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つくって学ぼう

光ファイバー

監修:市野善朗

光ファイバーと光無線通信で使った装置の写真

はじめに

光無線通信では懐中電灯を使って声を届ける実験を行いました。この方法は、メッセージをやりとりする相手どうしの間に障害物がないこと、つまりお互いが「見えている」ことが条件です。では、壁を越え、山を越えて遠く離れた所に光でメッセージを伝えることはできないのでしょうか。

電波を使えばもちろん可能ですが、電波の届かない場所もあります。一方、光を使う場合、電波とちがって障害物に簡単にさえぎられてしまうので、相手まで確実に運ぶ手段が必要です。電話線のようなケーブルに光を閉じ込めて運ぶことができれば、原理的にはどこへでもメッセージを伝えることが可能になります。それを実現したのが、光ファイバーと呼ばれるガラス製の透明なケーブルです。

太平洋には、日米間の国際電話回線用に光ファイバーケーブルが敷設されています。また最近では、都市部を中心に各家庭で光ファイバーを使ってインターネットに接続することができるようになってきました。

ではどうして光ファイバーを使って声やインターネットの情報がやりとりできるのでしょうか。ここでは、光無線通信で作った装置を使い、送信機と受信機の間を光ファイバーで接続することによって、同じように声を伝えることができるかどうか、実験をしてみましょう。直進するはずの光は、曲がりくねった光ファイバーの中を進むことができるのでしょうか。光の不思議に触れ、光ネットワークが全国、全世界に張り巡らされるそう遠くはない未来を思い描きながら、実験を楽しんでください。

作ってみよう

光無線通信」で作った装置を使って、光ファイバーによる光通信実験を行うために、光ファイバーと、ファイバーを取り付けるアダプターが必要です。ここではその一例を示しますが、どんなものでも構いませんので、工夫してみてください。

必要なもの

光ファイバーの写真
  • 光ファイバー(プラスチック製)
    ここでは、例として三菱レイヨン(株)製「エスカ」(左図)を使用します。外径も色々なものがありますが、ここではφ1mmのものを使っています。30m巻きのものと、切り分けられたものとがあり、DIYショップで入手できます。長尺ものから切り出す場合は、鋭利なカッターナイフで真っ直ぐに切り落とします。このとき、切断面が波打っていたり、バリが出ていたりすると光量のロスが大きくなりますので、きれいな切断面になるように注意します。
  • ストッパー
    光ファイバーをファイバアダプターに取り付けるとき、紙コップからの抜け落ち防止用にファイバー先端に取り付けます。ここでは、回路工作用の圧着端子を使っていますが、同じ用途であれば、圧着端子でなくても、プラスチック、ゴム、木材など何でも構いません。ファイバー先端を隠したり、ゆがませたりしないようにすることがポイントです。
  • ゴム栓(2個)
    光ファイバーを紙コップに固定するためと、光ファイバーの先端を受信機に取り付けるために使います。ここでは試験管用のシリコン栓を使いましたが、消しゴムを小さく切り取ったものなどでも十分使えます。(紙コップの底より少し小さいぐらい)
    ※偏光板、偏光フィルムなどの名前で、科学教材販売会社などが販売しています。厚さが0.2mmぐらいのものが切りやすいと思います。
  • 紙コップ
    光ファイバーを懐中電灯に固定するために使用します。

紙コップを懐中電灯にかぶせ、点灯します。コップに映った像が最も明るい部分1点にマークを付け、紙コップを取りはずします。

マークを付けた位置に光ファイバーが通るだけの穴を開け、光ファイバーを通したあと、コップの内側にストッパーを取り付けます。

紙コップに光ファイバーを通して固定したようすの画像

ストッパーがコップ内側に引っかかるまで光ファイバーを引っ張ったあと、ゴム栓を使って光ファイバーの先端を紙コップに固定します。

光ファイバーのもう片方の先端を受信機に取りつけたようすの画像

もう片方の先端にもゴム栓をとりつけ、受信機のフォトトランジスタ部分に取りつけます。

実験してみよう

光ファイバー通信に挑戦!

ここでは、光無線通信で使った装置に、光ファイバーアダプタを組み合わせます。

  • 紙コップ側をライトにかぶせましょう。
  • ゴム栓側を受信機に取りつけましょう。

装置はこれで完成です。

さあ、それでは無線通信のときと同じように、マイクに向かって声を出してみましょう。うまく聞こえましたか?

Q&A

聞こえない場合は、何が原因なのでしょうか?
紙コップに取付けた光ファイバーの位置が、ライトの像の最も明るい場所からズレていませんか?
受信機からいったん光ファイバーを取りはずして、ファイバーをのぞきこみながら、最も明るく見えるように紙コップの位置を調整してみましょう。
受信機に取り付けたゴム栓を少しずつ動かしてみましょう。
受信機に使われているセンサーは光の入ってくる方向に非常に敏感です。
ファイバーの先端が、センサーの先端ギリギリの所に来るようにすると効果的です。
  • 聞こえにくい場合は、よく聞こえるように色々な箇所を調整してみましょう。
  • 受信機についているボリュームを、聞こえるようになるまで上げてみましょう。

注意!
ボリュームを上げた状態で無線通信実験を行ったり、蛍光灯に直接かざしたりすると、大音量によって耳を傷める可能性がありますので、光ファイバー通信以外の場合は適度なボリュームに戻して下さい。

光ファイバーを束ねたり、伸ばしたり、らせんに巻いたりしながら、聞こえる音の大きさや質が変化するかどうかを調べてみましょう。
 
なぜ光ファイバーは光を閉じ込めて伝えることができるのか、考えてみましょう。
 
思ったよりも聞こえにくいのですが?
光ファイバーに入ってくる光量はごくわずかで、無線通信の時と比べても少なくなりますので、聞こえにくくなります。
レンズを使って光ファイバーにより多くの光を集めれば、よりはっきりと聞こえるでしょう。手元にレンズがあればチャレンジしてみてください。
ファイバーの長さをだんだん長くしていくとどうなりますか?
聞こえる音量はだんだん小さくなっていきます。非常に長くなると聞こえなくなってしまいます。
それでは光ファイバーを使った通信は短距離でしか使えないのではありませんか?(中級編)
それは、今回使ったライト、ファイバーの材質、受信機の性能に原因があります。
懐中電灯に使われているような白熱球と呼ばれるタイプの電球から発せられる光は、その大部分が人間の目に見えない赤外線です。次に、今回使ったファイバーはプラスチックでできていて、赤外線を通す能力(透過率といいます)は可視光線ほど高くありません。そのため、電球から出た赤外線は、光ファイバーの中を進むにつれて弱くなっていきます。さらに、受信機に使われているセンサーは、可視光線よりも赤外線の方が感度が高いので、赤外線が減少すると、とたんに出力が下がるのです。これがファイバーを伸ばしていくと音量が小さくなっていく理由です。
それでは、実際の光ファイバー通信ではどうなっているかというと、光ファイバーはプラスチックではなく、ガラスを用います。ガラスの場合、赤外線のうち特定の色については、ファイバー中での損失がほとんどありません。このような光をレーザーでつくって送信しています。

以上で実験は終了です。

光ファイバーを使った通信は、実際に使われている技術です。光ファイバーを使うとどんな便利なことがあるか、考えてみましょう。また、光ファイバーがどんなところで使われているか色々調べてみてください。10年後、20年後にはどんな新しい技術が生まれているのか、想像してみてください。