本文へ

English

 

温度を変えなければわからない?

結晶の研究が拡がれば、新しい工学素材が生まれる?!

鉄と磁石は同じモノ?

 永久磁石というものがあります。鉄などの金属を引き付けたり、北と南を指し示す、誰でもご存じの身近な材料です。では、永久磁石が、鉄から作ることができるのはご存じでしょうか。さらにもうひとつ、永久磁石と鉄が、物理的にはまったく同じものだということはご存じでしょうか。

 永久磁石は、たとえば、鉄に熱を加えて温度を770℃以上に上げてから、ゆっくりと冷やしたものです。770℃という温度は、鉄が磁石になる温度(強磁性転移温度:キュリー点)なのです。冷やす際には、鉄の電子の向きをそろえてやるために、磁場を与えてやります。電子の向きが揃えば、半永久的に磁力を発生させることができるわけです。

単結晶にすると、物質の本質が見えてくる

 すべての物質は、液体から固まるときに結晶を形作ります。通常は、細かな無数の結晶が乱雑に集まった状態です。これを多結晶といいます。

 単結晶とは、バラバラな多結晶を整列させ、ひとつの大きな結晶に組み替えたものです。そうすることで、物質の本来の性質が現れます。

 物質の中には、単結晶が2次元構造になっているものもあります。薄い層が何枚も重なった状態です。その薄い層の水平方向には電気を流し、それが重なる垂直方向には電気を流さない、という奇妙な物質もあります。これも、単結晶を作ってみなければわからないことです。

図1
図2
デスクトップ型高性能結晶育成装置(iAce)の写真

デスクトップ型高性能結晶育成装置(iAce)

温度を下げると、物質の本質が明確になる

 ここまでに「永久磁石」という言葉を連発してきましたが、実際のところ、「永久磁石」は永久ではありません。温度によって、電子の動きが変わってくるからです。温度が高いと、電子は活発に運動し、乱雑に動き回るため向きが揃わず、磁力を失ってしまいます。多結晶を整理して単結晶を作ったように、永久磁石の温度を低くすればするほど、電子の向きが揃い、したがって磁力が強まります。

 常温では磁石にならなかった物質が、温度を下げることで、磁石としての性質を現わすこともあります。物質が温度を下げることで気体から液体、液体から固体と変化していくように、常磁性体から強磁性体、場合によっては超伝導体へと変化していくことがあるのです。これらの状態の変化を、「相転移」といいます。

 つまり、物質の本来の性質は、単結晶にして、温度を下げることで、より明確に現れるということです。

図3

「『できない』から『やらない』のではなく、『こうなったら面白いな』というものをやりたいと思っています」と語る池田博士。

池田博士の写真


前のページへ 次のページへ

▲ ページトップへ

国立研究開発法人産業技術総合研究所