つくって学ぼう
監修:市野善朗
わたしたちが相手に何かを伝えたいとき、伝える方法とそのメッセージを受け取る方法はさまざまです。直接相手に触れたり、叩いたりすることで伝わるメッセージもあるでしょう。話しことばや叫び声、音楽などで伝えるとき、それらのメッセージは振動となって空気を伝わって、相手の耳に届きます。文字や絵は、相手の目に複雑なメッセージを伝えることの出来る手段ですが、暗闇では伝えることができません。目が受け取るメッセージは、光を使って伝えられたメッセージ、ということになります。
相手が遠く離れている場合はどうでしょうか。手紙を使って伝えるという手段がありますが、時間がかかる方法です。電話は、昔は相手と必ず電話線でつながっている必要がありましたが、携帯電話の登場で、電波に乗せてメッセージをやりとりすることができるようになりました。電波はもちろん、遠くまで鮮明に音声や画像を送ることが出来るラジオやテレビにも使われていますし、空気がなくても届くのでスペースシャトルや人工衛星との通信にも用いられています。
テレビやステレオのリモコンは、メッセージではありませんが、チャンネルや音量の情報を離れた位置から機器に伝える手段です。リモコンでは、赤外線という人間の目には見えない光を使って情報を伝えています。もちろん、目に見える光で情報を伝えることも可能で、お互いにルールを決め、光の点滅を使ってメッセージをやりとりする、というのはロマンチックな方法です。しかし、目を使ってメッセージを受け取る場合、複雑な情報をやりとりするのは大変ですし、届く距離にも限りがあります。
では、目の代わりにリモコンやテレビのように送信機、受信機を使えば、目に見える光にメッセージを乗せてやりとりをすることができるのではないでしょうか。
ここでは、懐中電灯の光を使って声を届ける装置の作り方と実験を紹介します。
それでは、光通信実験に必要な装置を作ってみましょう。
① 懐中電灯から、電池を取り出します。
② お尻の部分にリード線2本分が通る穴を開けます。
③ リード線を通します。バナナジャックなどの端子を使う場合は、リード線先端(組み立てたときに外側に出る方)にハンダ付けします。
④ 絶縁板を懐中電灯の内径に合わせて切り出し、銅箔テープを両面に貼ります。(例では、絶縁板にリード線を通す穴を開けています)
⑤ ③のリード線を④の絶縁板の両面にハンダ付けします。(写真)このとき、両面の間をショートしないように注意します。またハンダを銅箔テープに長時間あて続けると、テープの粘着剤が溶けてテープがはがれることがあります。
⑥ リード線を引っ張って絶縁板が懐中電灯の底のスプリングに真っ直ぐに当たるようにし、電池を入れてフタを閉めます。
⑦ リード線同士が接触していない状態で、スイッチを入れても点灯しないことを確認します。また、リード線を接触させて、スイッチを入れたときに点灯することを確認します。
一口に懐中電灯と言っても、さまざまな種類があります。普通の懐中電灯でも、使用している電球がアルゴン球(従来の豆電球)、クリプトン球、キセノン球と色々あります。今回の例では、クリプトン球を用いたタイプを使用しましたが、普通の豆電球ももちろん使用できます。もっとも明るいのはキセノン球ですが、抵抗値が小さいために(2.5V 0.85A)直列に接続される送信機内のコイルにかかる電圧が大きくなり、コイルの発熱と消費電流が問題になります。
送信機に接続した状態で懐中電灯を点灯させつづけると、明るさが低下してきます。これはコイルの発熱による直流抵抗の増加が原因で、電池の消耗によるものではありません。しばらく消灯して自然冷却すれば、明るさは元通りになりますので、電池を交換する必要はありません。