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消える70%のエネルギー?

nとpがそろって一人前!?

熱を電気に変える

ボイジャーの写真

ボイジャー(NASA)

 熱を直接電気に変える発電方法を熱電発電と言います。その最大のメリットは、規模の大小に関係なく、同様に発電できることです(スケール効果が無いと言います)。たとえば火力発電ではかなりの熱エネルギーを必要とします。しかも、熱によって発生させた蒸気でタービンを回すので、そのプロセスの中でエネルギーが放散されてしまいます。一方、熱電発電では熱を直接電気に変換するので、より小さな熱エネルギーでもはるかに効率よく変換することができます。しかも、機械部分が必要ないのでメンテナンス(補修)をする必要もありません。現在捨てられている熱エネルギーを用いるため、新たに燃料を燃やすこともなく、環境に対しても優しいうえ、太陽熱や地熱などの自然熱を利用することも可能です。こんなにいいことづくめの発電方法なのですが、一つ大きな問題がありました。

 熱電発電は、温度差を与えると物質内に電位差が生じる「熱電材料」が、カギを握っています。電位差が生じ電球のような抵抗体をつなげば、そこに電流が発生します。つまり発電するわけです。ところが高い温度での耐久性に優れ、効率よく電気を発生する熱電材料がなかなか見つかりませんでした。そのため、酸素がないおかげで劣化が起きない宇宙衛星用電源など、限られた分野にしか応用できませんでした。


あちら立てれば、こちらが立たず?

 効率のよい熱電材料がなかなか見つからなかったのには、わけがあります。熱電発電は、温度の違いによって生じる電位差によって発電します。この電位差は、ゼーベック効果と呼ばれる現象によって生まれます。ゼーベック効果というのは、物質の両はじの温度を変えることで、高温側の方がエネルギーの高い電子(または正孔(プラスの電子))数が多くなり、拡散によって低い温度側の方へ電子が移動し、その結果物質の両端に電位差が生じる現象です。ゼーベック係数の値が高ければ、熱電材料として優れていることになります。また優れた熱電材料の条件として、電気をよく流しながらも熱は流しにくいことも必要になります。しかし、電気をよく通す電気抵抗の小さい物質は、熱もまたよく伝えます。熱を伝わりにくくすれば、電気も伝わりにくくなります。そして一般的にゼーベック係数が高い物質には電気抵抗が大きくなってしまう傾向があります。まさに"あちらを立てれば、こちらが立たず"なのです。つまり、発電効率の高い優れた熱電材料を見つけだすことは、とても難しいのです。熱電材料の性能をわかりやすくする性能指数ZT(性能を表す指数)では、数値1が熱変換効率10%を表します。これまでに発見されている熱電物質のZTは、真空、つまり酸素のない状況で最高で1.2程度(約400度の熱で最高値に達する)です。1000℃以上の高熱では、0.5以上の数値を実現する物質は発見されていませんでした。ただこれらの物質の全ては空気、つまり酸素のある環境ではこのような性能指数を示すことはできません。実用化には最低でも1以上の数値が必要とされています。そしてもしZTが2になると、日本で無駄になっているエネルギーの20%を取り戻せるわけです。このエネルギー量は、神奈川県横浜市を2つ分成りたたせてしまう程だという計算も報告されています。

熱電発電図
熱電発電(ゼーベック効果)のメカニズム
熱電発電図

電気を流す物質の片方を温めると、電子が活発に動き出し(運動エネルギーが高くなり)温度の低い方へと移動(拡散)する。この結果、温める前では同じであった電子の数が、温度の高い方が少なく、低い方が多くなり、プラス極とマイナス極ができる(電圧が発生する)。これがゼーベック効果である。物質によってマイナスの電気を持った電子が移動するものと、プラスの電気を持った電子(正孔)が移動するものがあり、それぞれをn型、p型熱電材料と呼ぶ。


「環境にやさしく、エネルギーも節約

 そんな熱電発電を早く実用化して、私たちの住む地球をみんなで守りましょう」

 (舟橋良次博士)

舟橋良次博士の写真
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