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ミクロの世界のハンター!?

30億年前の生命を追う!?

獲物ハンターの正体?

 地球上のバクテリアの種類は百万とも千万種類とも推定されています。そのうち、その存在が確認されているのは1万種程度に過ぎません。

 ところで、バクテリアとは一体どのような生物なのでしょうか?

 冒頭でもご紹介したように、その大きさは1ミリの千分の1ほどしかありません。代表的なものには大腸菌があります。単細胞かせいぜい単純な細胞の集合体で、球状、棒状、らせん状と形は種によってさまざまです。

 バクテリアと同じように“微生物”と呼ばれるカビや酵母は、はっきりとした膜で囲まれた核をもった“真核細胞”(動物や植物はすべてここに入ります)に属し、バクテリアよりはずっと進化した、まったく異なる生物です。

 つまりバクテリアとは、はっきりとした膜で囲まれた核をもたない“原核細胞”で出来た、いわゆる“原核生物”の総称なのです。

 原核生物は専門的にいうと、“真正細菌”と“古細菌”の2つに分類出来ます。バクテリアという言葉は専門家の間では真正細菌を指し、古細菌は“アーキア”と呼ばれます。しかし、どちらも顕微鏡で見ただけでは見分けがつきません。

 “古細菌”の方は百度を超える温度の環境や酸素のない環境、pHが極端に低い環境などから見つかったので、原始地球環境で誕生した最も古い生物の生き残りだと考えられてきました。しかし、無酸素環境や高温環境からも真正細菌が見つかっていることや、他のさまざまな研究結果から、真正細菌と古細菌はどちらが古いかは簡単に決められないことが分かってきました。

 いずれにしても酸素のない環境や高温環境には、生命の進化の源となるバクテリアがたくさん存在し、しかもそのほとんどすべてが、まだ未知のものなのです。

 そして、そのような特殊な環境に生息するバクテリアを追いかけているミクロのハンターの正体は、産業技術総合研究所(産総研)の研究員たちなのです。

写真1

鞘の中に包まれた糸状細菌(電子顕微鏡写真)

写真2

メタンをつくる古細菌と共生しないと生きられない嫌気性細菌(電子顕微鏡写真)

写真3

細胞の中にグリコーゲンを大量に蓄積するバクテ(電子顕微鏡写真)


生物の源流にとどまるバクテリア?

 酸素が無い場所にもバクテリアはたくさん生息しています。

 酸素が無い場所というのは例えば地面の中。酸素が入り込めるのはわずかに地表近くだけです。それから海、水田、湿地帯、水たまりの泥の底。水の中には酸素が溶け込んでいますが、底に積もった堆積物のちょっと下に入ってしまえばそこは無酸素地帯です。それから動物の体内、例えば人間のおなかの中もバクテリア天国です。

 実は、地球上にいるバクテリアの90%以上は酸素のない海底地下圏と土壌地下圏に生息していると考えられているので、この世の中のほとんどのバクテリアは、嫌気性(酸素を嫌う性質)のバクテリアということになります。原始地球には酸素は存在しなかったので、その頃のバクテリアはすべて嫌気性バクテリアです。従って、今日でも生き続ける嫌気性バクテリアは、いわば生物の進化の源流にとどまっている連中とも言えます。

 そして、産総研の研究員たちが嫌気性バクテリアの中でも特に注目しているのが、メタンを作り出すメタン生成菌とその仲間たちです。

 メタンは地球上のあらゆる環境で発生しています。特に近年では世界的な規模での人口増加にともなう家畜の増加や田んぼの増加、地球温暖化に伴う温度上昇によるメタン生成菌の活動の増大などにより、メタンの発生量が増え続けています。メタンは二酸化炭素と同じ地球温暖化ガスですが、有機物はメタンにまで分解されなければ、世の中は腐敗した有機物のごみに埋もれてしまうのです。

 ちなみに“おなら”や“げっぷ”もメタン生成菌の作品で、特に牛などの反芻動物(一度飲み込んだ食物を口に戻して再びかむ動物)の胃の中のメタン生成菌は、牛などが食べたえさの20%ほどを横取りして食べてしまうため、酪農家にとって大敵なのです。

鎌形洋一博士の写真

「微生物を眺めることによって、生命のための基本装置を知ることが出来ます。

 それから、色々な微生物を扱ってみて、生命体が本当に信じられないような環境で生まれたことを実感しないわけにはいきません。

 そして、もう一つ、微生物というのは今も見えないところで進化と変化を続けているということ。そうでなければ、人間が比較的最近作り出した化学物質を、分解出来るはずがないと思うからです」

(鎌形洋一博士)


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