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柏センター ニュース

2022/07/11

【柏センター】柏の葉高校見学会レポート
~1日の研究時間はどのくらい?研究者になって嬉しかったことは?~



柏の葉高校見学会 エントランスホールにて
 


産総研柏センターと隣接する千葉県立柏の葉高等学校情報理数科1年生40名が2022年6月30日、5・6時間目の授業のため来所されました。

来訪の目的は、「近隣の施設見学を行い、最先端の情報技術に触れるとともに研究者の方との対話をとおして職業観をやしない、自己のキャリア形成の一助とする」。

エントランスホールで検温と手指の消毒後、入館証とパンフレットなどの資料を受け取り、
感染対策のため3つのグループに分かれて活動スタート。
人間拡張研究センター全面協力のもと、2か所のラボ見学とフリーディスカッションのプログラムです。


最先端の情報技術に触れる

スマートセンシング研究チーム
「生活や就労の妨げにならないセンシング技術を作る」
クリーンルーム前室と呼ばれる部屋で、センシングデバイスの開発について紹介したのは、
スマートセンシング研究チームの駒崎友亮研究員。
産業技術総合研究所(産総研)における人間拡張研究センターの位置づけ、そして人間拡張研究におけるセンシングの位置づけについて、解説をしていきます。

現在開発中のセンシングデバイスについて紹介する駒﨑研究員

現在、開発に取り組んでいるデバイス例について紹介した後、実際に圧力センサのデモを体験。ホンモノを知る貴重な経験になったようです。

スマートワークIoH研究チーム
360度のモニターに囲まれたサービスフィールドシミュレーターの説明をするのは、スマートワークIoH研究チームの大隈隆史研究チーム長。

サービスフィールドシミュレーターについて説明する大隈研究チーム長

バーチャル空間で人の行動を測りデータ化する技術について紹介し、一般的に知られているヘッドマウントディスプレイとは異なり、バーチャル空間の中で自分の手足も見える状態で動けるというメリットについて説明します。
今回は、特別に見学者にもハーネスを装着し体験していただきました。

ハーネスを装着し、360度VR空間を体験

研究者との対話

職業観を養うためのフリーディスカッションは、各グループ(高校生と教員)に研究者2名が参加し、自身の研究について紹介した後、高校生からの質問に答えます。
ファシリテーターは柏センターの谷口正樹所長が担当。
進路選択について、研究者の働き方、やりがいのほか、アイデアはどんな時に生まれるのかなど、研究者の本質を突いた質問に、研究者たちがタジタジになる場面も。
引率の先生から質問が出れば、グループにアテンドしていた牛島副センター長から補足の説明が出るなど、ディスカッションも盛り上がりました。

高校生と研究者のフリーディスカッション


「研究者は職業というより生き方だと思っています」
そう話したのは、認知環境コミュニケーション研究チームの森郁惠主任研究員。
1日のうちにどのくらい研究をしているのか、仕事をしているのか、どのグループでも同様の質問が出ていました。
勤務している時以外の時間でも、気が付けば自分の研究テーマのことを考えているとウェルビーイングデバイス研究チームの加納伸也研究員は言います。
アーティストやミュージシャンと似ているかもしれないと森さんがコメントしました。

フリーディスカッション 森主任研究員と加納研究員
森 郁惠主任研究員(認知環境コミュニケーション研究チーム)
加納伸也研究員(ウェルビーイングデバイス研究チーム)


研究者のモチベーション
世界で自分しか知らないことがわかって、それを発表する時のワクワク感について話した加納さん。
こうなったらいいなと思って先ずは手を動かしてみて、その通りの結果が出る時もあれば、思ったような結果にはならない時もあります。しかし、これを使ってなにかできないかなと視点を変えて考えてみることで、新たな発見につながることがあると話していました。

電池の研究開発をしているウェルビーイングデバイス研究チームの鈴木宗泰主任研究員は、電池を作るために他の分野の研究者の協力が不可欠と話します。材料の開発をしている研究者、作った電池を使って評価してくれる研究者など、多様な研究者とチームになって開発が進みます。
違う分野の研究者と話をしていると全く違う視点でモノを見ているので、新しい発見があると鈴木さん。
また、似たような分野の研究者とはよきライバルであり、「負けない」という思いが強く、モチベーションが上がると話していました。

勉強は量ではなくて、内容が大事
大学時代に障がいのある方と接したことがきっかけで、障がい者の支援技術について研究するようになったと話したのは、共創場デザイン研究チームの三浦貴大主任研究員。
研究者になるにはどのくらい勉強すればよいかという質問に、みんながやっている勉強をするのではなく、他の人がやっていないことを勉強してアウトプットすることが大事です。
量ではなく、内容。自身もみんながやっていないことを勉強したので、研究職になれたと思いますと話しました。

フリーディスカッション 三浦主任研究員と河本主任研究員
三浦貴大主任研究員(共創場デザイン研究チーム)
河本 満主任研究員(共創場デザイン研究チーム)

コロナの影響で研究に変化
高齢者や障がい者の支援技術について研究する三浦さんだが、コロナ禍では直接支援ができなくなったため、遠隔でどう支援するかという方向に課題がシフトしました。

音を色で表し可視化する技術の研究をしている共創場デザイン研究チームの河本満主任研究員は、企業の働き方がテレワークに変わったことで、遠隔で働いていても、オフィスで働いている人の雰囲気を共有する技術など、社会的ニーズが高まったと感じています。
音の可視化について質問した生徒に、「興味があったら僕の後に続いて研究してください」と誘う場面も。


研究者のチーム力が最先端の技術を生む
違った専門の人同士がかけ合わさったら絶対面白くなります。ただ、お互い頑固だったりするので、それをどうチームとして関わっていくかが大変。でもそれがとても重要で、面白いと話すスマートワークIoH研究チームの一刈良介主任研究員。

フリーディスカッション 鈴木主任研究員と一刈主任研究員
鈴木宗泰主任研究員(ウェルビーイングデバイス研究チーム)
一刈良介主任研究員(スマートワークIoH研究チーム)

鈴木さんは、チームで研究をするうえで、お互いの考えを相手にうまく伝えるコミュニケーション力が必要だと言います。
来所した情報理数科の生徒さんは全員理系ですが、国語が苦手だとしても、今から国語は勉強しておく、たくさん本を読むようにとアドバイスしました。

研究の源は好奇心
研究者になったきっかけは、人それぞれ違います。
産総研の研究者は、自分が「気になること」を解明し、その発見を社会にどう役立てるかを常に考えている人たちです。

「好奇心を持っていないと、そのことについて考え続けることは難しい。興味を持ってずっと考え続ける、研究できるものをみつけてください」と一刈さんがコメントしました。

グループごとに集合写真を撮影。

柏の葉高校見学会 グループA


柏の葉高校見学会 グループB



柏の葉高校見学会 グループC



谷口所長コメント
積極的で熱心な生徒さんたちに感心させられました。
施設見学や、研究者との対話を通じて、科学技術への興味や研究への理解を広げてもらえたらなによりです。
この見学会をきっかけに、研究者を目指してくれる人がいると嬉しいですね。

 
国立研究開発法人産業技術総合研究所