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2022/01/31

【HARC】社会実装に向けた人間拡張研究センターの技術紹介②手のデジタルツイン形成に向けたひずみセンサグローブ

IoTシステムの最先端技術展「MEMS SENSING& NETWORK SYSTEM 2022」が2022年1月26日~28日、東京ビッグサイトで開催され、産業技術総合研究所(産総研)人間拡張研究センターも出展し、社会実装に向けセンシングデバイス、電池、高精度マーカなどの研究成果を一般に公開しました。


展示会でデモを行う金澤周介さん
金澤周介主任研究員(撮影時のみマスクを外しています)
 

「VR((Virtual Reality)、メタバースなどへの展開に期待しています」と意気込むのは、金澤周介主任研究員(人間拡張研究センター スマートセンシング研究チーム/センシングシステム研究センター)。
デジタルツイン形成とは、現実にあるものをデジタルデータ化してコンピュータ内にもうひとつ同じものを作るということ。
人の動きをデータ化することで、人と同じ動きをするものを作ることができるようになりました。

今回は、センサを埋め込んだグローブを作り、手の形をアバターで作って表現する発表をしています。
非常に精度の高い曲げセンサを指の関節1つ1つに配置した設計をして、グローブに一体化させ、そのセンシングした結果でCG(Computer Graphics)を動かしています。

曲げセンサを配置したグローブを装着した手の動きをCGで可視化

エンタメ系だけでなく、例えば職人の熟練の技を誰かに伝えてあげるなど「技術の継承」に役立てることができるのではないかと考えています。
スポーツ選手の手の動きをデータとして可視化することで、プロの動きを素人が参考にしてトレーニングが可能になり、成果を出し、成長することができるかもしれません。

VRのアバターを自分の思い通りに動かすことができるので、機器の操作や医療の技術などに応用し、遠隔で外科手術ができたり、ゴッドハンドと言われる医師の手の動きを学ぶことができたり、遠隔の技術が充実してくると金澤さんは展開に期待を寄せます。


「手」を対象にしたのは、取り組むのに一番難しいと思ったからと話す金澤さん。
今回の研究で、センサを衣料品に一体化させる方法や、論文などにはしにくい部分のノウハウを蓄積することができたため、手袋だけでなく、ソックスやジャケットなどに、曲げセンサを埋め込む準備もできました。

人が手を使ってやっていることをデータ化することで、遠くの人にも手の動きを伝えることができます。
「それは『場所』の制約だけでなく、『時間』の制約をも超えて、伝承することができるということ」と、VRやメタバースへの展開から伝統技術の継承など、金澤さんは可能性の広がりに期待しています。



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国立研究開発法人産業技術総合研究所