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エネルギーネットワークチーム

再生可能エネルギーネットワーク開発・実証

エネルギーネットワークチーム 研究チーム紹介ビデオ
「再生可能エネルギーをスマートにつなげる」
エネルギーネットワークの開発・実証・標準化
[ YouTube 3分30秒 ](外部サイトへのリンク)

研究背景

 再生可能エネルギーは自然と共に変動するため、電力供給を安定化するためには、既存発電所や電力貯蔵、利用者による需給調整が必要です。また、再生可能エネルギーには場所による偏在もあります。私たちは、再生可能エネルギーを最大限活用するために、それぞれの場所に適した再生可能エネルギーを選択し、「繋げて」効果的に利用するための研究開発を行っています。

研究目標

 当チームでは、既存のエネルギーネットワークに再生可能エネルギーを無理なく健全に導入するための研究及び国際標準化・規格化を行っています。次世代のエネルギーネットワーク実現に向けて、再生可能エネルギー・蓄電装置・需要家機器等の要素技術の制御技術および評価手法を開発しています。
 これにより、再生可能エネルギーの主力電源化を実現し、再生可能エネルギーの更なる普及拡大とエネルギーの安定供給の両立を目指します。再生可能エネルギーの積極利用によって枯渇性エネルギー資源(化石燃料等)の消費低減とCO2排出削減を行うため、既存のエネルギーネットワークに再生可能エネルギーを無理なく健全に導入するための再生可能エネルギーネットワークを開発します。特に、自然変動電源(太陽光発電と風力発電)を既存の電力ネットワークに導入する際に、自然変動電源の出力安定化と発電量最大化を両立する技術として、パワーコンディショナのスマート制御、水素・蓄電池によるエネルギー貯蔵システムの活用、複数の分散電源のシステム統合化技術を研究しています。

<関連情報> エネルギーネットワークチーム 特設ウェブサイト

再生可能エネルギーの大量導入に向けた安定化と対策費用の課題解決
【図1】再生可能エネルギーの大量導入に向けた安定化と対策費用の課題解決

研究内容

 再生可能エネルギーネットワークの実現に向けて、分散電源・蓄電装置・需要家機器等の要素技術の性能試験法・制御技術を開発し、蓄電システムや熱利用技術を組み合わせた再生可能エネルギー統合利用技術を開発しています。これにより、再生可能エネルギーの主力電源化を実現し、再生可能エネルギーの更なる普及拡大とエネルギーの安定供給の両立を目指します。
 主に以下の研究開発テーマに取り組んでいます。

1.次世代インバータの制御技術

 従来の太陽光、風力発電、蓄電池等の連系に用いられるインバータは電力の安定供給に資する能力を有していません。一方で、再生可能エネルギー電源の大量導入、化石燃料を用いる発電の縮小を実現していくためには、再生可能エネルギー自身が電力の安定供給を支えられる能力を具備することは重要です。エネルギーネットワークチームでは、再生可能エネルギー電源の連系インバータに具備するための電力供給を安定化する制御機能の研究開発を実施しています。

<関連情報>NEDO グリッドフォーミング(GFM)インバータ実用化事業(2022年度~)

2.マイクログリッド実証

 実験室にマイクログリッドの環境を構築することで、マイクログリッド全体および構成する分散電源の性能を評価します。実機で準備することが難しい機器等をシミュレーションでモデリングし、そこに開発対象の実機を接続するHardware-in-the-loop(HIL)シミュレーションの環境があります。これにより、開発対象の実機を現地に近い環境で試験をすることができ、通信環境や制御アルゴリズムの検証、パラメータのチューニングなどを事前に行うことができます。

<関連情報> マイクログリッド実証プロジェクト(2017年度~)

3.国際標準化

 海外研究機関等との連携により、上記テーマの開発成果の速やかな国際標準化を目指します。

<関連情報> IEA 国際スマートグリッド行動計画(ISGAN)スマートグリッド国際研究施設ネットワーク(SIRFN)(2014年度~)

