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太陽光システムチーム

太陽光発電の長期安定電源化技術

研究背景

 2018年7月に閣議決定された第5次エネルギー基本計画における再生可能エネルギーの主力電源化に向けた取組は、「他の電源と比較して競争力ある水準までのコスト低減と固定価格買取制度(FIT)からの自立化を図り、日本のエネルギー供給の一翼を担う長期安定的な主力電源として持続可能なものとなるよう、円滑な大量導入に向けた取組を引き続き積極的に推進していく」ことが必要とされています。太陽光発電がエネルギーインフラとして根付き主力電源化となるためには、太陽光発電の長期安定電源化を実現することが重要な課題となっています。

研究目標

 当チームでは、太陽光発電の長期安定電源化を実現するために、太陽光発電設備の安全性に関する設計技術、運用技術に関する研究開発や基盤整備を行っております。また、太陽光発電の大量導入時におけるスムースな電力系統への統合のため、需給運用のための発電予測技術の研究開発を進めています。

研究内容

 当チームでは、太陽光発電をエネルギー技術として有効かつエネルギーインフラとして利用可能なエネルギーとする役割を担っています。国内太陽光発電産業の支援とともに、「太陽光発電システムの所有者・利用者の視点」と「エネルギーインフラを形成するPVシステム」という視点から、わが国における太陽光発電システムの持続的な普及拡大に資することを研究の目的としています。

(1) 太陽光発電システムの長期信頼性および安全性に関する取り組み
 
太陽光発電システムは一般に20年以上運用することが期待されていますが、もっとも重要な構成機器である太陽電池モジュールは利用者の目の届かない場所に設置されており、運転中は無音・無可動です。また、太陽光発電システムの発電電力は周辺環境や時々刻々変動する気象の影響を受けるため、その長い運用期間中における発電性能の低下や安全リスクの増大を把握することが困難な工業製品といえます。
 また、日中においては、太陽光発電システムの運転を停止しても太陽電池モジュール自体は直流電圧を発生し続けるため、昼間に太陽光発電システムを搭載した建築物の火災が発生した場合に、作業者が感電するというリスクも潜在します。
 そこで、当チームでは、さまざまな調査・分析を通じて太陽光発電システムの安全性向上のため技術的・制度的対策を検討しています。



【図1】太陽光発電システムの長期信頼性および安全性に関する取り組みの例

 
(2) 太陽光発電システムの発電予測技術に関する取り組み

 太陽光発電システムは、太陽エネルギーを直接かつ瞬時に電力に変換しそれ自身は蓄電機能を持たない、いわば「お天気まかせ」の発電技術です。このような既存の発電技術にはない特性をもったPVシステムがわが国の電力系統に無秩序に大量に連系された場合、太陽光発電システムの発電電力の変動を電力インフラ全体として吸収できなくなり、電力の安定供給を阻害するリスクをはらんでいます。一方、このリスクを低減する方策の一つとして電力インフラでの電力貯蔵機能の増強が検討されていますが、これも相応の経費を要するものであり、可能な限り最小限にとどめることが理想です。当チームでは気象観測・予測技術や機械学習などの理学・工学の両面のアプローチから太陽光発電の出力の把握と予測技術の研究開発を進めています。このほか、PVシステムの品質(性能・安全性)向上や導入可能域拡大に貢献する新しいシステム制御技術の研究もあわせて実施しています。



【図2】太陽光発電システムの発電予測技術に関する取り組み概要

主な研究設備

太陽光発電の実証設備
①実証用太陽電池アレイ
太陽光発電の各種実験を行うための太陽電池アレイです。PCS接続した試験なども可能です(場所:つくば)
②実証用太陽光発電設備
住宅用を想定した3~4kWの太陽電池アレイとPCSで構成された太陽光発電システムが合計約800kWあります。
実際の発電状態における実験が可能です(場所:つくば)
【図3】 実証用太陽光発電設備 【図4】 太陽光発電設備

主な研究成果

1. 太陽光発電の安全性に関する基盤整備
太陽光発電の安全性に関するする基盤整備として、これまでに太陽光発電の直流安全に関する感電、火災リスクおよび対策をまとめた技術情報、現地での保守点検手順、ヒヤリハット・インシデント情報、構造設計における積雪荷重に関する設計支援ツール、などについて公開しています。
詳細は、「太陽光発電の安全性に関する情報等」を参考にしてください。https://unit.aist.go.jp/rcpv/ci/service/PV_Electrical_Safety/index.html「太陽光発電の直流電気安全のための手引きと技術情報(第2版)」他

2. 太陽光発電の出力推定技術の開発
気象衛星観測技術を用いて、太陽光発電システムの発電出力を高時間・空間分解能で推定・把握する手法の開発を実施しています。図5は九州電力エリアを対象に静止気象衛星「ひまわり8・9号」を活用した太陽光発電出力の推定を行った例です(左:市町村毎の太陽光発電出力推定値、右:気象衛星から推定した地上日射量のマッピング)。発電設備からの詳細なデータ収集を行わなくとも、簡易的、経済的に発電出力を市町村毎に2.5分間隔という時間・空間分解能で推定・把握することが可能となります。この研究により、電力需要のデータと組み合わせることで、どこで電力の供給過剰、不足になるかの把握にも役立つ可能性があります。

 
【図5】気象衛星を用いた九州電力エリアにおける市町村毎の太陽光発電出力推定(2016年4月15日10時)
 
3. 太陽光発電の出力予測技術の開発
気象予報技術をもとに太陽光発電の出力予測の大外れの事前検知手法の研究開発を実施しています。図6は東京電力エリアを対象に国内外の複数の気象予報モデルのアンサンブル予報データを用いて、1日前に翌日の出力予測の大外れの事例検知を行った例です。この研究によって、太陽光発電システムが大量に連系された電力インフラにおいても既存発送電設備の運用計画の策定・調整、電力の安定供給リスクを低減できる可能性があります。


【図6】(a)日別の予測誤差と(b)今回考案した大外し検出指標
 
産総研 プレスリリース「日本の日射量予測が大幅に外れる場合を検出する指標を考案」(2018/6/29)
https://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/2018/nr20180629/nr20180629.html
※本研究開発は、JST CREST(戦略的創造研究推進事業)により実施されました。

4. 電力配分回路の開発
建物設置における日陰や、曲面における出力特性のばらつきにより発生する電流-電圧特性を自動的に整形する回路を開発しました。これにより回路ミスマッチ損失を低減し発電性能が向上することができます。
 

【図7】電力配分回路の開発の概要
その他特許:
特許6103595、特許6128684、特許6256915:太陽電池の電力配分回路 
特許6078914:太陽電池ストリングの電圧調整回路 
特許5246866:太陽電池モジュール不具合検出回路 
特許6238219:太陽光発電システムの不具合検知回路 
特許6061260:太陽光発電システムの感電防止回路 

メンバー

役職 氏名
研究チーム長 大関 崇 Oozeki Takashi
主任研究員 加藤 和彦 Kato Kazuhiko
主任研究員 髙島 工 Takashima Takumi
主任研究員 大竹 秀明 Ohtake Hideaki
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国立研究開発法人産業技術総合研究所