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一般公開2023「忍者アゲイン」 開催レポ

「ここは普段は一般の人は立入禁止ですか?」
ガイド付きラボツアーに参加した小学校低学年くらいのお子さんが、帰り際に声をかけてくれました。

産総研柏センター一般公開を2023年10月28日(土)、「忍者アゲイン」と題し、4年振りに完全リアル開催しました。
「忍者アゲイン」てなに?と思われるかもしれませんが、2019年に開催した初回タイトルが「さんそうけんで忍者体験?」。
いかに産総研柏センターを知っていただくか、人間拡張技術に関心を持っていただくかを考えて決まったテーマが、「忍者」でした。
結果、たくさんの方々に来場いただくことができました。
再びたくさんの方にお越しいただき、出会えるようにと願いを込めた「忍者アゲイン」です。

総合受付の様子

柏センターの事務部門が総合受付でお出迎え。
この日は、産総研柏センターが再び忍者屋敷と化した1日となり、プログラムもパワーアップ。
朝方は雷が鳴っていましたが、オープンする頃には天候にも恵まれ、多くの来場者を迎えることができました。

声をかけてくれたお子さんは、自分も立入禁止の部屋を作って、レーザー加工機を使って模型を作りたいと話してくれました。
ガイド付きラボツアーでの体験からインスピレーションを受けたようです。

ラボツアーは事前申込み制だったのですが、希望者が多く、当初は1グループで実施する企画でしたが、急遽3グループにコースを増やし、午前と午後1回ずつ実施しました。


さて、このツアーのガイドを担当した3人とは・・・

谷口所長がガイドを担当するツアーの様子
柏センター 谷口正樹所長

持丸研究センター長がガイドを務めるツアーの様子
人間拡張研究センター 持丸正明研究センター長

牛島副研究センター長がガイドを務めるツアーの様子
人間拡張研究センター 牛島洋史副研究センター長


柏センターを率いるメンバーがガイド役となって、一般公開来場者を率いるツアーとなりました。
普段はジャケット姿ですが、この日は忍者に扮装したり、白衣を着用したりとイベントを盛り上げます。

そしてもうひとり忍者装束でフロアの誘導案内をしていたのは、人間拡張研究センター 蔵田武志副研究センター長。
カメラを向けると手裏剣投げのポーズでこの通り。


忍者装束でフロア案内をする蔵田副研究センター長

幹部も一緒にイベントを盛り上げていく雰囲気も、産総研柏センターの魅力のひとつです。



 

1日限りの忍者屋敷

受付で配布した忍者屋敷の案内マップに沿って、開催の様子をご紹介します。

会場案内マップ

エントランスを入ってすぐ右手のコーナーは、ウェルビーイングデバイス研究チームによる「忍者の資金調達」
光を当てて固まる樹脂で、「古銭の型どり体験」です。

忍者の資金調達の様子

その先を進むと、スマートワークIoH研究チームによる「忍者アイ(SFS)」
大きな黒い装置が、SFS(サービスフィールドシミュレーター)です。
仮想空間を「HMD(ヘッドマウントディスプレイ)無し」で「自分の足で歩き回れる」特別な装置です。
この日モニターに映っていたのは、仮想空間に再現されたバーチャル柏センターです。

忍者アイ(SFS)体験の様子

「え、ゴースト?」
装置の中で歩いているのは自分1人のはずなのに、時折、モニターには自分以外の人影が通り過ぎていきます。
実はこれ、3階で実施している「忍者アイ(タブレット)」の端末から同じバーチャル柏センターに入ることができるようになっていて、それぞれの参加者がお互いの姿を見られるようになっていました。

忍者アイSFSの中の画像


廊下に出て直ぐの部屋は、いつもは職員が「家庭科室」と呼んでいるテキスタイル制作室です。
この日は、生活機能ロボティクス研究チームの「忍者的手甲糸処理体験―無縫製横編み機見学と糸処理体験―」を実施していました。
ちょうど、無縫製編機でセーター作製のデモンストレーションをしているところでした。
無縫製編機を見学している様子

