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ナゾの料理研究家?

料理の材料は原子と分子!?

1+1=4?

図:シミュレーションで得たアルカンチオール分子膜の構造1

図:シミュレーションで得たアルカンチオール分子膜の構造2

シミュレーションで得たアルカンチオール分子膜の構造

 先程ご紹介したフラーのシナジー幾何学の世界では、1+1=2ではなく1+1=4、つまり2つの三角形を組み合わせることにより、4つの三角形の面を持つ正四面体が生み出されると考えますが、実は原子・分子の世界でも、物質Aと物質Bを足すと、ABそれぞれの物質からは予想のつかない、“優れた何か”が新たに誕生するわけで、分かりやすく言えば“トンビがタカを産む”わけです(まさにシナジーです!)。

 しかも冒頭でも触れたように、原子・分子は自然に集まってある構造を作り出します。これを難しい言葉で「自己組織化」と言います。つまり原子・分子が作る構造物の設計図は始めから原子・分子の中にあるわけで、その設計図に従って、エネルギーを最小にするように分子同士が自動的に構造を作り出すのです。

 ですからナノシミュレーションは、分子が始めから持っている設計図をきちんと把握することから始まります。そして、その設計図をデータ化した仮想の分子を、イメージした完成物質の材料に沿ってコンピュータの中に入れていくわけですが、実は同じ物質を作るための材料の組み合わせ方、そしてその合成方法、さらにその組み合わせの数は、何千通りもあるのです。

 ですから、実際に原子・分子を使って実験を行っていたら、大変な時間と労力がかかることになるのですが、コンピュータの中でシミュレーションを行えば、効率的にもっとも適切なレシピを選び取ることが出来ます。このようにナノシミュレーションは、ナノテクノロジーの発展を加速させるためには、無くてはならない技術だと言えます。

コンピュータで見る分子の構造と運動

図:コンピュータで見る分子の構造と運動1

人の体は、様々な器官から作られている。その中の一つである目は、多くの細胞から作られ、さらに細胞は、生体膜などから作られている。生体膜は、アクアポリンという水分子を選択的に透過させる膜タンパク質や脂質から作られている。分子シミュレーションは、なぜアクアポリンが水分子だけを選択的に透過させるのかを解明するのに役立っている。

図:コンピュータで見る分子の構造と運動2

コンピュータシミュレーションから得られたアクアポリン(膜タンパク質)の構造


細胞の関所?

 それでは産総研で行われている、身近な物質の研究をご紹介しましょう。それは眼球や腎臓、赤血球などに多く存在する、アクアポリンと呼ばれる物質です。

 このアクアポリンは細胞膜を構成するタンパク質の一種で、水の分子を選んで透過させることで知られています。

 細胞膜というのは単なる囲いではなく、いろいろな低分子化合物が出入りできる半透膜の性質を持っています。常識的に考えれば浸透圧が高い方、つまり栄養分が濃く浸透圧の高い細胞内部から、栄養分がまばらで浸透圧が低い外部に物質が出ていくはずですが、実際にはその圧力に逆らって必要な物質を取り込んでいるのです。一方、不用なものは外部に排出されます。

 アクアポリンはこのような細胞の不思議な機能の一端を担っているわけで、ほかの物質は通さずになぜか水だけを通す、いわば“水以外通り抜けするべからず”という関所の役割を果たしています。そしてその機能は、アクアポリンの分子構造によるものだと考えられています。

 実はこのアクアポリン、眼球に多いというのには意味があり、涙が流れるのはアクアポリンが短時間に水をたくさん通すからなのです。水分子だけを選択することが出来るアクアポリンの分子機構が明らかに出来れば、眼病や腎臓病、そして糖が体に吸収されずに血糖値が高くなる糖尿病などのメカニズムが解明され、新しい治療法が確立されるかもしれません!

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国立研究開発法人産業技術総合研究所