド実証結果
ナセル搭載LIDARによって得られた風車上流側の風向情報を基に、風車の制御をアシストすることにより、高風速/高ロータ回転数域において、発電出力が最大で5%程度改善されることを実証しました。
【図4】ナセル搭載LIDARによる風車制御高度化のフィールド実証結果
2.プラズマ気流制御技術による風車の高性能化実証
プラズマ気流制御によって翼周りの流れが改善されることは実験室レベルで検証されていますが、実際の風車翼に適用して風車性能が改善されるかどうかについては未だ十分実証が進んでいません。当チームでは実機での性能改善効果を実証するとともに、電極の耐久性を評価することによって、この技術の実用化開発を加速させています。
【図5】プラズマ気流制御技術による風車の高性能化実証
3.アセスメント技術の高度化(高精度高解像度洋上風況マップ)
スーパーコンピュータによる気象シミュレーションと人工衛星観測値に基づき新たな洋上風況マップをNEDOプロ※の一環として開発し、平成28年度から公開されています。この洋上風況マップの開発には、目的基礎研究の成果である高精度な海水面温度データベース等を活用することにより、年平均風速の推定誤差±5%以内の高精度を確保するとともに、水平解像度500mの高解像度化を達成しました。
※産総研、神戸大、アジア航測(株)、(株)風力エネルギー研究所共同受託プロジェクト
主な研究設備
試験研究用風車 駒井ハルテックKWT300
定格出力:300kW、風車直径:33m、ハブ高さ:41.5m。
日本の厳しい外的条件(複雑地形起因高乱流、等)に耐えるように設計された風車です。産総研もその設計段階において共同研究を通じて協力・貢献しています。
【図6】試験研究用風車 駒井ハルテックKWT300
国内メーカ製のナセル搭載LIDARプロトタイプ機
風車前方(9方向)にレーザ光を照射し、風車上流側の風速・風向を計測・評価できる装置です。
【図7】国内メーカ製のナセル搭載LIDARプロトタイプ機
ナセル上の運転状況監視カメラによる撮影
衛星・気象データ処理システム
大規模な人工衛星データや気象データを保存する約1PB(ペタバイト)のストレージとデータ処理を行う計算機システムです。
【図8】衛星・気象データ処理システム
プラズマ電極環境暴露試験場
プラズマ電極を長期に渡り運用状態で屋外環境に曝露し、同電極の耐候性能を評価するための設備です。
【図9】プラズマ電極環境暴露試験場
スキャニングLIDAR
装置から照射するレーザーとその反射波のドップラーシフトを計測することにより、数キロ先の風速を数秒間隔で計測する装置です。
【図10】スキャニングLIDAR
音源探査装置
30個の音響センサで構成され、音の発信源(音源)を探査できる計測システムです。
【図11】音源探査装置
リモートセンシング風計測テストサイト
【図12】リモートセンシング風計測テストサイト
メンバー
役職 |
氏名 |
|
研究チーム長 |
小垣 哲也 |
Kogaki Tetsuya |
主任研究員 |
田中 元史 |
Tanaka Motofumi |
主任研究員 |
川端 浩和 |
Kawabata Hirokazu |
研究員 |
久保 徳嗣 |
Kubo Noritsugu |
研究員 |
粟飯原 あや |
Aihara Aya |
研究チーム付 |
嶋田 進 |
Shimada Susumu |
研究チーム付 |
森川 泰 |
Morikawa Yasushi |