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”電力”のような”インターネット”!

あなたのパソコンの背後で、巨大なコンピュータが動く?

この計算機が使いたいのではない この計算をしてほしい

 1990年代前半、コンピュータ技術は、急速な進歩の真っ只中にありました。科学者や技術者は、どこよりも高性能なコンピュータを開発しようと懸命に努力を重ね、スーパー・コンピュータや超並列コンピュータ、SMP(対称型マルチプロセッシング)、PCクラスタなどが、その性能を競い合っていました。

 コンピュータの種類は増え、性能は向上しましたが、実際にコンピュータを使うユーザーには、それほどメリットがありませんでした。

 というのも、そうした高性能コンピュータを使うためには、自分の使い方に合わせたチューニングが必要だったからです。ようやく使えるようになったとたん、そのコンピュータのメーカーが潰れてしまった、ということも多々ありました。

 ユーザーが求めていたのは、あくまでもコンピュータを使うことによるメリットで、コンピュータそのものではなかったのです。研究者やメーカーが競い合うのはともかく、好き勝手にバラバラなことをやっているのは、迷惑でしかなかったでしょう。

 そんな中で、他の研究者と連絡を取り合い、手を組もうという人たちが現れはじめました。みんなで技術や成果をオープンにして交換し、組み合わせていくことで、ユーザーにとってより使いやすい情報環境が実現すると考えたからです。後に「グリッド研究センター」のセンター長となる、産総研の関口博士率いるグループも、そうした研究者集団でした。

 研究者たちが目指す情報環境は、2000年ごろから、「グリッド」というコンセプトに集約していきました。

「グリッド」はネットワークを「仮想化」する

 「グリッド」のコンセプトは、ネットワークにつなぐだけで、いつでも、誰でも、どこからでも、安心に、安全に、安定した情報サービスを受けることができるようにしよう、というものです。

 現状のインターネットと異なる点は、ユーザーがネットワークをまったく意識しないですむよう、計算処理やデータ記憶、データ通信といった情報処理能力や、それを管理する体制の存在を隠してしまうことにあります。これを「仮想化」と呼びます。

 ネットワーク上にはさまざまな資源(コンピュータをはじめとするハードウェア、望遠鏡や電子顕微鏡といった実験装置、ソフトウェア、データベースなど)がありますが、誰にでもすぐに使用できる状態にあるとは限りません。他の計算で手一杯のコンピュータもあれば、混み合っている実験装置もあるでしょう。

 これらの資源の中から、すぐに利用できるものだけを表に出し、ユーザーが求めるサービスを、求められたときに、求められたとおりに提供することができれば、ユーザーは「ネットワーク」にアクセスしているのではなく、直接「サービス」にアクセスしているような錯覚を覚えるはずです。「ネットワーク」が意識されることは、まずありません。

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