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つくって学ぼう

ストローガーネットの作り方

監修:金沢康夫

ストローガーネットの写真

はじめに

“ストローガーネット”は、ストローで作ったガーネットの結晶模型を意味する筆者の造語です。鉛筆・串など形状のそろった棒状の材質でもガーネットの結晶模型を作ることが可能ですが、材料としては、加工がしやすいこと、色が選択できること、経費が安いことで、ストローが最適でしょう。

これから紹介する結晶模型は、菱形12面体(りょうけいじゅうにめんたい) という形です。これを基本として、組立方向や切り方によりいろいろな形を作成できますので、皆さんでチャレンジしてみてください。

作ってみよう

ガーネットの外形として現れる、菱形12面体の結晶模型をストローで作ります。

準備するもの

  • ストロー4色(または1色)
    一番小さな模型の場合、各色19本(1色の場合76本)。
    次に大きな模型の場合、各色37本(1色の場合148本)。
    もっと大きい模型を作る場合は、たくさん必要になりますが、何本必要かについては、後述の「ストローは何本いるの?」を参考にしてください。
  • 輪ゴム
    8個程度。
  • 接着剤
    スプレーのり77(住友スリーエム)などが適しています。
  • 古新聞紙または段ボール箱
    スプレーのりを使用するとき、古新聞の上、あるいは空き段ボールの中で噴霧して、まわりを汚さないように注意します。
  • はさみ(小型)またはプラスチック用ニッパ
  • カッターナイフ(少し大きめ)
    手を傷つけないように、十分注意しましょう。

これから比較的わかりやすい作り方を説明します。基本が理解できるようになれば、これ以外の方法でもかまいません。説明のため、ピンク・緑・青・黄色の4色のストローを使用しますが、市販されているどんな色や模様入りでもかまいません。もちろん1色でもかまいません。

作成手順は、組み立て → のり付け → カット(整形)です。


ストローを輪ゴムで束ねた画像

ピンクと緑色のストローをそれぞれ4本束ね、束の一方のはしの方を輪ゴムで軽くとめておきます。

2色のストローを交差させた画像

ピンクと緑がほぼ直交するように、図の①と②の方向で交差させます。その時、それぞれ2本単位で上下になるように重ねます。ストローの開いているはしの方も軽く輪ゴムでとめます。 上から見ると、漢字の「井」の形になります。

青色ストローの差し方の画像

①ピンクと②緑でできた「井」の形の真ん中に、③の方向から青色ストローを差し込みます。図の①②③の方向は、それぞれほぼ直交しています。

8本の青色ストローの差し方の画像

同様に「井」の形の周囲の8個の升目をうめるように、8本の青色ストローを最初の1本と平行に置き、両端を軽く輪ゴムでとめます。

ストローを上から押した様子の写真

ストローを三脚支持のようにテーブル上に置き、上から少し押してみると、3束のストローが交差している箇所に平行四辺形や六角形のすき間が現れます。

黄色のストローをさした様子の写真

そこへ、黄色(第4番目の色)のストローを上からテーブル面に向かって、さしていきます。開いているすき間を黄色ストローでうめて、また両端を輪ゴムでとめます。これで異なる4色による4方向が定まりました。この時、それぞれの方向から見たストローは正三角形的に配置しています。

ストローで作る正6角形の画像

各ストローの伸びている方向から見て、ストロー底面の丸が三角形の位置関係を保つように、すき間に差し込んでいきます。各色のストローの本数を少しずつ増やしていき、こまめにストローの両端を輪ゴムでとめなおします。

図のように、各色について束の底面が正六角形になるように配置します。正六角形の一辺に4本と3本並べた2例を示してあります。各色につき、ストローは37本(左図)と19本(右図)が必要です。

4方向のストローをすべて並べたときの写真

4方向のストローがすべて六角柱になるように並べると左の写真のようになります。柱面(柱の側面)には、4本のストローが平行に並んでいます。この場合ストローは全部で148本です。また、柱面に3本だけ並べた場合は、全部で76本となります。

のり付けの画像

これからのり付けです。まず、1つの色の束を写真のようにできるだけ片側に寄せます(矢印の上側へ)。ストローの長さの中央付近をまんべんなく周囲からのりを吹き付けます。のりの付いたストローを下げて、のり面がほかのストローと接するように戻します。束の内側のストローにはのりが達しにくいので、のりが弱そうなストローは引き出して再度のり付けしましょう。これをほかの2色の束について繰り返します。計3色の束をのり付けすれば十分です。 1時間程度でのりは固まります。

カッターナイフでストローを切り落とす写真

各色の六角柱の柱面に沿って、カッターナイフを入れ、他色のストローを切り落としていきます。手を切らないように十分注意しましょう。

プラスチック用ニッパで切る様子の写真

カッターナイフになれていない場合は、はさみまたはプラスチック用ニッパを使用しましょう。最初はあらく切っていき、あとで平面になるように整形するとよいです。

1つの柱面に沿って切り落とした様子の写真

写真は、ピンク色の1つの柱面に沿って切り落としたものです。

柱面に沿って数面カットした状態の写真

柱面にそって、カットを続けます。柱面がほかの色の柱面と重なっている場合には、より外側の柱面にそって、切っていきます。

完成写真

最終的に、各面がひし形になった12面体が完成します。

ストローは何本いるの?

