Vol.7 No.3 2014
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研究論文:内部熱交換式蒸留塔(HIDiC)の技術開発(片岡ほか)−170−Synthesiology Vol.7 No.3(2014)であり、周りのジャケット側はクリーンな濃縮部を想定している。したがってジャケット側には濃縮部で予想されるあまり高くない凝縮温度を実現できる0.12 MPa(104.5 ℃)の水蒸気を用いた。図9の左の釜内部の写真が示すように、沸点上昇を伴い、100 ℃を少し超える常圧では溶解物質(主としてグルカンと思われる)の固化反応が釜内壁に起き、固化物質が焦げついたように析出して大きな伝熱阻害が起きた。しかし右の写真のように減圧235mmHg(したがって沸点68.2 ℃)以下にすると固化反応が起きず、釜内壁(加熱面)に固体膜は形成されなかった。もしHIDiC塔の塔底にリボイラを使うならば、その加熱面でも同様のファウリング現象が起きる。この実験により、発酵モロミ液の濃縮のための蒸留は汚れが問題となる回収部の温度を下げるために減圧にすべきこと、回収部塔底はおよそ水分のみの濃度になるからリボイラの代わりに生水蒸気を吹き込む、いわゆる水蒸気蒸留にすべきことなどがわかった[6]。4.2 HIDiCベンチプラント4.2.1 プロセスシミュレーションHIDiCベンチプラントの設計仕様を決めるためのプロセスシミュレーションをした。当初からの目標の標準型HIDiCベンチプラントのシミュレーションの仕様および操作条件を表1に示す。使用する平衡段モデルに基づく蒸留シミュレータ(Invensys.社製PRO/II)には蒸留プロセス計算は理想段でよいが、内部熱交換の計算には実段が関与する条件(総括伝熱係数、伝熱面積および段効率等)をプログラムに新規に組み込む工夫が必要であった。すなわち理想段と実際の段との関係(段効率)が必要であった。回収部に入れる予定のリフトトレイについては第三期プロジェクトで調べた内部熱交換状態での段効率データより判断して、本プロセスでの段効率を50 %と仮定した。したがってシミュレーションでは1理論段の伝熱面積をリフトトレイの2段分が占める内塔の側面積とした。当初からベンチプラントに計画していた標準型HIDiCに関して、濃縮部、回収部それぞれの段数を変化させた事前のシミュレーションをして試行錯誤により濃縮条件を満足するベンチプラントとして、回収部を17理想段とし、濃縮部を13理想段に設定した。省エネの目的からできるだけ内部熱交換の伝熱面積(したがって塔径)を大きくする必要があり、原料(50 kg/h、5 wt% EtOH)を処理できる塔径として空塔基準のF-factorの範囲が0.05<<0.7に収まるように内塔径=150 mmを決め、外塔径を=250 mmとした。F-factorが少し小さいので泡沫層高さは低く、飛沫同伴は起きにくいと考えられるので、段間隔についてはリフトトレイの実績から実段段間隔200 mmとした。したがって理想段の段間隔が400 mmとなる1理想段当たりの伝熱面積は=0.1885 m2となる。回収部の内部熱交換が課せられる部分は実段で#3〜#27合計25段(塔高さ5 m)としたので、濃縮部側も同じ伝熱面積になるように、濃縮部(規則充填物を入れる予定)の塔高さを合わせた。伝熱図9 発酵モロミ液のファウリング試験における釜内部の写真[6][10](235 mmHgの時の沸点:68.2 ℃)表1 シミュレーション解析の設定条件と仕様[10]変数理論消費電力(kW)ドライ真空ポンプ0(仮定)熱損失25(#3~#27)内部熱交換段数(回収部実段ベース)54.82総括伝熱係数U(W/m2 K)x伝熱面積A(m2)(1理想段の段間隔当り)=UA(W/K)内部熱交換変数泡点で凝縮(740 mmHg)冷却負荷(塔頂コンデンサ)変数原料予熱器加熱負荷(生水蒸気)変数生水蒸気(0.3 MPa)吹込み速度(kg/h)加熱負荷(生水蒸気吹込み)<0.1エタノール濃度(wt%)缶出液(排水)>95>90エタノール回収率(%)エタノール濃度(wt%)留出液(製品)69 ℃30 ℃、5.0 wt%50(=49.35 kg/h)原料供給温度:初期温度、初期濃度:原料供給量(L/h)蒸留条件変数還流比101段当りの圧損(mmHg)740塔頂圧力Pair、(mmHg)13理想段規則充填物250 mmID、5.2 m濃縮部(外塔環状部)#1濃縮部缶出液供給段(理想段ベース)#2原料供給段(理想段ベース)200段間隔(mm)(実段)6.4(仮定)1段当りの圧損(mmHg)変数塔頂圧力、Pais、(mmHg)50(仮定)段効率(%)(17理想段)34実段リフトトレイ150 mm ID、6.8 m回収部(内塔)二重管式塔760 mmHg235 mmHg100 ℃になると固化反応が起き、その固着物質によるファウリング(伝熱阻害)が起きる。固化反応は起きず、伝熱壁には固着物は析出していない。

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