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化学の世界の調律師!?

1億分の1の世界に挑む!

いろいろな調律師

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 質量や長さを測る場合は、それぞれ1キログラムや1メートルという量を決め、それを基準に、ほかの物の量を測ることが出来ます。でも、化学物質の量を測る場合は、そう簡単にはいきません。例えば海水中の水銀の濃さ(濃度)を測るには、水銀の濃度が分かった基準、すなわち水銀の標準物質、鉄であれば鉄の標準物質、ダイオキシンであればダイオキシンの標準物質が必要になります。つまり、分析したい物質の数だけ分析機器の調律が必要なのです。


環境基準を支える!

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 カドミウム、水銀、鉛、クロム…。どれもどこかで耳にしたことのある名前ではないでしょうか。ここに並べられたのは重金属の名前なのですが、その共通点はなんでしょうか? 新聞を読んでいれば分かるはずですよ。いやなイメージが浮かんだ人は正解にあと一歩。そう、これらの重金属は汚染物質として人間の体に大きなダメージを与えるものばかりなのです。これらの汚染物質は過去、深刻な公害問題を起こしてきました。カドミウムが原因の富山県のイタイイタイ病、有機水銀が引き起こした熊本県の水俣(みなまた)病…。そして二度とこのような不幸が起きないように制定されたのが、環境基準です。

 環境基準は人の健康を保護し、環境を保全するための基準で、越えてはいけない汚染物質の濃度が定められています。例えば川の水では、カドミウムは0.01ミリグラムパーリットル(1リットルの水に対して0.01ミリグラムの割合)以下、水銀は0.0005ミリグラムパーリットルといった具合です。カドミウム0.01ミリグラムパーリットルの水溶液といったら、何と1億分の1の世界なのです。このようなわずかな量を測ることはやさしいことではありません。分析機器に標準物質で目盛りを覚え込ませて測るのです。わずかな量のカドミウムを正確に測るための標準物質を作るには、混ざりもののない水や、純度の高いカドミウムを用意する必要があります。

正しい標準と腕前がポイント

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 最近、貿易の手続きを簡単にするため、また、私たちの住む地球の環境を守るために、今まで以上に化学分析の結果の正しさが求められるようになりました。今のところ、世界中の国が同じ標準物質を用いて化学分析をする訳ではありません。標準物質は使えば無くなってしまうこともあり、世界中で同じ標準物質を使うことは難しいのです。その代わり、各国が用いている標準が同じ程度に正しいと言えればいいわけです。用いた標準物質が同じでも、測定した結果が異なることもあります。それは測る人の腕前が違うためなのです。化学分析には、試料を分析機器に入れる前に多くの操作が必要で、その処理を間違えるととんでもない結果が出るのです。

 明治8年(1875)にメートル条約が締結され、質量や長さの基準となるもの(原器)が決められました。その原器は標準の総本山と言える国際度量衡(どりょうこう)局という機関に保管されています。この機関が主催する国際度量衡総会(委員会)が、平成7年(1995)に物質量諮問(しもん)委員会(CCQM)という新しい委員会を作り、そこで正確な化学分析に必要なことや、各国の分析結果がどの程度一致するかを調べるように要求しました。CCQMは同じ試料を各国に配り、各国は自国の標準を使って分析し、その結果を委員会に送り返します。これを国際比較と呼んでいます。この国際比較で各国の結果が一致すれば各国の標準が正しく、かつ分析した人の腕前も良いと評価できます。

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