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人間の耳に合わせた国際基準?

新しい「等ラウドネス曲線」が世界の音の評価基準に!

「ラウドネス」は、人間の耳に聞える音の大きさ

 皆人間の耳が聞きとれる音は、20Hzから20,000Hzの間だと言われています。これを可聴領域といいます。可聴領域よりも低い音、つまり周波数が20Hz以下の音は聞こえません。そのような音は低周波と呼ばれています。20,000Hz以上の高い音は、超音波と呼ばれていて、これも聞くことはできません。

 可聴領域の中でも、人間の耳が聞きとりやすい、感度のいい周波数帯があります。もっとも聞きとりやすいのは、2,000Hzから4,000Hzの高さの音。この周波数には、赤ちゃんの泣き声や、女性の悲鳴、家電製品の警告アラームなどの音があります。

 感度がいいということは、つまり、より大きな音として聞えるということです。

 音圧を一定に保って、周波数だけを変えていくと、たとえば3,000Hzでは大きく聞え、30Hzでは小さく聞えます。「ラウドネス」が、大きく変化しているのです。30Hzの音を、3,000Hzの音と同じ「ラウドネス」で聞くためには、音圧を上げなければいけません。

 音圧を縦軸に、周波数を横軸にしたグラフを見てみましょう。周波数が1,000Hzで、音圧レベルが40dBのときの「ラウドネス」を、40phon(ホン)とします。これを一定にしながら、周波数を変えていくと、音圧も大きく変わっていきます。この周波数ではこの音圧といったレベルを結んでいくと、グラフは曲線を描きます。この曲線を、「等ラウドネス曲線」、あるいは、人間の聴覚が等しい感度を持つレベルだということから、「聴覚の等感曲線」といいます。「ラウドネス」は人間の感覚によるものですから、方程式などは当てはまりません。「等ラウドネス曲線」は、人間が自分の耳で決めるのです。

図:等ラウドネス曲線の新旧特性

70年前の規格と、50年前の規格

研究は試行錯誤の繰り返しですが、うまくいったときの喜びは大きいんですよ」と語る蘆原博士。手にもっているのは、新しい国際規格ISO226:2003。

蘆原博士の写真

 「等ラウドネス曲線」は、聴覚におけるもっとも基礎的な特性のひとつです。その研究は古くから行なわれていました。

 1930年代には、アメリカのベル研究所で、フレッチャー氏とマンソン氏が「等ラウドネス曲線」を測定しています。彼らの「等ラウドネス曲線」は、現在にいたるまで、騒音を評価する際の基準になっています。

 騒音の強さは音圧で測定しますが、周波数によっては、音圧が弱くても、「ラウドネス」が大きくなることもあります。そのため、「等ラウドネス曲線」にもとづいて補正する必要があるのです。

 1950年代には、英国国立物理学研究所のロビンソン氏とダッドソン氏が測定した「等ラウドネス曲線」が、国際標準化機構(ISO)によって国際規格(ISO226)となりました。しかし、1980年代に入ると、この規格に疑問を抱く研究者が現れました。この特性には、1,000Hz以下の周波数領域に大きな誤差が含まれている可能性がある、というのです。その領域は、フレッチャー氏とマンソン氏の「等ラウドネス曲線」とも大きく異なっていました。

 そこで、1985年、ISOの第43専門委員会(音響関係の規格化を担当する委員会)において、新規格の策定作業が開始されたのです。

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