写真は、編機の下から作品が出てくるのを見ているところです。
事前申込みの参加者が体験したのは、この編機で作製した忍者の手甲風手袋の最後の仕上げとなる糸処理です。
糸処理体験は小学校高学年以上が対象のプログラムでしたが、体験後に残った糸くずを箱に入れて置いておいたところ、なぜか小さい子どもたちに大人気。
嬉しそうに糸くずをお持ち帰りする様子に、担当の泉小波主任研究員は「ただの糸くずなのに、子どもはなにが興味を惹くかわからない」と驚いていました。

糸くずに興味を示す子ども

部屋を出て次のプログラムへ向かうも、廊下はなぜか薄暗く。
廊下を歩くと「通りゃんせ」の音楽が一緒についてきます。
この正体は、床に設置された黒い長い布。
廊下に設置された黒い布のファブリックスピーカー

スマートセンシング研究チームの「【特別展示】声がついてくる長い廊下?―ファブリックスピーカー―」でした。
廊下の先には暖簾型のファブリックスピーカーも設置していて、「布から音が出る不思議」を体験した参加者から喜びの声を聞くことができました。

ファブリックスピーカーを体験する様子



エントランスホールに戻り、別の廊下を進んだ突き当りは、スマートセンシング研究チームの「手裏剣工場」
レーザー加工機に手裏剣デザインをプログラムし、アクリル板をカットします。
手裏剣工場でアクリル板の硬度を確認

先ずはアクリル板の硬さを確認。
産総研オリジナルの手裏剣ができあがる様子を子どもたちが真剣に見ています。

完成した色とりどりの手裏剣の画像

今年はカラーバリエーションも増えました。
各々、好きな色の手裏剣をお土産にお持ち帰り。
忍者屋敷は、手甲風手袋を着けたり、手裏剣を持っている忍者であふれていました。
ちびっこ忍者の姉弟に遭遇。

忍者ポーズの小さな忍者さん

「ニン!」
カメラを向けるとポーズを取ってくれました。

 
3階は忍者修行のフロアです。
幅広い年齢層の方が体験しているのは、運動機能拡張研究チームの「特訓!変化の術―忍びたるもの、化ける対象の雰囲気を醸し出すでござる―」

変化の術の修練中

若々しさの秘訣、美しい歩き方の秘訣は、姿勢にあり。
小林吉之研究チーム長が、姿勢の作り方を伝授していました。

同じスペースの隣のエリアは、サービス価値拡張研究チーム「忍者の情報共有術」。
「柏の葉」への想いやアイデアを来場者から募り、それを街の声を集めるデジタルシステム上に反映するコーナーです。
初年度は付箋紙に「柏の葉のいいところ」や「課題」を書いていただくプログラムで、ここから「柏の葉市民アドバイザー」が誕生しました。

忍者の情報共有でイラストを描く子どもたち

今回は、子どもたちが思い思いのイラストを描いていたのが、印象的でした。


一番奥の部屋で行われていたのは、事前申込みプログラムの認知環境コミュニケーション研究チーム「脳波による忍者ロボットの操作ゲーム―障がい者支援技術を応用して―」
忍者ロボットを脳波で操作する様子

昨年の一般公開から柏センターでもお披露目になったbスポーツ。
脳波による脳トレ競技は、運動機能によらないため年齢に関係なく一緒に取り組むことができます。
この日は、なんと!ロボットも忍者になっていました。


ラボエリアに移動すると、認知環境コミュニケーション研究チームの「忍者修行!暑さも寒さもへっちゃらでござる」

忍者修行で人工気候室の説明をする森さん

暑い/寒い温度に設定した2つの人工気候室を行ったり来たりしながら、自分の感覚やこれまでの経験を元に、部屋の温度を当てる体験です。
担当の森郁惠主任研究員から事前説明を受けて入室しましたが、修行の成果はいかに?

