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化学の世界の調律師!?

1億分の1の世界に挑む!

化学標準物質

 コンサートに行くと、ギタリストが演奏の前に、よくギターを調整して音を確かめていますよね。何をしているのでしょう?

 ギターやバイオリンを弾く人なら勿論分かっていると思いますが、あれはいわゆるチューニング-調律-をしているのです。つまり、正しい音を奏でられるよう、弦の張りを調節しているわけです。

 ところで、音に敏感なプロのミュージシャンであれば自分の耳を頼りにチューニング出来るのですが(このような人を、絶対音感のある人と言います)、普通はなかなかそうはいきません。そこで登場するのが音楽の授業でおなじみの音叉(おんさ)、あのU字形をした金属の道具です。例えば正しくA(ハ長調のラ:440ヘルツ)の音が楽器から出ていれば、Aの音叉は共鳴して震えます。正しく調律されたピアノがあれば、その音と比較して調律することも出来ます(ピアノの調律は調律師が行います)。つまり基準となる音に合わせて、楽器から出る音を正していくわけです。音階そのものは絶対音を無視して作れますし、単独でメロディを奏でるだけなら美しい音楽を表現することが可能です。でも、複数の楽器でハーモニーを奏でる場合は音の高低差が出来てしまい、不協和音になって音楽にはなりません。

 実は、一定量の物質の中に含まれる元素や化合物の量を測る化学分析の世界にも、同じことが当てはまるのです。

 分析する試料を分析機器の中に入れれば、ある物質を含むことを示すシグナルが出てきます。でも、どれだけその物質が入っているかを調べるには、分析機器のチューニングが必要です。この場合のチューニングというのは、分析機器に正しい目盛りを覚えさせること。そのためには、あらかじめ量の分かったもの(例えば0.1パーセントの水銀が含まれる水溶液)を分析機器に入れてやります。そして、その分析機器が示した目盛りが、分析機器に入れた物質の割合(この場合、水銀0.1パーセント)に当たるわけです。この、あらかじめ量の分かったものは、「標準物質」と呼ばれます。

 つまり、ギターなどの楽器に当たるのが分析機器、その楽器(分析機器)を調律するための音叉が標準物質だと言うわけです。

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国立研究開発法人産業技術総合研究所