Vol.7 No.3 2014
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研究論文:内部熱交換式蒸留塔(HIDiC)の技術開発(片岡ほか)−167−Synthesiology Vol.7 No.3(2014)ル濃度を指している。蒸留グループが省エネ目標(標準型HIDiCで4 MJ/L-EtOH)を達成するためには汚れ系であるため安全を考慮して発酵グループの発酵目標値を5 wt% EtOHまで上げてもらう必要があることをこの図を使って説明した。これが限度であることをプロジェクトチーム全体で納得・合意した上で、各グループのプロセス目標の見直しを行った。やはり前の第三期プロジェクトで構築したデータベースを活用して厳密なシミュレーション解析結果を示すことにより、理解が得られたと考えられる。2.7 ベンチプラントの設計仕様の策定と実機試運転結果その時点では塔内部構造が明確になっていず、設計法が確定的でなかったが、工業的に実機スケールの塔内蒸気流量を実現できるような大きな塔径(外塔:800 mm、内塔:508 mm)の二重管式HIDiC実験塔(後述の図4)を製作して、実機スケールでの内部熱交換特性のデータベースを構築しておいたことが幸いし、それを利用することによりベンチプラントの設計仕様策定のためのシミュレーション解析が可能となった。内部熱交換の有効伝熱面積は濃縮部では蒸気が触れる凝縮のための面積であり、回収部では還流液による濡れの面積であるべきだが、実験での検証が困難であったため、工学目的から段間隔で得られる内塔側面積を1段当たりの伝熱面積とし、代わりに総括伝熱係数をデータベースの推奨値より低め(U=250 kcal/m2h℃)に設定した。ベンチプラントの設計仕様策定のために原料(発酵モロミ)の処理量を50 kg/hとし、原料濃度を5 wt%にしてシミュレーションした結果が図10(後述)であり、これに基づいてシステム設計をすることができた。設置場所の高さ制限(10 m以内)のため、塔の段数不足が心配された。特に元々計画になかったCF-HIDiCの第1塔(モロミ塔)の段数(チェンジトレイ16段)が省エネ目標(5 MJ/L-EtOH)達成のためにはギリギリの段数であったが、後述の図16のようにプロジェクトの省エネ目標を何とか達成できた。2.8 ベンチプラントの試運転 -方法と結果-運転の立ち上げ方法も議論し、模索の結果、以下のようになった。標準型HIDiCの運転(後述の図12)は(1)先ずドライ真空ポンプで回収部の空気を排気し、濃縮部コンデンサ側から大気中に排出する。(2)その後半より回収部塔底に生水蒸気を少しずつ供給し、回収部(減圧)、濃縮部(常圧)とも水蒸気のみが占める状態にする。(3)原料供給を始め、ドライ真空ポンプで望む圧縮比領域で全還流運転をした後、省エネのために生水蒸気吹込み量を減らしながら、濃縮部塔頂温度が共沸点近くで一定になるのを確認する。(4)既定の留出流量になるように還流比を調節して定常状態にする。よい省エネ状態にすると生の水蒸気吹込み量はゼロとなった。一方、CF-HIDiCの運転(後述の図14)はドライ真空ポンプを使わないので、先ずモロミ塔の塔底より生水蒸気を吹込み、モロミ塔塔頂排出蒸気はHIDiC塔濃縮部塔底へ入り、その塔頂のコンデンサ部より大気へ非凝縮性ガス(空気)を追い出し、排出する。濃縮部塔底からの排出液は回収部塔頂に供給される。回収部塔頂へ上昇してくる蒸気はコンデンサで凝縮させる。そのコンデンサ下部に設けた水封式真空ポンプにより非凝縮性ガス(空気)を排気しながら回収部の操作圧を下げて内部熱交換状態へと持っていく。回収部塔頂コンデンサの凝縮液はモロミ塔の塔頂へ還流する。ここまではHIDiC塔の回収部塔底に生水蒸気を吹き込むが、その量を省エネのために節減し、最終的にはゼロになるようにする。この条件で安定してくれば、所定の原料をモロミ塔の原料供給段へ供給し、各部の流量、温度が定常状態に至るのを待つ。両フローシステムのスタートアップ運転を比較するとドライ真空ポンプを要しないCF-HIDiCの方がかなり楽であった。2.9 省エネルギーの目標達成のキーポイントボイラーの加熱負荷の代わりをする生水蒸気吹込み量の節減が省エネ目標となる。内部熱交換中のHIDiC塔に関しては水蒸気吹込み量は大きく節減できるはずで、標準型HIDiCの試運転ではゼロとなった。すなわち消費エネルギーはドライ真空ポンプの消費電力が支配するだけであった。一方、このドライ真空ポンプを使わないCF-HIDiCの場合はモロミ塔のリボイラの代わりをする生水蒸気の吹込み量が決定因子であった。回収部塔頂に設けた水封式真空ポンプの消費電力は1/100程度で無視小であり、かつHIDiC塔回収部の生水蒸気の吹込み量も容易にゼロにできたが、モロミ塔の吹込み水蒸気量を減らすと塔底の缶出液のエタノール濃度が徐々に上昇して排出基準(< 図3 モロミ液濃度による標準型HIDiCの必要エネルギーの変化[6]原料濃度 wt%必要エネルギーMJ/L-EtOH0123456789246810120

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