Vol.7 No.3 2014
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研究論文:内部熱交換式蒸留塔(HIDiC)の技術開発(片岡ほか)−165−Synthesiology Vol.7 No.3(2014)た蒸気を圧縮機で加圧してから原料供給段より上にあるべき濃縮部の底部へ圧入する。圧縮機による加圧で回収部より沸点が上昇した濃縮部を回収部と熱的接触させると濃縮部で塔内を上昇する蒸気の部分凝縮が起きて、それにより放出された潜熱は内部熱交換により回収部に伝わり、塔内を流下する還流液の蒸発に使われるのでリボイラの必要蒸気発生量すなわち加熱負荷が大きく節減される仕組みになっている。濃縮部での凝縮により塔頂コンデンサの冷却負荷も当然軽減される。2.2 プロセス工学と伝熱工学の連携最初、第一期プロジェクトのメンバーはMahら[8]の論文の可能性に気づいたプロセスシステム工学研究者・技術者が主体となり、プラントメーカーとユーザーの石油化学会社がグループを組んでスタートしていた。当時の蒸留工学の教育・研究は、気液平衡論の熱力学と理想段(平衡段)モデルに基づくプロセスシステム工学が中心になってなされていたが、蒸留プロセス自体、熱と物質の同時移動で進行する現象であり、内部熱交換式蒸留プロセスではなおさら移動速度論的な伝熱工学が重要な役割を果たすことが予想され、伝熱工学系の研究者も第二期プロジェクトから参加することになった。その結果、技術開発の目標が具体的になり、内部熱交換の伝熱工学的アプローチによる熱的設計のデータベースの構築を中心に技術開発プロジェクトは推進されることとなった。すなわち蒸留塔の濃縮部を加圧して沸点を回収部より高くして、濃縮部と回収部を熱的接触させれば、回収部の還流液の再蒸発による蒸気発生により、リボイラの加熱負荷が軽減されて、大きな省エネ効果が期待されるので、濃縮部−回収部間の内部熱交換による総括伝熱係数と伝熱面積の積UA(一種の総括伝熱容量係数)が重要な制御パラメータとなり、実機を想定した実験装置による、このデータの集積が一つの重要課題となった。UAのデータベースを基盤に内部熱交換を伴う蒸留プロセスのシミュレーションをすることにより、実機スケールでのHIDiCの適用性解析ができるようになり、いろいろな系に対する実用化の可能性が検討されるようになった。前述のように、これらの結果を基にC5-splitterの第1塔に代る充填式HIDiCパイロットプラントが建設され、第二期プロジェクトを成功することができた[2][3]。2.3 普及目的の新しいシステムの考案 -第三期プロジェクト-第二期プロジェクトにおいて、シクロペンタンをキーコンポーネントとする実際の混合ガソリンを使っての連続運転1000時間により省エネ率が60 %を超える大成功を収めたHIDiCパイロットプラントは圧縮機を用いた標準型HIDiCであり、クリーン系の蒸留プロセスに適用したため、これに続くその後の実用化が進まなかった。このHIDiC技術がなかなか普及しない原因を考えると、圧縮機を防爆にしなければならずかなり高価になり、トータルの設備費が明確でないこと、現実には圧縮機を適用しにくい汚れ系や可燃性の蒸気の蒸留プロセスも多いことがわかった。いろいろと検討の結果、「圧縮機を必要としないHIDiC(Compressor-free HIDiC、略してCF-HIDiCと呼ぶ)」を当社で考案し、新しく第三期プロジェクトを立ち上げ、技術開発することにした。その形式[4][5]を図2に示す。このシステムは本来のHIDiC塔の前にHIDiC塔の濃縮部へ圧縮機なしで加圧蒸気を供給するための通常塔(前置蒸留塔)を設けた2塔形式である。この塔の塔頂にはコ図1 標準型HIDiC(二重管式)図2 圧縮機を必要としないHIDiC[4][5](Compressor-free HIDiC、略してCF-HIDiCと呼ぶ)補助熱交内部熱交換(内塔→外塔)留出液缶出液(外塔環状部)回収部(内塔)濃縮部フラッシュドラム真空ポンプ圧縮機またはコンデンサリボイラ原料内部熱交換(内塔→外塔)留出液缶出液缶出液(外塔環状部)回収部(内塔)濃縮部コンデンサコンデンサリボイラ原料第1塔(前置蒸留塔)第2塔(HIDiC塔)

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