つくって学ぼう
監修:金沢康夫
“ストローガーネット”は、ストローで作ったガーネットの結晶模型を意味する筆者の造語です。鉛筆・串など形状のそろった棒状の材質でもガーネットの結晶模型を作ることが可能ですが、材料としては、加工がしやすいこと、色が選択できること、経費が安いことで、ストローが最適でしょう。
これから紹介する結晶模型は、菱形12面体(りょうけいじゅうにめんたい) という形です。これを基本として、組立方向や切り方によりいろいろな形を作成できますので、皆さんでチャレンジしてみてください。
ガーネットの外形として現れる、菱形12面体の結晶模型をストローで作ります。
これから比較的わかりやすい作り方を説明します。基本が理解できるようになれば、これ以外の方法でもかまいません。説明のため、ピンク・緑・青・黄色の4色のストローを使用しますが、市販されているどんな色や模様入りでもかまいません。もちろん1色でもかまいません。
作成手順は、組み立て → のり付け → カット(整形)です。
ピンクと緑がほぼ直交するように、図の①と②の方向で交差させます。その時、それぞれ2本単位で上下になるように重ねます。ストローの開いているはしの方も軽く輪ゴムでとめます。 上から見ると、漢字の「井」の形になります。
そこへ、黄色(第4番目の色)のストローを上からテーブル面に向かって、さしていきます。開いているすき間を黄色ストローでうめて、また両端を輪ゴムでとめます。これで異なる4色による4方向が定まりました。この時、それぞれの方向から見たストローは正三角形的に配置しています。
各ストローの伸びている方向から見て、ストロー底面の丸が三角形の位置関係を保つように、すき間に差し込んでいきます。各色のストローの本数を少しずつ増やしていき、こまめにストローの両端を輪ゴムでとめなおします。
図のように、各色について束の底面が正六角形になるように配置します。正六角形の一辺に4本と3本並べた2例を示してあります。各色につき、ストローは37本(左図)と19本(右図)が必要です。
4方向のストローがすべて六角柱になるように並べると左の写真のようになります。柱面(柱の側面)には、4本のストローが平行に並んでいます。この場合ストローは全部で148本です。また、柱面に3本だけ並べた場合は、全部で76本となります。
これからのり付けです。まず、1つの色の束を写真のようにできるだけ片側に寄せます(矢印の上側へ)。ストローの長さの中央付近をまんべんなく周囲からのりを吹き付けます。のりの付いたストローを下げて、のり面がほかのストローと接するように戻します。束の内側のストローにはのりが達しにくいので、のりが弱そうなストローは引き出して再度のり付けしましょう。これをほかの2色の束について繰り返します。計3色の束をのり付けすれば十分です。 1時間程度でのりは固まります。
これまでは、同一方向に並んだ六角柱状の束について、その1つの柱面に並んでいるストローの本数が3本、4本の場合を説明してきました。柱面に並ぶ本数をそれぞれ増やせば、ストローガーネットは大きくできるのですが、それでは、柱面に並ぶ本数と使用する総本数にはどのような関係があるのでしょうか。それを示したのが次の表です。例えば、柱面に4本並べた場合の総数が148本ですが、10本では総数が1000本を超えてしまいます。自分の作りたい大きさに合わせて、必要な数のストローを準備しましょう。
六角柱状の束の柱面に 並んでいるストローの数 |
六角柱状の束内の ストロー数 |
異なる4方向の束内の ストロー総数 |
---|---|---|
3 | 19 | 76 |
4 | 37 | 148 |
5 | 61 | 244 |
6 | 91 | 364 |
7 | 127 | 508 |
8 | 169 | 676 |
9 | 217 | 868 |
10 | 271 | 1084 |
n | 3n(n-1)+1 | 12n(n-1)+4 |
ガーネットに特徴的なもう1つの外形は24面体です。実際に作成してみるとわかりますが、労が多いわりには見栄えが良くなりません。慣れないうちは作成をお勧めできませんが、参考として、作り方の要点のみを示しておきます。
24面体はこれまで説明してきた12面体をさらにカットすることにより作成できます。六角柱の束の柱面に並べるストローは5本以上にします。5本、7本、9本など奇数の本数にしておくと切るときわかりやすくなります。左図はストローが伸びている1つの方向から見た図ですが、注面には7本並んでいます。(左図は、平坦に描いてありますが、実際には、傾いたひし形の3面から構成され、真ん中が手前に飛び出ています。)
左図の六角形の外形について、各辺の中点を隣どうしで結んでいくと、内側に隣接する小さな六角形ができます。この内側の六角形内にあるストローを保存するように、図の赤線にそってカッターを入れ、外側を切り落とします。
これを4つの異なる方向について繰り返すと、24面体ができあがります。
切り方によっては、写真のように、八面体、コンペイトー型、また、面状に組み合わせた後、文字形にカットすれば、立体文字なども可能です。おもしろい形作りに挑戦してみてください。
ガーネット(和名:ざくろ石)は、1月の誕生石としてよく知られています。化学組成式は、一般に、A3B2(XO4)3と表され、AにはMg, Fe, Ca, Mnなど、BにはAl, Fe, Crなど、XにはSi, Fe, Alが入ります。
構成元素により、いろいろな種類や色があります。例えば、
などで、天然ではこれらの中間組成として産出します。
合成物には、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット) Y3Al2(AiO4)3があります。
結晶の外形は、以下の12面体、24面体、36面体(右側2つ)がよく見られます。
実物結晶(産業技術総合研究所 地質標本館所蔵)
ガーネットの結晶構造が、円柱の特殊なパッキングで説明できることは、Andersson and O'Keeffeにより発見されました(Nature, Vol.267, p.605-606. 1977)。これをヒントに結晶模型を作ることができました。図1に、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)の結晶構造を示します。水色の八面体はAlO6のグループ、緑色の四面体はAlO4のグループを表したものです。AlO6とAlO4のグループというのは、Alの原子がそれぞれ6個のO原子、4個のO原子で囲まれている原子の集合体です。AlがOに6配位されている、4配位されているとも言います。水色のAlO6 のグループに注目します。最も近い距離にあるAlO6グループを順次結んでいくと柱状に並びます。このようなAlO6グループの柱は、全部で4つの異なる方向に並んでいますが、これを模式的に円柱で描けば図2のようになります。図3には、構造のステレオ図を示します。
なお、結晶学的データは、立方晶系、空間群Ia3d, 格子定数a = 1.15~1.25nmです。