Vol.7 No.3 2014
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研究論文:低環境負荷表面処理技術の開発(穂積ほか)−191−Synthesiology Vol.7 No.3(2014)我々は、液滴除去性能を“はつ液”と定義し、優れたはつ液性をさまざまな基材表面に付与する方法を開発することを目指している。このため、これまでのはつ液処理、特にはつ油処理に関する世界の研究動向をレビューするとともに、新たに接触角ヒステリシスの観点から見直すことによって研究戦略を構築することを試みた。これまでも接触角ヒステリシスを制御する手法はいくつか提案されているが、いずれも第1種基礎研究の範疇を出ていない。この論文では実用性に優れたはつ液性を基材表面に安価に付与することを目指した我々の研究戦略について述べる。このような表面が実用化できれば、汚れ付着防止、防食性の向上、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)/NEMS(Nano Electro Mechanical Systems)/バイオチップ等の液流制御、インクジェットノズルの残液固化による目詰まり防止等、さまざまな工業的応用が可能になることが期待される。2 従来法の課題:従来のはつ液処理から見えてきたものこれまでに報告されている、はつ液表面を分類してみると、(1)平滑表面(Liquid-like表面)、(2)凹凸表面、(3)凹凸湿潤表面、の3つに大別することができる。図2に各々のはつ液表面の種類とその処理技術を示す[1]。この論文では、これらの表面が開発された時間的経緯を考慮し、それぞれの表面を、第1世代、第2世代、第3世代のはつ液表面と呼ぶことにする。現在、第1種基礎研究の主流となっているのは、第2、3世代のはつ液表面である。最初に、現在のはつ液処理研究の動向について概説した後、第2、3世代表面の欠点、および、我々が第1世代のはつ液表面に注目した理由について述べる。従来の手法の利点と欠点を正確に把握し、研究指針を立てることで、第1種基礎研究から実用化へ移行する時間を大幅に短縮することができた。 親水化付着滑落(c)(b)(d)(a)> 90°5°<:従来手法:今回の開発技術基材単分子膜形成技術(第1世代)凹凸加工技術(第2世代)潤滑液を用いた湿潤技術(第3世代)ゾル-ゲルハイブリッド皮膜形成技術基材約1 nmCH3(CH2)n-orCF3(CF2)n-=様々な凹凸構造基材約 ~1 μm基材基材=凹凸構造フッ素系潤滑液SiSiSiSiOHOOOHOOO(d)(c)(b)(a)図1 (a)超はっ水化したシリコン基板上の静的な水滴の状態(b)局所的に親水化した(a)表面上の静的な水滴の状態(c)(a)を傾けた場合(d)(b)を傾けた場合図2 はつ液表面の種類とその作製方法(a)単分子膜を用いたはつ液技術(b)今回開発したはつ液技術(c)凹凸加工技術を用いたはつ液技術(d)潤滑液を用いたはつ液技術

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