エネルギーネットワークチームが取り組む技術課題
【図2】エネルギーネットワークチームが取り組む技術課題

主な研究成果

1.高度化インバータ制御(スマートインバータ等)

 太陽光等の分散電源は、インバータを介して系統に連系されます。このようなインバータ電源(IBR:Inverter-Based Resource)に周波数安定化機能等を実装することで同期発電機と同様の機能や効果が期待されています。NEDO事業において企業・大学等と連携し、慣性力等を備えたインバータに求められる周波数安定化機能等について標準仕様を検討し、新たに開発した周波数安定化機能等の制御アルゴリズムを実装したプロトタイプを開発しました。当該技術の適用効果を検証するためのデジタルツインなどにも応用されるHardware-In-the-Loop(HIL)技術等の新たな検証技術を開発し、再エネの主力電源化には当該技術が効果的であることを示しました。

<関連情報> NEDO 慣性力等を備えたインバータ制御の基盤技術開発事業(2019~2022年度)

2.システム統合技術とエネルギーマネジメント

 自然変動電源の大量導入を実現させるためには系統の安定化技術が必要になります。中でも、従来のインバータに、より多くの系統安定化をサポートするための機能(通信機能、高度な電力制御機能など)を付与したスマートインバータの導入が期待されています。スマートインバータの導入のためには、スマートインバータが系統に与える複雑な影響の解析と評価が必要です。
 そこで、われわれは、スマートインバータが配電系統に与える影響を評価するためのシミュレーションツール「SoRA-Grid(Solar Resource Application for Grid power flow analysis tool)」を開発しました。SoRA-GridにはPV・蓄電池用のスマートインバータに加え、負荷時タップ切換変圧器や静止型無効電力補償装置(SVC)などの電圧制御機器が実装されており、それらが配電系統の電圧・周波数の品質に与える影響を解析することが可能です。

<関連情報> スマートインバータが配電系統に与える影響を評価するためのシミュレーションツール「SoRA-Grid」

3.再生可能エネルギー資源の高度モニタリング

 福島県再生可能エネルギー次世代技術開発事業(2013~2014)を通じて、福島県内に太陽光発電と風力発電が大量導入された場合の、発電電力の時間的・空間的変動を把握するための再生可能エネルギー発電観測システムを開発しました。福島県全域の発電量(太陽光・風力)を1時間単位/2kmメッシュで推定が可能であり、また、同じ計算モデルで数時間先の発電予測も可能です。今後、更に精度を上げて本システムの全国展開を検討しています。

<関連情報> 福島県内の気象観測データ

次世代型パワーコンディショナ(スマートインバータ)の試験設備
【図3】次世代型パワーコンディショナ(スマートインバータ)の試験設備
災害時に電力自立するマイクログリッドを模擬
【図4】災害時に電力自立するマイクログリッドを模擬

主な研究設備

DER実証プラットフォーム

 本プラットフォームでは、大型の直流電源、交流電源、電力系統シミュレータ等を基盤として、電力機器等の新しいコンポーネントやパワエレデバイスの研究・開発・試験をサポートします。太陽光発電、エネルギー貯蔵、モビリティー用充電インフラ、電力網等の様々な用途において、性能・特性試験や分析などをサポートします。
 ※DER: Distributed Energy Resources(分散型再生可能エネルギー)の略

分散型再生可能エネルギー(DER)実証プラットフォーム
【図5】分散型再生可能エネルギー(DER)実証プラットフォーム

メンバー

役職 氏名  
研究チーム長 大谷 謙仁 OTANI Kenji
主任研究員 橋本 潤 HASHIMOTO Jun
主任研究員 Ustun Taha Selim Ustun Taha Selim
主任研究員 児玉 安広 KODAMA Yasuhiro
主任研究員 喜久里 浩之 KIKUSATO Hiroshi
研究員 織原 大 ORIHARA Dai
国立研究開発法人 産業技術総合研究所