Vol.7 No.3 2014
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研究論文:内部熱交換式蒸留塔(HIDiC)の技術開発(片岡ほか)−169−Synthesiology Vol.7 No.3(2014)用いた。本実験装置を使用して、プロジェクトの前半では石油系を念頭に理想系のベンゼン・トルエン系の実験を行ったが、後半にはバイオ系の新エネルギープロセスへの応用展開を意識して、非理想系としてのエタノール・水系溶液を使用して内部熱交換特性の設計データベースを構築した[5][9][10]。後述のように圧縮比を変数とした総括伝熱係数のデータの実験誤差とばらつきを勘案すれば、その汎用性は理想系の場合はあまり分子量が大きくない類似の炭化水素系に、非理想系の場合は水を含むあまり分子量の大きくない類似の有機系水溶液(メタノール、プロパノール、アセトアルデヒド、MEK等)に、物性(主として粘度、熱伝導度)の違いを念頭に入れて補正すれば適用できると考えている。HIDiCの操作方法として(1)濃縮部を加圧する加圧操作pressurizing mode(> 1 atm、= 1 atm)と(2)回収部を減圧にする減圧操作depressurizing mode(= 1 atm、< 1 atm)の2種類について実験した。いずれにせよ、HIDiCの主制御パラメータは濃縮部と回収部の圧力比(圧縮比)/である。得られたデータベースは標準型だけでなく、圧縮機不要のHIDiC塔(第2塔)にも適用できる。一例としてエタノール・水系の内部熱交換の実験データを図7、8に示す[5]。溶液の沸点は圧力とともに上昇するので、温度差は圧縮比とともに直線的に増加するが、加圧操作と減圧操作では相関線の勾配は異なっていて、ひとつの相関線にまとめることはできなかった。総括伝熱係数も加圧操作と減圧操作で、その変化は同じでないが、ファウリングの起きないクリーン系であれば安全サイドの設計データベースとしてU = 500 kcal/m2 hr℃ = 581.5 W/m2Kを推奨値と考えてよいことを確認した。連続する2件のプロジェクト(第二期、第三期)により多くの内部熱交換を伴う蒸留実験のデータを収集して設計用のデータベースを構築できた[5]。4 バイオエタノールの濃縮プロセス -第四期プロジェクト研究開発-前述のように、十分な省エネ効果が確認されたにもかかわらずHIDiC技術が石油化学産業へなかなか導入されず、普及しない現状打破のために、化石資源から原料転換して、カーボンニュートラルな新エネルギーの一つであるバイオエタノールを製造するプロセスの省エネ化に貢献すべく、第四期プロジェクトとして、NEDOのバイオエタノールの環境調和型統合プロセス(Consolidated Bio-Processing、略してCBPプロセス)のプロジェクト(通常BFC(Biofuel Challenge)プロジェクトと呼んでいる)[6]に参画した。当社に課せられた濃縮プロセスの目標は(1)エタノール濃度が5 wt%の発酵モロミ液を脱水して、共沸点近くの90 wt%まで、HIDiC技術により濃縮することおよび(2)この蒸留プロセスでの1 Lの無水エタノールを生産するに要する消費エネルギーを標準型HIDiCの場合、4 MJ/L-EtOH以内に収めることであった。ただし、後半期に入って、安全性の高いCF-HIDiCの有効性が認められ、このシステムの消費エネルギー目標値は5 MJ/L-EtOH以内に修正された。4.1 発酵モロミ液の汚れの影響CBPプロセスで生産される発酵モロミ液には濾過してもどうしても残留する発酵残渣(グルカン等の多糖類やリグニン)や副生成物(酢酸等)、酵素等が含まれている。担当する蒸留プロセスの熱交換部において、この糖質類の複雑な固化反応が起きて加熱面に析出、粘着して伝熱阻害を引き起こすファウリングの問題があるので、これを避けるための対策を探す予備実験をした。ソフトバイオマスの稲わらから得られた発酵モロミ液をジャケット付きの蒸発釜(自社開発のウォールウェッター釜使用)に仕込み、操作圧力(したがって沸騰蒸発温度)を変化させて蒸発濃縮におけるファウリングテストをした。この釜内がHIDiC塔でファウリングが問題になる回収部図7 温度差の圧縮比による変化(エタノール・水系)[5]図8 総括伝熱係数の圧縮比による変化(エタノール・水系)[5]温度差 △T(K)圧縮比 Pair/Pais (-)DepressurizingPressurizing43.532.521.51051015202530圧縮比 Pair/Pais (-)DepressurizingPressurizing43.532.521.510500100015002000250030003500総括伝熱係数U (W/m2K)

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