Vol.7 No.3 2014
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研究論文:内部熱交換式蒸留塔(HIDiC)の技術開発(片岡ほか)−166−Synthesiology Vol.7 No.3(2014)ンデンサがなく、第2塔のHIDiC塔の回収部の塔頂にコンデンサを有しており、その凝縮液を第1塔へ還流する点が独創的な特徴である。HIDiC塔の回収部では内部熱交換により還流液を蒸発させているにもかかわらず、その蒸気をわざわざ回収部塔頂にコンデンサを設けて凝縮させることはHIDiCの基本概念に反するマイナスのアイデアであるとの異論が最初あったが、この回収部のコンデンサを第1塔のコンデンサと見なして、凝縮液を第1塔へ還流すれば、第1塔はHIDiC塔濃縮部塔底へ圧力の高い蒸気を供給する通常塔となり、何もマイナス効果とならないことがわかった。この新しいHIDiCは第1塔に特別な省エネ機能を有していないため、標準型HIDiCより省エネ率はどうしても落ちるが、既存設備の消費エネルギーの30 %以上の省エネは十分に可能であり、圧縮機を必要としない利点は大変有利なため、将来の大型HIDiCの普及の道が拓けるとの観点から、前述のように、当社独自で新規に立ち上げた第三期プロジェクト[5]において、その基盤技術の開発に努めた。この発想は前述のように、回収部塔頂にわざわざコンデンサを設けるHIDiCの常識を破るというものであったが、何のクレームもつかずに特許[4]も成立した。第2塔であるHIDiC塔の内部熱交換特性は標準型と同じで、兼用のデータベースを構築することができた。CF-HIDiCは標準型より省エネ率は少し落ちるが、圧縮機が不要であり、十分に省エネ効果が期待できるフローシステムとして高い評価を受けた。2.4 貢献すべき実用化の道を模索 −第四期プロジェクト−CF-HIDiCについても普及を目的にいろいろと啓蒙活動もしてきたが、なかなか実用化の道は拓かれないので、先ずは商業目的でない他分野のプロジェクト研究への貢献を目指すこととなり、第四期プロジェクトとして、NEDOプロジェクトNo. P07015「セルロースエタノールの高効率製造のための統合型バイオプロセスの技術開発」に参画することになった。このプロジェクトはソフトバイオマスのセルロースからバイオエタノールを高効率で製造できるバイオプロセスの技術開発が目的であった。しかし無水エタノール1 L当たりの製造コスト40円という目標が設定されており、いかに製造プロセスのコストダウンをするかが、最大の課題であった。酵母・酵素のコスト削減とバイオプロセスの高効率化と省エネ化のために酵母に糖化酵素と発酵酵素を表層提示する技術が最重要な中心課題であった。しかし発酵モロミ液を濃縮して純エタノールを得る方法の第1候補として蒸留技術が挙げられていたが、これも非常に消費エネルギーが大きいことが問題視され、大きなコストダウンをするためには今までにない蒸留プロセスの抜本的な省エネルギー技術の開発が必須となっていた。カーボンニュートラルとなるバイオエタノールプロセスを当社のHIDiC技術による実機開発で大きく省エネ化することは重要な社会貢献になると考えて参加した。2.5 新しいプロセスへの応用に挑戦 -難題こそ真のニーズ-ソフトバイオマスのセルロースからエタノールへの発酵プロセスで製造される発酵モロミ液は発酵残渣や多糖類、酵素、リグニン等々が含有されており、蒸留前に濾過を行っても不揮発成分や固化しそうな汚れ成分がかなり残存する。これらの不揮発物はHIDiCおよびリボイラの伝熱面へ粘着・析出・固化して大きな伝熱阻害をきたす恐れがあった。まだベンチプラントも具体化していない時点で実機に近い条件でのファウリングテストをすることはかなり難問であった。これをブレークスルーするには二重管型のHIDiC蒸留塔を模擬した装置でテストするしかなく、結局、後述の図9のように、当社オリジナルのウォールウェッター蒸発釜が最適なことに気づいた。不揮発性の汚れ成分は濃縮部へは侵入せず回収部を流下するのみであるから、ウォールウェッター釜内壁をファウリングが起きる内部熱交換の回収部伝熱壁と考え、釜のジャケット側を濃縮部伝熱面と想定すれば、回収部の操作圧力にしたがって沸点も変化できるので、後述の図9のような最適なファウリングテストが行えた。2.6 省エネ目標と発酵目標の利害の不一致 -目標の見直し-バイオプロセスチームによるソフトバイオマスのセルロースをエタノール発酵することも難題で、どうしてもモロミ液のエタノール濃度を高くすることができず、したがって蒸留による濃縮プロセスは大量の水分を蒸発せねばならず、エネルギーを無駄遣いすることが問題視された。いくらHIDiCであっても発酵モロミ液のエタノール濃度は省エネ効果を大きく左右する重要問題であった。そこでプロジェクトのメインプロセスである糖化・発酵のグループと「どこまで発酵によるエタノール濃度の目標値を高めてもらえるか。」交渉することになった。この時点での本プロジェクトチームの開発中のCBPプロセス(統合型バイオプロセスConsolidated Bio-Processingの略)のエタノール発酵成績はせいぜい2 wt%エタノール程度が最高であったが、どの程度の発酵モロミ液のエタノール濃度が標準型HIDiC蒸留塔の省エネ目標達成に必要であるかを、先ずはクリーン系のエタノール・水系について、シミュレーション解析することとした。その結果を図3に示す。ここで横軸の原料濃度とは蒸留プロセスへ供給する原料エタノール濃度であり、発酵モロミ液におけるエタノー

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