本文へ

English

 

生きている家!?

人にやさしい機械の登場?

感覚受容器を持つ家

 私たちが安全に暮らしていけるのは、外界の情報を五感によって把握することができるからです。五感とは、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、そして皮膚感覚です。外界の情報を捉える器官を感覚受容器と言います。感覚受容器は特殊な細胞で、例えば私たちのヒフには痛みを感じたり温度を感じたりする感覚受容細胞が点在しています。ですから熱いお湯がヒフにふれれば、身を守ろうとしてお湯がかかった場所をひっこめるわけです。

 では、もしこの感覚受容器を持つ家があったらどうでしょう? つまり、生物のように視覚や聴覚や皮膚感覚を持った家ということです。実は冒頭に登場した家が、感覚受容器を持つ生き物のような家なのです。その家がある場所は、産業技術総合研究所(産総研)の関西センターです。家そのものはまったく普通のものと変わりません。でもよく見ると、部屋の天井や壁にいろいろな装置らしきものが取り付けられています。この装置が家の感覚受容器で、センサーと呼ばれています。よく知られているセンサーには、自動ドアにとりつけられたものがあります。つまりこのセンサーが家中に装着されており、住んでいる人の状態をしっかりと見守っているというわけです。センサーの種類は15、そしてその数は全部で167個にのぼります。

 産総研ではより安全な“生きている家”開発のために、この住宅に被験者(実験を受ける人)に住んでもらい、さまざまな実験を行っています。

写真:感覚受容器を持つ家

なぜ生きている家なのか?

 さて、ではなぜ住んでいる人を見守る必要があるのでしょうか。人気の無い夜道や、車が猛スピードで走り抜ける道や、酔っぱらいや羽目をはずす人たちがいる夜の繁華街ならいざしらず、安全なはずの家の中です。

 実は余り知られていませんが、家庭内で起きる事故は年々増えており、2000年に交通事故で死亡した人の数が12,857人なのに対し、家庭内での不慮の事故で死亡した人は、11,155人にものぼります。しかも交通事故は年々減少しているのに対し家庭内事故は増える傾向にあるので、その数が逆転するのは時間の問題かもしれません。そして、その背景となっているのが高齢社会です。家庭内事故に遭遇した人の年齢を見ても、65歳以上の方が70%以上もの割合を占めています。お年寄りは運動能力や生理機能が衰えている上、家庭内で過ごす時間が長いことがその原因となっています。さらに核家族化、都会への若者の流出によって、お年寄りだけの家庭、一人暮らしのお年寄りの家庭が増えていること、昔のような地域のコミュニケーションが希薄になり、近隣にどのような人が住んでいるのかさえ知らない状況が増えていることが、事態を深刻にしています。 

図

 実際、新聞やテレビで、誰にも知られずに家の中で亡くなられ、数ヶ月後に発見されたといった悲惨なニュースが報じられることは、珍しいことではありません。もし、お年寄りに何かあったことがすぐ分かれば、命を救える可能性はぐんと高まるのです。

 なぜ住んでいる人を見守る家が必要か、これでご理解いただけたでしょうか。世の中は若くて元気な人や、親子で一緒に暮らす人だけがいるわけではありません。誰かに見守って欲しくても、いろいろな事情でそうはいかない人たちも大勢いるのです。


前のページへ 次のページへ

▲ ページトップへ

国立研究開発法人産業技術総合研究所