Innovation Zone -イノベーションゾーン-
産総研の最新研究成果を、実際の試作品や解説画像などをまじえてわかりやすく紹介したコーナーです。
研究成果が社会に役立てられるときのカテゴリーから、展示ゾーンを3つに分けて配置しています。
さまざまな科学技術が変えていく「ちょっと未来」の社会を思いうかべながらご覧ください。
LIFE TECHNOLOGY -ライフテクノロジー-
健康で安全な未来の暮らしを築く“ライフテクノロジー”
安全検証と国際標準化が進む生活支援ロボット
介護や家事などを人に代わって行う生活支援ロボット。
生活の場で働き、人間と密接に関わる存在だからこそ、確かな安全性とその証明が必要とされます。産総研では、生活支援ロボットの研究開発を進めるとともに、人間とロボットの未来をより良いものにするための安全検証技術と国際標準策定に向けた研究を進めています。
植物の秘めた力を引き出す密閉型植物工場
植物の秘めた力を医薬品製造に活かすために、遺伝子操作は有効な手法です。しかし、一般の環境での遺伝子組換え植物の栽培は、生物多様性の担保の観点から厳しく制限されています。産総研では、北海道センターに完全密閉型植物工場の試験プラントを建築、外部に影響を与えることなく遺伝子組み換え植物を医薬品製造に活かす技術を開発しています。
脳波で難病患者の意思伝達を支援 ニューロコミュニケーター
産総研では、脳と機械をつなぐ「ブレイン・マシン・インターフェイス」(BMI)の技術を用いて脳波で意思を伝達する装置「ニューロコミュニケーター」を開発しました。この装置が実用化されれば、重度運動機能障がいを持つ患者さんがご家族や介護者とコミュニケーションができるだけでなく、社会参加への支援が期待できます。
ヒトiPS細胞を生きたまま染色 再生医療技術の推進
2012年山中伸弥博士のノーベル賞受賞以来、iPS細胞の名を皆さんご存じでしょう。iPS細胞の発見は、多能性幹細胞による再生医療の可能性を大きく広げてくれました。産総研では、「再生医療におけるiPS細胞の実用化」を目標に定め、作製・自動培養・品質管理・選別も含めたiPS細胞製造技術の開発を進めています。
セキュリティや自然生物観察に貢献 赤外線カラー暗視撮影技術
暗闇の中にある物体を撮影するために使われてきた赤外線スコープや赤外線カメラによる映像は、これまで全てモノクロでした。産総研では、赤外線だけを用いて、可視光で見た物体の色に近いカラー映像を撮影する技術を開発しました。セキュリティ関連分野や車載用カメラ、夜間の生物観察などに大きな力を発揮する新技術です。
建造物・工業製品などの保守点検を支える非破壊検査技術
橋梁やビルなどの建造物の保守点検、輸送機器や部材などの工業製品の品質管理など、非破壊検査は安心・安全な社会を支える重要な技術です。産総研では、応力発光体やモアレを活用した変形試験や欠陥検知などの新たな計測技術の研究とともに、小型X線源、窒化アルミ薄膜センサーの開発など、幅広い分野で非破壊検査技術の向上を進めています。
将来起こりうる地震に備えるための津波堆積物調査
過去の巨大地震の履歴を知ることは、将来起こりうる地震の被害を最小限に抑えるために役立ちます。島国の日本では、地震にともなう津波の規模を過去の履歴から学ぶことはとても重要です。産総研による地層抜き取り装置を使った津波堆積物調査の様子を、仙台平野の現場で採取したスライス断面のはぎ取り標本とともにご紹介します。
高精度な防災・地盤評価のための基盤情報 都市域の3次元地質図
いま大地震への危機感とともに、都市部の地盤に対する関心が一般市民の間にも高まりつつあります。しかし、都市部の地下の状況を知ることは容易ではありません。産総研では、ボーリングデータなどの地質調査データをもとに、3次元で地下の地層の分布をわかりやすく表示する地質図の整備に取り組んでいます。
何もない空間につくりだされる“感触”3D触力覚技術
何もない空間で、指先に不思議な感触をあたえる研究がすすめられています。指先に装着した小型デバイスが、計算された振動によって、あたかも指が引っ張られたり、押されているような錯覚を引き起こします。さらに、低コスト・小型化を実現し、エンターテイメントや医療分野までも含む、様々な産業への応用を目指した技術です。
肝炎の進行状況を迅速に判定する 糖鎖マーカー
ウイルス性肝炎は、進行すれば肝硬変や肝細胞がんの原因になり得ます。産総研では、これらの病変にともなう肝線維化の検査を、糖鎖マーカーを用いて短時間に行える技術を開発しました。この検査なら、入院を必要とせず、採血するだけで肝臓の線維化を迅速に測定が可能。その日のうちに測定結果を知ることできます。
