Vol.7 No.3 2014
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シンセシオロジー 研究論文−140−Synthesiology Vol.7 No.3 pp.140-153(Aug. 2014)1 はじめに:シンセシオロジー誌におけるこの論文の位置付けこの研究では、基礎研究としては研究フェーズの進んだ新規タンパク質を医薬品製品とすることをアウトカムと位置づけ、その間に存在するいわゆる「死の谷」の研究開発フェーズを突破することを意図している。アウトカムである医薬品製品を実現するには、品質管理された製品製造と臨床試験を行い、医薬承認を受ける必要があり、さらに10年以上の歳月と最低でも数十億円の研究開発資金の投入が必要とされる。したがって、基礎研究機関が単独で死の谷を突破することは困難であり、この論文執筆の段階では医薬品としての製品化には至っていない。また、医薬品の製品化は基礎研究機関の開発対象にはならないと考える人もいる。しかし、著者は研究開発の方向性とステージを最適化することにより、基礎研究機関でも製品化への段階に貢献できると考えている。タンパク質医薬の重要性は急速に拡大しており、2012年の全世界の医薬品売上高においては、首位を含む上位10品目中6品目がタンパク質医薬となっている。このことは、タンパク質創薬のプロセスを無視して今後の創薬基礎研究を語ることはできないことを意味している。そこで、タンパク質創薬の研究シナリオを踏まえた研究を基礎研究機関で行っているこの研究について、シンセシオロジー誌で紹介することは意義深いものと考え、著者らが行っている、放射線防護剤候補としてのシングル分子タンパク質(FGFC)の開発過程について本稿にて論じる。2 放射線被ばくによる生体障害と障害からの防護生体が放射線を被ばくすると、アルファ線、ベータ線、今村 亨高線量の放射線被ばくによって生体が受ける障害を軽減・治療するための生物学的機構を介する放射線防護剤の有望な候補として、既存の医薬品を凌ぐ活性を有する新規シグナル分子(細胞機能を調節する生理活性タンパク質)「FGFC」(fibroblast growth factor chimeric protein)を開発した。今後、放射線関連機関に備蓄する放射線防護剤として採用される可能性のある、このタンパク質を医薬開発するための環境整備を、基礎研究機関において可能な限り高いレベルで進めることを目指している。放射線による生体障害を軽減する高安定化細胞増殖因子の開発− 放射線防護剤の創薬に向けた基礎研究機関における研究開発 −We have developed a stable growth factor protein that is a promising candidate for a radioprotective drug suitable for treating biological damage caused by high-dose radiation. This stable growth factor, designated FGFC (fibroblast growth factor chimeric protein), demonstrates several advantages over existing drugs. Once approved, it can be stockpiled for radioprotection. We aim to develop this protein into a drug at the highest possible level achievable at a basic research institute.キーワード:放射線防護、放射線障害、FGF、安定化細胞増殖因子、クリプト、生存Keywords:Radioprotection, radiation-induced damage, fibroblast growth factor, FGF, stable, crypt, survival産業技術総合研究所 バイオメディカル研究部門 〒305-8566 つくば市東1-1-1 中央第6Biomedical Research Institute, AIST Tsukuba Central 6, 1-1-1 Higashi, Tsukuba 305-8566, Japan E-mail: Original manuscript received January 9, 2013, Revisions received March 13, 2014, Accepted March 14, 2014Development of a stable growth factor suitable for radioprotection- Drug development-aimed R&D at a basic research institute -

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