※掲載情報は、2022年度時点のものです。
再生可能エネルギーネットワーク開発・実証
研究背景
再生可能エネルギーは自然と共に変動するため、電力供給を安定化するためには、既存発電所や電力貯蔵、利用者による需給調整が必要です。また、再生可能エネルギーには場所による偏在もあります。私たちは、再生可能エネルギーを最大限活用するために、それぞれの場所に適した再生可能エネルギーを選択し、「繋げて」効果的に利用するための研究開発を行っています。
研究目標
当チームでは、再生可能エネルギーの積極利用によって枯渇性エネルギー資源(化石燃料等)の消費低減とCO2排出削減を行うため、既存のエネルギーネットワークに再生可能エネルギーを無理なく健全に導入するための再生可能エネルギーネットワークを開発します。特に、自然変動電源(太陽光発電と風力発電)を既存の電力ネットワークに導入する際に、自然変動電源の出力安定化と発電量最大化を両立する技術として、パワーコンディショナのスマート制御、水素・蓄電池によるエネルギー貯蔵システムの活用、複数の分散電源のシステム統合化技術を研究しています。
太陽光発電や風力発電のような分散電源(DER)の最適利用技術、マイクログリッド技術、エネルギー貯蔵・蓄電技術による複数の分散電源のシステム統合化技術により「安全・安心・公平」な次世代エネルギーシステムの技術開発を行っています。この研究開発のプラットフォームとして、SoRAプラットフォーム(Solar Resource Application platform)戦略を進めています。
【図1】再生可能エネルギーの大量導入に向けた安定化と対策費用の課題解決
研究内容
再生可能エネルギーネットワークの実現に向けて、分散電源・蓄電装置・需要家機器等の要素技術の性能試験法・制御技術を開発し、蓄電システムや熱利用技術を組み合わせた再生可能エネルギー統合利用技術を開発しています。これにより、再生可能エネルギーの電源価値・経済価値を向上させ、再生可能エネルギー100%といった電力自立などの様々な導入計画を促進します。
主に以下の研究開発テーマに取り組んでいます。
- 太陽光発電システムの総合評価:各種太陽電池の年間発電量の予測、パワーコンディショナの性能試験、メガソーラの現地故障診断など。
- 分散電源の系統協調と高度化技術:分散電源の性能試験とこれらを統合するエネルギーマネジメントシステムの性能検証を実規模で実施するためのユーザーファシリティを構築。
- 国際標準化:海外研究機関等との連携により、上記テーマの開発成果の速やかな国際標準化を目指す。
【図2】エネルギーネットワークチームが取り組む技術課題
主な研究成果
1.次世代型パワーコンディショナ(スマートインバータ)
電力エネルギーネットワークへ太陽光発電や風力発電の様な自然変動型分散電源を大量導入するため、分散電源をより高性能にして電力エネルギーネットワークをサポートするための機能が求められています。これを達成する次世代のパワーコンディショナ(スマートインバータ)に対し、国際的なプラットフォーム(SunSpec SVP)を介した自動試験方式や、ハードウェアインザループ(HIL)による機能試験方式を開発し、500kW級の大型スマートインバータの実機試験に成功しました。
2.システム統合技術とエネルギーマネジメント
実証フィールドの太陽光発電システム等の個別要素技術の性能分析を行い、これを基盤とする多くの研究開発を実施しました。低圧配電系統での電圧サポート機能を分析するためのシミュレーションツール「SoRa-Grid」を開発し、実証フィールドでその高い精度を検証しました。将来の電力エネルギーネットワークの安全性を保つため、スマートインバータ等のIED(Inteligent Electronics Device)に実装するサイバーセキュリティの研究開発も行っています。
3.再生可能エネルギー資源の高度モニタリング
福島県再生可能エネルギー次世代技術開発事業(2013~2014)を通じて、福島県内に太陽光発電と風力発電が大量導入された場合の、発電電力の時間的・空間的変動を把握するための再生可能エネルギー発電観測システムを開発しました。福島県全域の発電量(太陽光・風力)を1時間単位/2kmメッシュで推定が可能であり、また、同じ計算モデルで数時間先の発電予測も可能です。今後、更に精度を上げて本システムの全国展開を検討しています。
【図3】次世代型パワーコンディショナ(スマートインバータ)の試験設備
【図4】 太陽電池モジュールの性能測定用ソーラシミュレータ(疑似太陽光源)
主な研究設備
DER実証プラットフォーム
本プラットフォームでは、自在に接続可能な太陽光発電システム(10社等のPVシステム)と大型DC・AC模擬電源設備(500kW級パワーコンディショナの実証試験設備)等により、様々なエネルギーマネジメントシステム(EMS)の開発・実証が可能です。さらに水素社会を見据えた再生可能エネルギーによる水素製造技術、電気自動車(EV)を含む分散配置された蓄電池の制御等の研究開発設備や日射量や風況等の予測技術と連携したEMS評価が可能なプラットフォームです(EV実証設備、20kW級PV+水電解実証設備等)。
※DER: Distributed Energy Resources(分散型再生可能エネルギー)の略
【図5】分散型再生可能エネルギー(DER)実証プラットフォーム
メンバー
役職 |
氏名 |
|
研究チーム長 |
大谷 謙仁 |
Otani Kenji |
主任研究員 |
橋本 潤 |
Hashimoto Jun |
主任研究員 |
児玉 安広 |
Kodama Yasuhiro |
研究員 |
喜久里 浩之 |
Kikusato Hiroshi |
研究員 |
織原 大 |
Orihara Dai |
研究チーム付 |
Ustun Taha Selim |
Ustun Taha Selim |