ファブリックスピーカー ~音が鳴る布~
伸縮性のある柔らかい布から、従来のスピーカーのように音を出すことができる新たなデバイスです。導電性の布が電極の役割を果たし、布の間に挟まれたフィルムを振動させることで音を出します。柔らかい布のように自由に形状を変えることができるため、衣服や布製の家具など、さまざまな場所から情報を発信することが可能です。
創薬支援ベンチワークロボット「まほろ」
創薬などのライフサイエンスの研究現場では、煩雑な手作業を果てしなく続けるベンチワークが避けられません。そこで開発されたのが、従来「熟練した人間にしかできない」とされていた作業を行うロボットです。汎用ヒト型ロボットまほろは、覚えさせればあらゆる作業に適合し、決してミスのない作業を続けることができます。
デジタル音楽の楽しみ方の未来「Songle(ソングル)」
音楽のデジタル化で、その楽しみ方が大きく変わってきました。インターネットを通して、手軽に音楽に触れることができますが、膨大な音楽情報から欲しい楽曲を見つけることはなかなか難しいもの。Songle なら、ネット上の楽曲をコンピュータが自動的に解析し、その結果を「音楽地図」で可視化してくれます。
GREEN TECHNOLOGY -グリーンテクノロジー-
人と地球の豊かな未来をつくる“グリーンテクノロジー”
近未来の生活を支えるリサイクル技術「戦略的都市鉱山」
携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラなど、廃電子機器に少量含まれる貴金属やレアメタル。これまで廃棄されてきたこれら金属資源、いわゆる都市鉱山に眠る資源をリサイクルできれば、貴重な自国資源となります。産総研では、これら「都市鉱山」に眠る資源を高精度に取り出す技術や計画的に回収するためのシステム技術開発を進めています。
世界初の海洋産出試験を経て開発が進む メタンハイドレート
資源に乏しい日本で、新エネルギーとして注目されるメタンハイドレート。日本近海で多量の存在が確認済ですが、天然ガスのように自噴しないため、開発には大きな壁がありました。この課題に応えるため2013年春に世界初の海洋産出試験が行われ、産総研の開発した生産手法である「減圧法」の有効性が実証されました。
太陽光でつくるエネルギー 人工光合成
さまざまな再生可能エネルギーの開発が進む中、いま人工光合成が注目を浴びています。太陽電池には電気の貯蔵が困難という課題がありますが、人工光合成は、太陽光と水から貯蔵可能なエネルギーの「水素」を生むことができます。高性能な材料の探索と反応メカニズム解明の研究が、この夢の技術の実用化を加速します。
高性能太陽電池と評価技術のさらなる進化
産総研では、市場の主流である結晶シリコン太陽電池だけでなく、薄膜シリコンやCIGS、有機系など様々な太陽電池の研究開発を進め、さらにその普及に必要な発電量予測や長期信頼性向上にも注力しています。福島再生可能エネルギー研究所(FREA)には、国内唯一の研究用次世代太陽電池試作ラインも整備しました。
無充電で長期間使用できるエコIT機器を実現する スピントロニクス
電子が持つ電気的性質(電荷)と磁気的性質(スピン)の両方を活用した新しいエレクトロニクス分野が「スピントロニクス」です。産総研が開発した酸化マグネシウム(MgO)の磁気抵抗効果はスピントロニクスの最重要技術としてハードディスク(HDD)の中で使われ、さらに不揮発メモリMRAMは究極のエコIT実現に繋がると期待されます。
呼吸するように湿度を調整 多孔質セラミックス調湿建材
最近の高断熱・高気密住宅は、熱の流出入が少なく省エネに効果的だと言われています。しかし、調理や風呂などから発生した水蒸気の逃げ場がないことから、高湿度の環境になりやすく、結露やカビの発生という問題も抱えています。古来の土壁をヒントに開発されたこの建材は、電気を使うことなく部屋の湿度を調節できます。
次世代電力ネットワークを支える パワーエレクトロニクス
私たちの生活に電力は欠かせません。家電製品から産業用機器まで、身近なところではPC用のスイッチング電源やIH調理器、大きなところではインバータで省エネ化した電車や、自然エネルギー発電の電力制御など、さまざまな場所で効率的な電力の流通や利用を支えているのがパワーエレクトロニクスの技術です。高性能のSiCパワー半導体が、従来のSiパワー半導体による電力制御の性能限界を突破します!
