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4-クロロインドール-3-酢酸の化学式

図:4-クロロインドール-3-酢酸の化学式

 普通、苗木といえば、移植のために育てた種子から発芽して間もない木のこと。いわば木の幼児です。しかし植林のために大量の苗木が必要なのに、幼児に育つまで待っていられません。また、大量の種子を得るのも簡単ではないでしょう。

 そこですでに成長した樹木から枝を切り取り、開発された発根剤の溶液に浸けてみます。すると、市販の発根剤(インドール酢酸 IBA)に比べて、ものすごい勢いで根が生えてきます。

 ハクチョウゲという樹木の根を処理後に数えてみると、未処理の場合は7本、市販の発根剤は22本、産総研で開発された発根剤は最高77本! 非常に強力なことがお分かりいただけるでしょう。

 この発根剤のもとになっているのは、4-クロロインドール-3-酢酸(4-CI-IAA)という化合物。人工的な物質のようですが、実は私達が食べているエンドウやソラマメなど、豆科の実(種子)に含まれている天然の生理活性物質なのです。1968年に強力なホルモン活性を持つ植物成長調節物質として発見され、注目を浴びました。

 植物成長調節物質は植物の最も重要な器官のひとつ、根の発生や成長を促進します。これを大量合成することができれば、発根促進活性によって大量に苗木を調製することが可能となります。

 しかし4-クロロインドール-3-酢酸は合成が難しく、長い間、大量に作ることは困難とされてきました。

 産総研では、この4-クロロインドール-3-酢酸の大量合成に成功。生物試験で変異原性活性や環境ホルモン活性などの心配もないことが証明され、低コストの発根促進剤として安心して植林に用いることができるようになったのです。

 そういえば童話「ジャックと豆の木」では、主人公のまいた豆がぐんぐんと生長し、天まで伸びていきます。豆には強力な植物成長調節物質があることを、作者は知っていたのでしょうか?

 

写真:ジャイアントアカシア

ジャイアントアカシアに対する4-クロロインドール-3-酢酸及びその1-プロピルエステルの発根促進作用。

ジャイアントアカシアは成長が速く、窒素固定能を有するために、東南アジア地域で広く植えられている重要な樹木の一つ。

浸けても散布しても

 4-クロロインドール-3-酢酸は強力なホルモン活性を有するため、水やエタノールで調整した薄い溶液で使用します。現在は樹木ごとに異なる最適な濃度、処理時間、処理方法を見つけるために、予備的な応用試験を行っています。

 これまでの実験では、エタノール溶液に、ハクチョウゲやジャイアントアカシアの場合は10秒、クチナシやフヨウの場合は15秒間浸けただけで、強力な発根作用を示しました。処理した部分からはほぼ100パーセント発根しています。

 従来の発根剤はこのように溶液で浸漬処理をするものでしたが、大量の苗木を扱う場合、1本1本浸けていくのは時間がかかります。

 そこで浸漬処理のほかに、散布処理という方法に取り組みました。切り取った枝を植え付けしたのち、溶液を噴霧器などで散布するもので、この方法だと大量の苗木を処理することができます。

 ジャイアントアカシアに1ppmの溶液を散布処理してしばらく成長させた場合、未処理のものに比べて葉の数は約40パーセント、葉の重量は約60パーセント、根は約30パーセント、茎の長さは約20パーセント上回るという結果が出ました。散布でも著しい成長ぶりが認められたのです。

写真:ジャイアントアカシアに散布処理した例

ジャイアントアカシアに散布処理した例


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国立研究開発法人産業技術総合研究所