人工気候室で温度当てを体験する参加者


ラボエリアの反対側に周ると、「モ~」「コケコッコー」など、なぜか動物の声が聞こえます。
共創場デザイン研究チームの「忍者は何人じゃ?」の部屋でした。
音がどちらの方向から聞こえるかを人は左右の耳で聞こえる音の違いから判断します。
この部屋は、24台のカメラからなるモーションキャプチャシステムと8台のスピーカーからなる立体音響システムが構築されていて、音が動いて聞こえる不思議を体験することができます。
自分の耳だけを頼りに、照明を消した部屋の中で何人の忍者が隠れているかを当てる体験をしました。

忍者は何人じゃで立体音響の説明をする村井さん


こちらは、スマートワークIoH研究チームの「忍者アイ(タブレット)」
コントローラーでアバタを操作して、仮想空間に設置されたバーチャル柏センターの中を歩き回ります。
仮想空間に現れた敵に手裏剣を投げつけ、やっつけるゲーム体験になっていました。

同じ部屋に設置された4台のパソコンと1階の忍者アイ(SFS)とも仮想空間内でつながっています。
きょうだいで同時に体験し、「おにいちゃん、今どこ~?」と声をかけあい、コミュニケーションを取る姿が見られました。

忍者アイ(タブレット)でバーチャル柏センターを体験中

さらには、チームの屋内測位技術を使って、専用の携帯端末(写真:オレンジ色のケースの中に入っています)を持った人の位置を取得し、仮想空間の同じ場所にアバタを出すといった現実と仮想を連動させることも行っていました。
今後、普及が想定される「メタバース」の要素技術を一度に体験できるデモンストレーションになっていました。
 

特別エリアへ潜入せよ

実はガイド付きラボツアーでは、上記の体験プログラムの紹介に加え、今回特別なエリアへの潜入が組まれていました。
いわゆるスーパーコンピューターであるAI橋渡しクラウド(ABCI)が入っているAIデータセンター棟の中に入り、廊下からガラス越しにサーバー室を見学。

ABCIサーバー室を廊下のガラス越しに見学

その後、冷却装置が設置されている屋外エリアを見学しました。
柏センターの職員でも、入ったことのある人は限られているエリアです。

ABCIの特徴のひとつに、水冷式冷却装置を使った省エネタイプということがあります。
実際に水が通っているパイプを触ると、冷却水(往)と冷却水(環)では冷たさが違うことがはっきりわかります。

スパコンの水冷式冷却装置を見学

皆さんに、産総研柏センターの施設や研究について知っていただく機会になっただけでなく、柏センターのスタッフにとっても、地域の皆さんと交流するよい機会になりました。

産総研柏センター一般公開2023」実行委員長 大槻麻衣主任研究員 コメント
実行委員長を拝命し、4年振りの対面開催ということで、特にこの2カ月は準備に走り回っていました。
優秀な他の研究者やスタッフさん達に支えられ、つつがなく終えることができました。
ご来場いただいた皆様からの直接のコメントや、アンケートも概ね好評でとても励みになります。
あらためまして、ご来場いただきありがとうございました。
ぜひ、また覗きにいらしてください。

谷口所長コメント
研究はまさに「現代版からくり」なので、忍者のからくり屋敷に見立ててみましたが、いかがでしたでしょうか?
一般公開は年に一度の文化祭だと思っています。たくさんの方にご来場いただき、ありがとうございました。
来年もぜひお越しください。

謝辞
一般公開2023を開催するにあたり、地域の方へのプロモーションとしてポスター・チラシを作成しました。
柏市、流山市、千葉県にご協力をいただき、自治体庁舎やTX柏の葉キャンパス駅、柏たなか駅、流山市コミュニティバス、市内小中学校、図書館、インフォメーションセンター、近隣センター、各種イベント会場などへの掲示、配架をいただきました。
その他、多くの方にご協力をいただきましたこと、感謝申し上げます。 柏センター広報
 
国立研究開発法人産業技術総合研究所