MANUFACTURING -ものづくり-
日本の産業・日本の未来を支える“ものづくり”技術
材料性能の限界に挑むカーボンナノチューブ
カーボンナノチューブ(CNT)は、飯島澄男博士により発見された新物質です。特に単層CNTは様々な優れた特性を有し、実用化が期待される一方その合成が困難でした。産総研では、この単層CNTの合成方法を研究し、高品質合成法であるe-DIPS法や、低コスト合成法であるスーパーグロース法を独自開発し、単層CNTの実用化を目指しています。
粘土からつくる高機能な薄膜「クレースト」
水に弱い。柔らかくちぎれやすい。焼けば固くなるが割れやすい。こんな粘土のイメージを変えたのが、高性能粘土材料「クレースト」です。保水性が高い粘土を、日本古来の「紙すき」に似た製法で薄くしなやかなフィルムにしました。気体や液体に対する驚くべきバリア性を示し、さまざまな産業分野で応用・実用化されています。
表面のキズを光で自己修復する「光応答性ゲル」
停めておいたクルマに、いつの間にかひっかきキズがついていた!そんな経験はありませんか?でもそんなキズが、光をあてるだけ修復されたら…。産総研が開発した光応答性ゲルは、堅いゲル状物質に紫外線を当てると流動性のあるゾルに変わってキズを修復、さらに可視光をあてるとまたゲルに戻ります。
アボガドロ定数の高精度化によるキログラム再定義への道
長さや時間など国際単位系(SI)の基本単位の多くが物理定数に基づく定義に置き換わるなか、質量の定義だけは130年もの長い間「国際キログラム原器(白金イリジウム合金製の分銅)」が用いられてきましたが、2019年ついに質量の単位もプランク定数という物理定数で定義されることになりました。アボガドロ定数の精密測定を通じてプランク定数の決定に大きく貢献した産総研の技術力を紹介します。
薄く、軽く、丸められる電子機器を実現するプリンテッドエレクトロニクス
電子回路を印刷技術でつくるプリンテッドエレクトロニクス。いままではシリコンやガラスなどの硬くて重い材料の上につくられていたエレクトロニクスが、これからは印刷技術によって、肌に貼れるセンサーや、丸めて持ち運びできるディスプレイなど、より薄くて軽く、曲げても壊れない電子機器になるでしょう。
必要なときに必要な数の半導体デバイス生産を「ミニマルファブ」
半導体製造には、高価で大型の製造装置とクリーンルームからなる巨大工場(メガファブ)が必要でしたが、少量生産や試作のコストが極めて高いという課題がありました。その課題を解決するのがミニマルファブです。ミニマルファブでは、製造装置の小型化と標準化により製造コストが従来の100~1000分の1で済みます。
革新的な常温セラミックスコーティング「エアロゾル・デポジション法」
さまざまな材料を摩擦や熱から守るセラミックスによる表面コーティング。従来「高温処理」によるコーティングが常識で、設備も高価なものが必要でした。産総研が開発したエアロゾル・デポジション法(AD法)は、セラミック粉末を焼かずに対象物に吹き付けるだけで、堅牢で密着力の高い常温のコーティングを可能にしました。
魚の鮮度を保ち、速やかに冷却「海水シャーベット氷」
安全でおいしい魚を家庭の食卓に届けるために、産総研と株式会社ニッコーは、漁業の現場、船上での工夫に目を向けました。捕った魚を新鮮なまま保管するには大量の氷が必要です。しかし氷を積んで出かければ、積み荷は増え、燃料費もかさみます。そこで、船上で海水からシャーベット状の氷を素早く大量につくれる機械を開発しました。