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透明なのに発電できる?

「透明」だから、可能性も見えてくる!?

世界初、紫外光で発電する太陽電池

写真:透明な太陽電池の試作品

透明な太陽電池の試作品

 太陽エネルギーを利用する太陽光発電は、地球温暖化を防止するエネルギーとして、世界的に注目を集め、期待されています。しかも太陽エネルギーは無尽蔵。石油のように、いつ枯渇してしまうか心配する必要はありません。資源の乏しい日本にとっては、なおのこと嬉しいエネルギーなのです。

 現在もっとも普及している太陽電池は、シリコンを材料とし、赤外光と可視光を利用して発電しているものです。シリコンは資源も豊富で、コストも低く、実用的なのです。

 人工衛星などには、放射線に強く、シリコンよりも発電効率の高い、ガリウムヒ素太陽電池が使われています。これは発電に可視光を利用しています。

 産総研が試作に成功した「透明な太陽電池」は、紫外光を利用して発電します。「透明」であるだけでなく、紫外光を利用する点でも、世界で初めての太陽電池なのです。

「透明な半導体」が面白い

外岡博士の写真

以前はガラスの研究に取り組んでいたという外岡博士。「透明なものにこだわるのはそのせいかもしれませんね(笑)。ただ透明なだけでなく、何か機能を持たせてやりたいんですよ」

 「透明な太陽電池」が発電するメカニズムをご紹介しましょう。

 太陽電池は、p型とn型という2種類の半導体を接合させて作ります。その接合面(界面)に光が当たると、その刺激で電荷が発生し、電気を外部に取り出すことができます。シリコン太陽電池では、その名のとおり、半導体にシリコンを使っています。

 「透明な太陽電池」では、もちろん、「透明な半導体」を使っています。

 n型の半導体には、酸化亜鉛が使われています。これは古くから、代表的な酸化物半導体として知られていました。

 p型の半導体に使われているのが、銅アルミ酸化物。1997年に東京工業大学の川副・細野グループが発見したものです。

 「透明なp型半導体はそれまで見つかっていませんでした」と語るのは、産総研エレクトロニクス研究部門の外岡博士。「n型とp型の透明な半導体がそろえば、いろいろなデバイスが作れる。これは面白いぞ、と思ったわけです」

 そうして真っ先に誕生したのが、「透明な太陽電池」というわけです。

透明さを決める「バンドギャップ」

図

太陽光エネルギーの波長分布

 普通に考えれば、「透明」なのに電気が流れる、さらには半導体になる、というのは不思議なことでしょう。

 「透明な半導体」の場合は、ガラスなどと違って、紫外光を吸収します。透明に見えて、完全には透明でないのです。そこに、電気が流れたり、半導体になったりする秘密があります。

 半導体の性質は、エネルギーバンドギャップという数値で表されます。バンドギャップが小さい半導体ほど、長い波長の光までを吸収します。

 たとえばシリコンのバンドギャップは、約1eV(エレクトロンボルト)。これは、1100nm(ナノメートル)の波長に相当します。この波長は赤外光ですから、シリコンは、赤外光と、それよりも波長の短い可視光、紫外光を吸収するということです。

 「透明な半導体」のバンドギャップは約3eVです。これは、400nmの波長に相当します。これより波長が短い光は、紫外光しかありません。赤外光や可視光を透過させて、紫外光だけを吸収するから、「透明な半導体」なのです。

 ちなみに、純度の高いシリカガラスは約10eVで、ほとんどの光を透過させますが、波長150nm以下の紫外光は吸収します。「透明」というのは程度の問題なのです。

 「透明な太陽電池」は、赤外光と可視光をとおし、紫外光を吸収して、そのエネルギーで発電します。「透明」に見えるのは、人間の目に見える可視光が素通りするからです。もしも人間の目が紫外光まで見ることができたら、黒っぽく見えるはずです。

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