Vol.7 No.3 2014
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研究論文:内部熱交換式蒸留塔(HIDiC)の技術開発(片岡ほか)−176−Synthesiology Vol.7 No.3(2014)野田 秀夫(のだ ひでお)1970年大阪大学理学部物理学科卒業。1970年(株)関西化学機械製作入社、1975年大阪大学大学院基礎工学研究科博士課程修了(化学工学専攻)。1979-1981年連合王国リーズ大学客員研究員。1993年(株)関西化学機械製作の代表取締役社長。2001年Bio-energy(株)代表取締役社長兼務。2011年兵庫県科学賞受賞、2013年(公益社団法人)化学工学会理事。1990年から現在までHIDiC、ウォールウェッター、晶析装置、バイオ燃料等の技術開発に従事し、主として化学工学会と分離技術会において10回を超える技術賞を受賞している。本研究に関係するバイオマスからのエタノール発酵に関しては、2001年からバイオリアクターの研究に従事。先導研究段階から現在に至るまで生物化学工学の研究開発実績を基にBiofuel Challenge NEDOプロジェクトのセルロースエタノール製造の工業化の目標に向かってプロジェクト研究マネージメントに従事してきた。この論文ではセルロースエタノールの製造プロセス全般の副統括として、統合プロセスの中での各サブプロセスチーム(前処理プロセスチーム及びバイオプロセスチームと蒸留濃縮プロセスチーム)をバランスよく先導し、各サブプロセスに許される消費エネルギーの配分と目標値設定を担当した。査読者との議論議論1 全般コメント(長谷川 裕夫:産業技術総合研究所、景山 晃:産業技術総合研究所イノベーション推進本部)この論文は化学産業の主要プロセスである蒸留技術に焦点を当て、内部熱交換式蒸留塔(HIDiC)という大きな省エネルギー効果を期待できる技術の普及に向けて、10年にわたる3つのNEDOプロジェクトにおける技術開発を通して、その導入の障壁となっている技術課題を分析し、戦略的に研究開発に取り組み、従来型HIDiCの問題点を克服して、圧縮機を必要としない新たなCF-HIDiCの開発につなげた一連の取り組みを述べています。明確なシナリオに基づいた研究開発の過程は、他の分野の研究者にとっても有益であり、シンセシオロジーにふさわしい論文と思われます。この過程において、本来の目標を達成するために、広い視野角を持って異なる技術領域が相互補完的に取り組んだ具体例として、プロセスシステム工学と伝熱工学との融合や、糖化・発酵グループとの協力体制をタイムリーに提案・説得し、実行していった研究開発方法論、プロジェクトマネージメント論として大変示唆に富む論文になっていると判断します。回答(片岡 邦夫)シンセシオロジーの本来の目的に応じて、プロジェクトの技術開発結果よりもプロジェクトをいかに進めたか、その方法論を基幹とした章の組み替えをご提案いただきました。その趣旨に沿って、査読により頂いた質問や意見に応えて論文を修正し、完成させました。このような成果を挙げるには約10年の間に3件のNEDOプロジェクトを認めていただき、それぞれ異なった分野の専門家や経験者にいろいろな意見やアドバイスをいただいたお蔭です。他分野の研究者とも合流し、勇気をもって自分のわからない部分を提示して、それを専門分野とする人たちの意見と協力を仰ぐように体制を組み、活発な議論を重ねる雰囲気づくりが大切で、プロジェクトは総合的でないといけないと思います。議論2 クリーン系と汚れ系での蒸留技術について質問(長谷川 裕夫)シンセシオロジーでは、その分野の専門ではない読者も容易にその内容を理解していただけるように、記述をお願いしています。以下の点について補足していただければより分かりやすくなると思われま[1]中岩 勝, 大森隆夫: 蒸留プロセスのイノベーション, 理想状態からの「デチューニング」によるプロセス強化, Synthesiology, 2 (1), 51-59 (2009).[2](独)新エネルギー・産業技術総合開発機構省エネルギー技術開発部:「内部熱交換による省エネ蒸留技術開発」事後評価報告書 (事業原簿) (プロジェクト番号 P02020) (2006).[3]K. Horiuchi, K. Yanagimoto, K. Kataoka and M. Nakaiwa: Energy-saving characteristics of heat integrated distillation column technology applied to multi-component petroleum distillation, Distillation & Absorption 2006, Inst. Chem. Eng. Symp. Ser., 152, 172-180 (2006).[4]特許「多成分系内部熱交換式蒸留装置」, 第4819756号(2011).[5]NEDOプロジェクト No. P09015「エネルギー使用合理化技術戦略的開発/圧縮機を必要としない内部熱交換式蒸留システムの基盤技術の研究開発」(2008 ~ 2010)成果報告書 (プロジェクト番号 P09015) (2010).[6]NEDOプロジェクト No. P07015「バイオマスエネルギー等高効率転換技術開発/セルロースエタノール高効率製造のための環境調和型統合プロセス開発」(2008 ~ 2013)成果報告書 (プロジェクト番号 P07015) (2013) .[7]化学工学会第45回秋季大会講演要旨集 M108, M109 (2013).[8]R. S. H. Mah, J. J. Nicholas Jr. and R. B. Wodnik: Distillation with secondary reflux and vaporization: A comparative evaluation, AIChE Journal, 23 (5), 651-658 (1977).[9]H. Noda, K. Kataoka, H. Yamaji and N. Kuratani: Heat transfer and flow characteristics of a double-tube HIDiC trayed column, 8th World Congress of Chemical Engineering, energy 0064, (2009).[10]K. Kataoka, H. Noda, T. Mukaida, G. Nishimura and H. Yamaji: Boost to bioethanol distillation by internal heat-integrated distillation column (HIDiC), Advanced Chemical Engineering Research, to be published.参考文献執筆者略歴片岡 邦夫(かたおか くにお)1963年京都大学工学部化学機械学科卒業、1968年京都大学大学院工学研究科博士課程修了(化学機械学専攻)。1968年神戸大学工学部化学工学科常任講師着任、1971年助教授、1988年教授昇任。1994年神戸大学工学部長就任、1997年神戸大学副学長就任。2000年(公益社団法人)化学工学会会長就任。2001年兵庫県科学賞受賞、2003年神戸大学定年退官、2003年化学工学会学会賞受賞、2003年(株)関西化学機械製作入社、専務取締役、2012年同研究所長、(株)Bio-energy専務取締役兼務。神戸大学(~2003)においては移動現象学、伝熱工学の教育研究に従事。関西化学機械製作(2003~)においては化学プロセスの伝熱を伴う単位操作の技術開発に従事。特に蒸留プロセスの省エネ化のHIDiCの技術開発(NEDOプロジェクト)に従事。2008年からは本研究のBiofuel Challenge NEDOプロジェクトのソフトバイオマスのセルロースエタノールの発酵液の蒸留・濃縮プロセスの省エネ化のためのHIDiCの技術開発に従事した。この論文では基盤技術開発の実験を担当して内部熱交換特性のデータベースの構築、これを基盤とするプロセスシミュレーション解析法の確立とプロジェクトの他チームとの情報交流と交渉をリード役として担当し,HIDiCベンチプラントの設計仕様策定のための技術計算と実機設計を担当した。

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