これまでは、同一方向に並んだ六角柱状の束について、その1つの柱面に並んでいるストローの本数が3本、4本の場合を説明してきました。柱面に並ぶ本数をそれぞれ増やせば、ストローガーネットは大きくできるのですが、それでは、柱面に並ぶ本数と使用する総本数にはどのような関係があるのでしょうか。それを示したのが次の表です。例えば、柱面に4本並べた場合の総数が148本ですが、10本では総数が1000本を超えてしまいます。自分の作りたい大きさに合わせて、必要な数のストローを準備しましょう。

表1 必要なストローの本数
六角柱状の束の柱面に
並んでいるストローの数
六角柱状の束内の
ストロー数
異なる4方向の束内の
ストロー総数
3 19 76
4 37 148
5 61 244
6 91 364
7 127 508
8 169 676
9 217 868
10 271 1084
n 3n(n-1)+1 12n(n-1)+4

ストローの配列の画像
六角柱状の束の底面から見たストローの配列

24面体ガーネットの作り方

ガーネットに特徴的なもう1つの外形は24面体です。実際に作成してみるとわかりますが、労が多いわりには見栄えが良くなりません。慣れないうちは作成をお勧めできませんが、参考として、作り方の要点のみを示しておきます。

1つの柱面に沿って切り落とした様子の写真

24面体はこれまで説明してきた12面体をさらにカットすることにより作成できます。六角柱の束の柱面に並べるストローは5本以上にします。5本、7本、9本など奇数の本数にしておくと切るときわかりやすくなります。左図はストローが伸びている1つの方向から見た図ですが、注面には7本並んでいます。(左図は、平坦に描いてありますが、実際には、傾いたひし形の3面から構成され、真ん中が手前に飛び出ています。)

左図の六角形の外形について、各辺の中点を隣どうしで結んでいくと、内側に隣接する小さな六角形ができます。この内側の六角形内にあるストローを保存するように、図の赤線にそってカッターを入れ、外側を切り落とします。

これを4つの異なる方向について繰り返すと、24面体ができあがります。

いろんな形に挑戦

切り方によっては、写真のように、八面体、コンペイトー型、また、面状に組み合わせた後、文字形にカットすれば、立体文字なども可能です。おもしろい形作りに挑戦してみてください。

8面体とコンペイトー型ガーネットの写真 立体文字型ガーネットの写真

ガーネットとは?

ガーネット(和名:ざくろ石)は、1月の誕生石としてよく知られています。化学組成式は、一般に、A3B2(XO4)3と表され、AにはMg, Fe, Ca, Mnなど、BにはAl, Fe, Crなど、XにはSi, Fe, Alが入ります。

構成元素により、いろいろな種類や色があります。例えば、

  • グロシュラライト Ca3Al2(SiO4)3 無色
  • アンドラダイト Ca3Fe2(SiO4)3 褐色
  • パイロープ Mg3Al2(SiO4)3 赤色~赤褐色、無色
  • アルマンディン Fe3Al2(SiO4)3 赤褐色
  • スペッサルティン Mn3Al2(SiO4)3 無色
  • ウバロバイト Ca3Cr2(SiO4)3 緑色

などで、天然ではこれらの中間組成として産出します。

合成物には、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット) Y3Al2(AiO4)3があります。

結晶の外形は、以下の12面体、24面体、36面体(右側2つ)がよく見られます。

結晶の外形の画像

実物結晶(産業技術総合研究所 地質標本館所蔵)

12面体結晶の写真
アルマンディンの12面体結晶(ノルウェイ産)
24面体結晶の写真
アルマンディンの24面体結晶(中国産)

結晶構造について

ガーネットの結晶構造が、円柱の特殊なパッキングで説明できることは、Andersson and O'Keeffeにより発見されました(Nature, Vol.267, p.605-606. 1977)。これをヒントに結晶模型を作ることができました。図1に、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)の結晶構造を示します。水色の八面体はAlO6のグループ、緑色の四面体はAlO4のグループを表したものです。AlO6とAlO4のグループというのは、Alの原子がそれぞれ6個のO原子、4個のO原子で囲まれている原子の集合体です。AlがOに6配位されている、4配位されているとも言います。水色のAlO6 のグループに注目します。最も近い距離にあるAlO6グループを順次結んでいくと柱状に並びます。このようなAlO6グループの柱は、全部で4つの異なる方向に並んでいますが、これを模式的に円柱で描けば図2のようになります。図3には、構造のステレオ図を示します。

なお、結晶学的データは、立方晶系、空間群Ia3d, 格子定数a = 1.15~1.25nmです。

12面体結晶の写真
図1.[111]方向から見たYAGの結晶構造。水色がAlO6八面体、緑がAlO4四面体、赤玉がY原子。
24面体結晶の写真
図2. 図1のAlO6八面体の並びを模式的に円柱で示す。
結晶の外形の画像
図3.YAG結晶構造のステレオ図:緑色のAl 原子(6配位)の並びが白棒で示してあります。青色のAlO4の四面体グループは、それぞれ分離していますが、Al(6)の柱をつなぐのりの役割を果たしています。なお、赤玉はY(イットリウム)です。(右目で左図を、左目で右図を見ます。立体的に見えるかな。)