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ナノテクノロジー


図(1ナノメートルの模式図)

 最近、「ナノテク」とか「ナノテクノロジー」という言葉を耳にすることが多くなりました。一体、このナノテクノロジーとはどのようなものなのでしょうか?

 テクノロジーというからには、何かの技術なわけです。でも、一体何の技術なんでしょう?そもそも、「ナノ」という言葉は何を表しているのでしょう?

 実は、このナノという言葉、元々ラテン語で“小人”という意味なのです。そして、“10億分の1”という意味で長さの単位にも使われています。つまりナノメートルは10億分の1メートル、すなわち100万分の1ミリメートルのことになります。

 ナノ・テクノロジーのナノは、このナノメートルのナノのことなのです。この大きさを、私たちが知っている大きさに例えてみましょう。

 高校野球で有名な甲子園球場があります。そのバッターボックスから外野のフェンスまでを1ミリメートルとすると、甲子園球場の砂粒の一つの大きさが、ほぼ1ナノメートルに相当します。とにかく、ものすごく小さいってことは分かってもらえたんじゃないでしょうか?

 そして、このナノメートルが、ちょうど物質を形作っている分子一個くらいの大きさなのです。このとてつもなく小さな世界では、私達に想像もつかない奇妙な現象が起こることが分かってきました。その奇妙な現象をうまく利用して、いろいろな物事に応用しようというのがナノテクなのです。

 コンピュータや携帯電話に使われる半導体や、遺伝子治療に使われるDNAなども、このナノテクによって新たな可能性がひらけるものと期待されています。また、とても小さな世界のことなので、当然人間の目で見ることは出来ません。性能のいい光学顕微鏡でも無理です。なにしろ、人間の目に見える光の波長よりも小さな世界なんですから。

 そこで、このナノの世界を見て調べることの出来る技術も必要になるわけです。と言うよりも、ナノの世界を見ることが出来る「プローブ顕微鏡」が実用化されたからこそ、夢物語のように思われていたことが現実になってきたと言った方がいいかもしれません。

 このようにして、一口にナノテクと言っても、様々な分野の最先端技術が集まって、更にその先を目指しているということがナノテクのすごさなのです。

 ナノテクの研究は、まだ始まったばかりです。これから、次々に新しい発見や技術の進歩があることでしょう。そしてその成果が私達の生活に生かされるようになるのも、それほど遠いことではないかもしれません。

ナノテクノロジー関連用語

走査型プローブ顕微鏡(SPM)

 微細な探針を走査するもっとも新しいタイプの顕微鏡。この顕微鏡の登場で、個体の表面の原子や分子を観察することが可能になり、ナノテクを大きく推進する原動力となった。

走査型トンネル顕微鏡(STM)

 プローブ顕微鏡の一種で、最初に実用化されたもの。極微の世界の「トンネル効果」という奇妙な現象を利用して、分子のみならず、原子一個までをも見ることが出来る。

カーボン・ナノチューブ

図(カーボン・ナノチューブ)

炭素だけでできている、ナノの世界の細い筒。炭素だけで出来た、サッカーボールのような形をした「フラーレン」を研究中の日本人が発見した物質。その作り方や使い方の研究が盛んにおこなわれている、新素材期待のルーキー。

フラーレン

 1985年レーザー蒸発法によって得られた、ダイヤモンド、非晶質、グラファイト(黒鉛)についで、4番目に発見された炭素材料。カゴのような構造を持ち、優れた電子受容体として注目された。その名前は、アメリカの建築家、思想家であるバックミンスター・フラーが考案した「フラードーム」の形と、フラーレンのうちC60と呼ばれるものが同じ構造をしていたことによる。

トップダウン/ボトムアップ

図(トップダウン/ボトムアップ)

 トップダウンというのは、物体を微細加工によりナノスケールレベルにまでもっていく技術。それに対してボトムアップというのは、原子や分子を組み立ててナノスケールの物質を作り出す技術。ボトムアップでは、トップダウンでは不可能な微細な物質を作り出すことが可能。

ナノデバイス

 ナノレベルの素子。ナノデバイスの代表的なものとして、単一電子メモリがある。従来の半導体メモリは、コンデンサとスイッチで構成されており、コンデンサに十万個程度の電子を蓄えたり放出したりして0と1の情報を記憶させている。それに対し一個の電子だけで記憶させようとするのが単一電子メモリ。このナノスケールのメモリが実用化されれば、コンピュータの超小型化、大容量化が可能となり、しかも消費電力もきわめて少なくてすむ。

ナノ計測

 ナノテクが発展していくためには、ナノレベルでの計測技術が不可欠。現在、各種顕微鏡の高性能化、ナノメータX線計測など、さまざまな研究開発が行われている。

バイオセンサ

 ナノレベルの粒子や薄膜などを分子認識材料として用い、生体の反応を検出するデバイス。生体の分子認識材料としては抗体が知られているが、抗体はタンパク質のため、長期にわたって安定した機能を保つことが困難。そこで、人工的に耐久性のあるセンサ分子を作りだし、安定的に生体の情報を知ろうというもの。このバイオセンサが実用化されれば、体内のわずかなガン細胞の発見も容易になるかもしれない。

ゲノム創薬

 ヒトゲノム解析によって分かってきた知識をもとに、病気に対する効果的な医薬品を開発すること。遺伝子等のナノレベルで、病気の原因や治療法が解明されれば、分子レベルで効果を発揮する薬の設計が可能となる。こういった効率的な薬は、目的とする病気の治療以外の効果=副作用が少なく、少量でも十分な効果が期待される。

ドラッグデリバリーシステム(DDS)

 薬物を運ぶナノレベルの乗り物を作りだし、そこに医薬物質を乗せて目的の部位に到達させるシステム。通常は体内での薬の濃度を保つために、患部以外へも薬が広がる。それが副作用を引き起こすため、効果があることがわかっていても強すぎて使えない薬があった。目的とする患部にのみ薬を運ぶシステムが実現すれば、ピンポイントでの治療ができるので、副作用の心配も少なく、効率的な投薬が可能となる。

IT

 Information Technologyの略で、情報技術を指します。ITが飛躍的に進展するには、コンピュータの高性能化・低価格化と通信の大容量化・高速化が必要であり、それを実現させる可能性を持つナノテクノロジーに大きな期待がかかっている。IT分野での技術革新は世界経済の新たな構造を生みだし、産業から生活に至るあらゆるシーンを変革していくと考えられている。

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