本文へ

English

 

”世界の材料”を知りたい見たい!

原子・分子を操りたい

物質の探求

ドルトンの原子記号

図:ドルトンの原子記号

 宇宙のすべての物質は原子と呼ばれる小さな粒で出来ています。そのサイズはおよそ直径が1千万分の1ミリメートル。ナノメートルという単位はミリメートルの百万分の1ですから、0.1ナノメートルということになります。

 私たちの体や身の回りにあるもの、つまりこの世の存在のすべては原子で出来ています。その原子の種類は自然界に存在するもので100余り。ということは、わずか100余りの種類の原子がいろいろな組み合わさり方をして、膨大な種類の分子を作り出していることになります。

 ところで冒頭でもお話ししたように、物質の正体を知ることは人間の大きな夢でした。ギリシア時代の哲学者たち、例えば最初の哲学者と言われるタレスは「万物は水である」と考えました。デモクリトスはそれ以上分けることの出来ない物質の最小単位を想定し、「アトム」と呼びました。

 そして19世紀初頭、イギリスの科学者ドルトンが、すべての物質は原子という小さな粒から出来ていると予言しました。

 ドルトンの予言は、その後の研究によって事実として定着し、いろいろな原子も発見されていきました。

 「物質は原子で出来ている」、まるで自分の目で確かめたかのように人は言うようになりました。でも、実際に原子の存在を自分の目で見たことのある人など誰もいなかったのです…。

写真:原子で書かれた文字「SAM」

原子で書かれた文字「SAM」

図:原子分子観察・識別・操作技術

原子分子観察・識別・操作技術
走査型プローブ顕微鏡で原子や分子を観察し識別操作する対象を決め、探針上に捕獲する。この探針を質量分析装置へ搬送し飛行時間差法により質量を計る。そのスペクトルから対象とした原子や分子の化学種を知ることができる。さらに、一個一個並べることにより、これまでにない新しい並びを持った構造を作ることができる。

図:原子や分子を操作し新しい構造を作成

原子や分子を操作し新しい構造を作成

世界最小の文字!?

 平成2年(1990)、新聞に載った写真が世界中の人を驚かせました。その写真はたった3つのアルファベットを映し出したものでした。そんなものに、なぜ世界中の人たちが驚いたのでしょうか…?

 その秘密を握るのが、昭和56年(1981)にIBMのチューリッヒ研究所で開発された「走査型プローブ顕微鏡」と呼ばれる顕微鏡。世界の人たちが驚いた理由は、なんとそのアルファベットが原子を並べて書かれたものだったからなのです。

 走査型プローブ顕微鏡にはいくつかの種類がありますが、このとき使われたのは走査型トンネル顕微鏡(STM)と呼ばれるものでした。細い針(プローブ)と物質の間に電圧をかけ、針を原子に近づけていきます。すると、ある時点で電流が流れるはずのない絶縁空間を、トンネルの中をすり抜けるように電子が移動するのです。針を左右に動かしながらこの電流の強弱を調べていくことによって、物質の表面の凹凸が分かるのです。さらに、針の先に小さなものをくっつけて動かすことも可能で、世界中を驚かせた3つの文字は、その機能を使って描いたものだったのです。

 しかし、その写真は本当に真実の原子の姿だと言えるのでしょうか? 目で直接“見た”わけではないのです。それにその原子が何の原子であるのか決めつけることが出来るのでしょうか。どんなに厳密な管理をしても、思いもしない物質が混じってしまうことがあるかもしれません。

 走査型プローブ顕微鏡は、私たちに初めて原子の姿を見せてくれた画期的な装置です。しかし、画期的であるがゆえに、冷静にその技術を見つめる目も必要なのです。

徳本洋志博士の写真

「日本は勿論のこと世界中で21世紀を支える技術として注目されているナノテクノロジーですが、それを根幹から支える技術が走査型プローブ顕微鏡です。

これまでその重要性が叫ばれてはいましたが誰もできなかった信頼性の高いプローブをカーボンナノチューブで実現できたことに、誇りを感じているところです。

今後は、この究極探針を使っていかにナノテクノロジーに活かしてゆくかがこの分野をリードできるかを左右する、頑張りどころであります」

(徳本洋志博士)


前のページへ 次のページへ

▲ ページトップへ